五日目・清里~知床

 8月20日(土) 曇り (走行 60km)


 朝、ヘルパーさんたちが笑顔で手を振って見送る中、清里ユースホステルを出発する。清里町は、山すそに野菜畑がどこまでも広がる、どこをとっても絵になる美しい街だった。

 さて、ここから僕はオホーツク海沿岸の町・斜里に入る。

 海沿いに広がるハマナスやハマエンドウなどの群生地である「以久科原生花園」を見た後、海沿いに続く国道334号線を一路、知床方面へとひた走った。

 知床半島西岸の港町・ウトロにたどり着いたのはちょうど昼頃。お腹が空いたので、街中の喫茶店「ボンズホーム」で北海道名物「じゃが芋バター」を食べた。ここの店で使われているじゃが芋は「くりじゃが芋」と言って、風味がほんのり甘く、普通のじゃが芋とは違った美味しさがあった。バターと合わせると、まるでスイーツを食べているような感じがした。


 今夜は北海道最北東端のユースホステル「知床岩尾別ユースホステル」に泊まる。ここはウトロよりも更に奥地に入った、周囲に人家が一軒も無い「秘境」の中に立地するユースホステルだ。宿に到着後に周りを散歩してみたが、すぐそばまでうっそうとした原生林が広がり、日が暮れると茂みから熊でも出てきそうで、一人でいるのがだんだん怖くなってきた。


 宿の夕食はシャケの「親子丼」にシャケフライ……と、まさにシャケ尽くし。

 今日泊まっているユースは二十年以上の歴史があり、現在でも「ミーティング」と称する宿泊者同士の交流タイムがある。このミーティング、道中で他の旅行者から聞いた噂のとおり、歌あり・踊りありのとことんまで明るく、強烈な印象を残すものであった。

 ペアレントさんがギターで奏でる「遠い世界に」など昔のフォークや手作りの歌にあわせ、他の宿泊者たちと一緒に歌ったり踊ったりするのだ。

 ビーイングやエイベックスのような最近人気の曲は一切やらないけれど、北のはずれの人里離れた一軒宿には、昔のフォークソングの方が雰囲気が合うし、それがまた宿泊客の間に不思議な一体感を作り出している気がした。

 ランプが灯る部屋で行われたこのミーティングは、今まで宿泊したユースには無い独特な雰囲気が漂っていた。

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