十七日目・小平町~砂川

 9月1日(木) 雨のち晴れ(走行 76km)


 宿泊した小平望洋台ユースホステルを、朝方早くに出発。

 今日は留萌を経て、一路東方面へと向かう。一山越えて空知地方に入るとすぐ、ヒマワリそしてメロンで有名な北竜町がある。ここのAコープで買物をしていたら、店のオバサンに親切にしてもらった。

 ここから僕は石狩平野を南下し、昨年も訪れた砂川市へと向かう。

 この町に向かう目的は、昨年の自転車旅の途中で髪を切ってもらい、本日宿泊する「こどもの国キャンプ場」を教えてくれた上、メロンまでゴチソウしてくれた理髪店を再訪すること。去年、初めての北海道への旅で心細かった僕の背中を押してくれた店主に、「いつかお礼を言わねば」と思い続けていた。

 今日は近くの酒屋で買ったビールを手に、お店を訪れた。


「こんにちは、お久しぶりです」

「あれ? 誰だったっけ?」


 最初、店主は、僕のことを鮮明に覚えていなかったようで、頭を何度もひねっていた。でも、話をしていくにつれて次第に思い出してくれたようだ。

 話し込むうちにカボチャなど色々なものをゴチソウになり、前回と同様、旅の話で盛り上がった。店の本棚には北海道の旅に関する本が沢山置いてあった。ここのご主人は、心から旅と旅人が好きなんだな~と思った。だからあの時、見知らぬ僕を抵抗なく受け入れてくれたのかな?

 僕は店主とまたいつか再会することを約束し、理髪店を出た。今日はキャンプ場泊まりで風呂場もシャワーもないので、近くの銭湯に立ち寄った。

 ここでも「自転車で来たのかい?」と言って、店主がやさしく接して下さった。

 ココロも身体も十分温まり、今日泊まるキャンプ場に戻ってきた。

 貸しテントの中に入ってふと思ったこと。それは、旅人に対する地元住民の優しい心遣いだ。

 今宵は星がきれいである。思い返すと、キャンプ場での単身での野宿は、僕にとってこれが初めての体験だった。

 疲れているけれど、隣のテントがやけに賑やかで、眠れそうにない。

 みんな相当酒を飲んでいるようで、笑い声と騒ぎ声は時間が経つにつれて大きくなっていくように感じた。これはきっと、夜遅く、下手したら夜明け近くまでエンドレスで続きそうな感じがする……。

 僕は明日も走らなくちゃいけないのに。

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