第3話 DemiorsWorld
「じゃあ、そこに横になってね」
「こ、こんな感じでいい?」
「いいよ」
ベッドはふかふかしてて、寝心地が最高だ……。
日菜はコードをPCに繋げてる。ドキドキしてきたっ
「そうそう、昨日申し込みしたよ~」
「なにの?」
「高校の入学試験。筆記と簡単な運動能力をテストするの。私もこの間受けて合格した~、のぼるもきっと受かるよっ――試験明日だけど」
「明日はちょっと無理があるよ!?」
「大丈夫大丈夫~。不合格の人いないみたいだから、形だけだと…思う?」
それはそれで不安だ。その不合格だって、誰も好き好んで言わないだけじゃないの?ネット全盛期じゃないんだから……。運動に自信はあるけど、問題は筆記テストだ。あ、明るくなった。勝手に画面が動いて、日菜が操作してる?
「まだ動かないでね、私も入るから」
「うん。筆記ってどんな問題が出た?」
「…えっと、新作のゲームに関する問題が多かったよ。前作のデメアスをプレイしたかどうか、とかね?問題と言うよりも常識?アンケートに近かったかな?…数学とか、英語の問題はないから安心して」
「それならよかった」
「これで、準備完了っと。すぐにチャット送るからね、それでは……ゴ~!」
「ゴー!」
目を閉じる。眠ったように意識だけが切り離された感覚。
共通の夢の舞台へ、データとして送り込まれた。
……ぼやけた目が段々と鮮明になっていく。草の匂いがして、空は清々しいくらいの青空だ。風を感じる。…やばい、すごいリアルだ!どこかに転移したみたい!!
「これがVR!これって、もう始まってる?」
私は緑と青が果てしない、芝生が遠くまで続く丘のテッペンにいた。
なんか、滑ったら気持ちよさそうな下り坂が……。
あっ!雲で文字を作って、デメアスワールドって描いてあるよっ!ここ、もしかしてタイトル画面?ポンと電子音がして、目の前に半透明な画面が出てきた『チャットへ招待されました』その文字に触れると、耳元で日菜の声がした。
「始めるって口にして。キャラ画面に入ると思うから、適当にキャラ作ってね」
「わ、わかった。はじめる!」
「緊張してるの?……かわい~」
――やっぱりゲームだ。キャラの作成画面に切り変わった。
操るというより、分身となるキャラの容姿と種族に経歴も決めれるみたいだ。
私はお母さんに似て、美人で本当によかった。鏡をみても嫌じゃない。
……端正な顔立ちをしている。角度を変えればそこには人を魅了する愛らしささえ垣間見える。な~んて!スペースオーシャン風に言ってみた。ちょっとナルシストかも。
「見た目は少し変えてよ?」
「わかってるって、金髪にしてみよっか……おぉ。叔母さんに似てる」
「あぁっ!私も早く見たいっ!のぼる、経歴の方は適当でいいからね?」
日菜はそういうけど、ちゃんとキャラ作りたいから待っててよ。
あれ。タトゥーないの?ピアスもない。もしかして、自分で作れと?自由度高いっていいね!
「経歴、バックグラウンドはなんでもいいの?これ後に響かない?」
「今は最初のスタートダッシュくらいかな。お好みで、魔法系がおすすめだよ」
じゃあ。人間の貴族のボンボンで、純血の魔法使いにしよう。シンプルがいいよねっ
魔物もある……後で見よ~。ん、クラスとか職業って選べないの?この次の画面?
「お、技能とスキルって出たけど。え?あれ……戻れない」
「経歴選ぶとね、戻せないから(前の画面に)」
「それ先に言って!この、技能とスキルってなに?日菜がちゃんと説明しないと進まないよ?」
他の種族も見て見たかったのに。リザードマンとか見たかったっ!
「ごめんね、初期化しないとその画面見れなくて。私も今、思い出して」
「ふ~ん。そういえばさ、日菜は前のデータでやるんだよね?」
「うん。マキオンには引き継げないけどね」
恐らく日菜は、このゲームを相当やりこんでいる。言葉端から玄人感が溢れてるよ。全然ゲームやらない人だったのに…
「でね。技能は経歴から算出された物がランダムで付いて、ボーナスが貰える。細かく言うと『剣技』だったら剣を使った攻撃に10%ボーナスとかね。職業は……称号ってある?」
「あるよ。根暗な優等生だって」
「そこから派生して、職業が付くから。始まったら多分、魔法使い見習い。後は学生とかかな…」
技能も称号もランダム?称号から職業になるって、ガチャ要素強くない?
「クソゲー臭してきた」
「いいから、次。四つスキル選んで?これ重要だよ、テストにも出る」
「実際出たんでしょ。ねぇ、覚える事多くない?筆記落ちそうかも」
「基本的な事しか出なかったって、それは頑張って覚えようね~」
スキルは四つしか持てないらしい。付け替えして、やる感じだぁ?
スキルにはパッシブとアクティブがあり、パッシブだと一つの枠が潰される。アクティブだと再発動まで待たないといけないらしい。この辺は昔ながらのゲームだね
あ、MP消費のもあるんだ?説明して、日菜。
「称号スキルと意思スキル、技能スキルもあるんだけど、これは覚えないでいいかな」
「じゃあ……言わないでよ。混乱するっ」
「うふふ、それでねぇ?道具や武器にスキルが付いてたりするから、基本的に装備が重要なの」
「なるほど?」
「あ、選んだスキルが魔法系が多いと、魔法使い見習いになる確率上がるかも?」
「おっけいおっけい、できたー」
「待って。場所はラーベルロックの東の森にしてね」
日菜の言う通りにラーベルロックの東の森……で、決定する。
本当に世界規模だわ、日本を通り越してポーランドの森で沸くみたい。今はどの国も鎖国みたいになって、海外旅行なんてできないから、みんながハマるのも分かるけど……私はまだ騙されないぞ。ほら!さっきは警告なかったのに、急に警告してきた!クソゲーかもしれない。
そして謎のムービーが始まる。すると右上に情緒のない文字が浮かんだ。※メインストーリーがクリアされています。スキップしますか?
「ねぇ……まだ日菜のデータ残ってるんじゃない?ストーリークリアしてるみたいだけど?」
「え?あ~それはね、世界が既に救われているからだよ」
「意味わかんな」
「えっとね。もう何年も前に他のプレイヤーが魔神を倒してて、ワールドストーリーっていう、このゲームの醍醐味がクリアされてるの。街に石像とかあるよ?壊れてるけどね」
「へー」
「あぁ~。全然興味なさそう……」
もうクリアされたゲームなのに、人気あるんだね。
ストーリー画面が消え、暗転する。そして――森の中で目が覚めた。
「それで?」
「今向かってる。フレンド登録だけ受理して?」
「うん…」
視界には四つのゲージがあった。赤と青と緑と黄。赤がHP。青はMP。緑と黄は分からない。片方が経験値とか?スペシャルなスキルに使うゲージかもだ。端にはチャット画面、ステータスと言葉にしたら画面が出てくる。音声認識もやっぱりあった。火から闇まで、属性耐性に斬撃に刺突、状態異常のパーセンテージ。私はこういうのサッパリわからない。感覚と雰囲気でやるタイプだ。
五分程で日菜こと、ヒナが空からやって来た。
青い髪と目、エルフ耳をしてる以外に変わった点はない。装備が強そうなこと以外ね。魔法使いの帽子に、なんだか凄そうな杖。指輪、それにイヤーカフスまで……かなり似合ってる。スタイリッシュオシャレ!!
「しかも飛んでるよ……あと、すっごいかわいい!!似合ってるね、エルフ!」
「そ、そう?のぼるも髪いいね。金髪もいい。でも、名前が『ぬぬぬ』これはちょっと適当すぎるよ?」
「今回はお試しだし、どうせ引き継げないんでしょ?ならいいじゃん」
「そうだけどぉ……」
私の分身『ぬぬぬ』の肌の色は白い。肌の色まではスキャンされてなかった。リアルでは夏の日焼けが少し残っていたが、白い。
「じゃあ、試験に出たこと教えまーす。私がチュートリアルするね?」
「お願いしまーす!」
☆
昼飯を抜き、八時間通しで遊びまくった。
日菜とネットゲームするなんて、今までになかったことだ。
買い物をするだけでも楽しいし、一緒にモンスターを倒したりするのもいい!モンスターがリアルで、感触まであって――なんだこれ!最高すぎる!!
やめ時が見つからなかったが盗賊のボスを倒したので、リアルの方でも夕食を摂るためにゲームを終了した。
「メチャメチャ楽しい!!ほんといいなぁ、ずるい!日菜だけずっとこんな楽しい事してたんだ?ずるい!!」
「んふふっ……でも、のぼるがハマってくれてよかった」
「私もう一生ここに住みたい。高校までいていい?」
「え!?い、いいけど」
「さすがに冗談だよ」
「じょ、冗談……そうなの?」
早く新作やりたいなー!!明日、試験受けて。ベータテストが三月。
ギリギリ帰ってこられる?あ、ソフトないや。いいなぁ~日菜!
「日菜、ベータの特典ってなに?」
「えっと、コスメとゲーム内貨幣と装備一式。そんな目で見ないで……」
それから、夕食を食べ。入学試験を受け。元気な妹と仲良くなり、正月が終わり。三月が過ぎ、普通電車で実家に帰ってきた。
「のぼる、おかえり!!昨日制服が届いてたよ~」
「見たい!どんな感じだった?」
「え~とね。白かった…かな?」
言葉力無いなと思ったが、ブレザーは真っ白。
私のスラックスも白い。スカートだけがちょっと灰色だ。
「ンンッ!かっこいいよぉ!!はい、はぁ~い、のぼるこっち向いて??」
「日菜もかわいい!カメラ貸して。撮る撮るっ」
「あと十枚だけ、待って…」
それから制服を交換して、写真を撮った。明日は入学式だ!
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