お隣さんと雨宮 隣の追加情報見る

「そろそろ雨宮 隣の発表の時間ですね」


お互いに今日の予定が特になかったから、一緒の時間を過ごしていると、時計の針が上を指し示す直前に月城さんが口を開いた。

確かに、雨宮 隣の発表がこれからだったな。


「まずは立ち絵と名前の公開だったよな」

「ですね。どんな反応を頂けるのか私も今から楽しみです」


まるで、自分の事のようにワクワクしてくれている月城さんを見ていると、こっちもさらに楽しみになってくる。

時間になったので、ツウィッターを開いて見てみると、早速公式ツウィートが投稿されている。

立ち絵と名前だけの簡素な投稿だけれど、色々な反応がもう付いている。


:可愛い!

:この名前って、るなちゃんが言ってた出会いの経緯から来てるのかな

:だったらエモくね?

:早くコラボ配信見たい

:コラボ名はきっと『るなりん』だな

:るなちゃんのあだ名増えたようにしか見えないの草


結構、好意的な反応を貰えていることから、月城さんが普段からお隣さんのことを話して、ファンの人たちに受け入れてもらえていた事が伺えたのが、少し恥ずかしいような嬉しいような変な気持ちになる。


だって、自分の知らないうちにこんなに好意的に思って貰えてたとか、どう受け取ればいいのやら……


これに合わせて、開設された雨宮 隣 用のツウィッターのアカウントをフェアリップから支給されたスマホで見てみると、既に1万のフォロワーが付いている。

これを見るとやはり『夜空 るな』とフェアリップの人気がとんでもないんだなと改めて実感した。と共に期待されていると言うプレッシャーものしかかってきた。


「良いスタートですね」

「無名もいいところなのに、やっぱり夜空 るなとフェアリップの拡散力あってこそって感じかな」

「ふふ……初めはそうかもしれませんけど、これからは七海さんの力でもっと人気になって行けますから、これからが楽しみです!」

「……そうだな、うん。期待に応えられるように頑張ってみるよ」


決意を新たにして、頷く。

デビューが本当に現実的なことになってきたことで、少し腰が引けてしまっていたけれど、月城さんの自信満々のその言葉に勇気づけられたな。


「そういえば、配信のスタイルはどのようにしていくのですか?」

「そうだなぁ……やっぱりこれまで、料理系でやってたし出来たらそれでやってみたいかな」

「あぁ……これで七海さんのご飯を独占出来なくなってしまうとは……」

「出た、食いしん坊キャラ」

「七海さんのご飯が美味しいのだから、しょうがないです」


あまりにも堂々とそう言うので、笑いが込み上げてくる。そんな俺を見て、頬をふくらませてわかりやすい感じに怒る月城さん。


「あっ、笑いましたね」

「すまんすまん」


少しツボに入ってしまったので、笑いが止まらなくなってしまい、口を軽く押えて笑っていると頬をさらにプクーとフグみたいに膨らませるのが可愛らしい。

ちょっとして落ち着いてきたので、俺も正直な気持ちを伝えておくか。


「俺も、月城さんが美味しいそうにご飯を食べてくれるの嬉しいから、これからも変わらず君の為に作っていくよ」

「…………」


笑ったことで目の端に浮かんだ涙を指で拭ってから、月城さんのことを見ながらそう言うと、顔を真っ赤にして一時停止したように動かなくなってしまう。


「ん?どうした?」

「こ……これだから天然さんは……」

「何故に天然……?」


理由を問いただそうとしたら

知りません!と顔を真っ赤にしながら言われたので。これ以上、機嫌を損なわないようにとりあえず彼女の好きな料理を作ってあげることにするかと、キッチンに向かう事にした。





それから昼食を取ると、すっかりと機嫌がなおった月城さんと並んで座り、配信を行う時の心得などの大切なことを色々と聞く時間になった。


「七海さんは料理配信を中心に行っていくという事ですが、調理はどこでする予定でしょうか?」

「とりあえずは自宅かなぁ」


俺のやっていたチャンネルでも、家のキッキンを使っていたわけで、そのまま使ってもそこまで弊害はないだろう。そう思ってそう伝えたところ、月城さんから予想外の言葉が出てくる。


「でしたら、フェアリップのスタジオを使いますか?」

「え?」

「聞いて驚いてください!なんと、フェアリップ本社には調理用のスタジオがあるのです!」


ばーん!と効果音がつきそうな感じでポーズを取りながらの主張。何やらテンションが上がっている月城さんに微笑ましくなった。けど、純粋な疑問も出てきたのでそれをそのまま聞いてみる。


「調理用スタジオなんて、フェアリップ所属VTuberのどの配信でも聞いたことないんだけど」


そう聞いてみたところ、目をキョドキョドし始めてしまう月城さん。しばらくして、観念したかのように肩を落とすと、ある程度予想はできていた言葉が出てきた。


「ほぼ誰も料理しないので、日の目を見ることがあまりせんでした、はい……」

「……だろうな」


どうやら、俺がフェアリップ所属VTuberで初の料理系VTuberになることになりそうだ。

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