十四日目・礼文島 愛とロマンの八時間コース

 8月29日(月) 晴れ時々曇り (走行 0km)


 今日はここ桃岩荘ユースのメイン・イベント、「愛とロマンの8時間コース」に挑んだ。

「桃時間」の午前5時30分(標準時では午前5時)に叩き起こされ、眠い目をこすりながらご飯を食べ、問答無用ですぐ出発となる。ユースのバスで島最北端「スコトン岬」に連れて行かれ、ここから「8時間コース」が始まる。出発前に岬の売店で購入した「最北端牛乳」は、本当に濃厚で美味しかった。

「愛とロマン」という甘い名前が付くものの、実際はなかなかハードなトレッキングコースで、途中道に迷うこともあるらしい。そのため、かつて桃岩荘ユースに宿泊し、「8時間コース」を体験したことのある宿泊者があらかじめリーダーとサブリーダーに選ばれ、参加者を先導していた。

「8時間コース」は、山あり谷あり岩場ありの、一大アドベンチャーコースであった。初めの頃は登り坂が多く、何度か息が上がりそうになった。しかし、丘の上から見下ろす日本海は、透き通って恐ろしい程綺麗である。日本にも、まだまだこんな海があったとは。

 途中、ゴロタ岬や澄海岬などの名所にたどり着くと、記念撮影が行われた。本日の参加メンバーは二十七名。参加者全員のカメラを使っての記念撮影だ。みんなのカメラに均等に収めようという実によき?心配りである。

 コースをある程度進むと、前グループと後グループが離れてしまった。後ろで誰かが倒れてしまったからだそうだが、皆でなるべくゆっくり歩き、後グループを待つことにする。昼飯にはユースから持たされた宿名物の「圧縮弁当」を頂く。名前は仰々しいが、プラスチックの容器にたっぷりのご飯、そしてノリ、昆布、シャケフレークを乗せてぎゅっと「圧縮」したものであった。量は多いけど、ここまで何も食べずに難コースをひたすら歩いてきたので、お腹が空いていてあっという間に平らげてしまった。

それから先、滑りやすい崖の道、ジャリだらけの山下り、ゴツゴツした岩登りなど、本当に「冒険したなあ~」と思えるコースを通った。

 夕方近くにゴールである桃岩荘ユースに着くと、ヘルパーが大きな旗を振り、踊りながら出迎えてくれた。ひそかに期待していた「愛」は生まれなかったけれど、この8時間コースを通じ、道内を旅した内でももっとも多くの人たちと知り合えたと思う。


 夜は再びミーティング。 まずは今日の「8時間コース」のリーダー、サブリーダー役になった宿泊者を呼び出して、今日のコースの感想を述べさせられた。

「愛は生まれましたか?」というヘルパーの問いかけに対し、リーダーは「生まれませんでした」とつれない返事をして、会場をげんなりさせていた。まあ、事実ではあるけれど(笑)。ちなみにリーダーとサブリーダーは、最後に桃岩荘の名物体操である「ギンギンギラギラ夕日が沈む~」の歌に合わせた踊りを全員の前で披露させられた。

 今日のミーティングも相変らずギャグ満載の内容だったが、最後にヘルパーが自ら人生・友情について語るなど、決して笑い一辺倒でない所がまたイイ味を出していてよかった。

 最後に懐かしのフォークソング「遠い世界に」をヘルパーのギターに合わせて大合唱。宿泊者がみんなで拳を突きあげながら「明日の世界オ、オ、オー!」と一斉に前に躍り出る場面は、思わず胸が熱くなった。

この雰囲気は本当に一度味わったら癖になりそうだ。こういう雰囲気にはどこか冷めている僕でさえのめり込みそうなので、ハマる人は本当にハマるだろうな。気が付いたら三連泊していたという噂話は、まんざらウソじゃなさそうだ。

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