お隣さんはVTuberと判明したけどそんなことより
:るなちゃん、立ち絵出てないよ
「あっ……確かにそうですね。少しお待ちを、今出しますね」
リスナーの人に言われて月城さんが画面を操作して立ち絵を出すと、そのイラストに俺は彼女の正体を初めて知ることになった。
「もしかして、夜空 るな?」
:夜空 るな自体は知っていたのか
:その紹介もしてなかったの?
:お隣さんマジでただ世話を焼いてただけなのが現実的になってきた?
:そりゃそうだろ
:誰か知らないでやってたとか献身的すぎるわぁ
リスナーの人達がザワザワしているのを尻目に、俺は呆然とするしか無かった。
いや、普通考えるか?
お隣さんだと思ってたのが有名VTuberなんて。
しかし、どこか納得もいった。
改めて思うと月城さんと夜空 るなの声を聴き比べてみるとよく似ている。
それにさっき従者と言いかけていたのも。
従者と言うのは彼女のリスナーネームなのだ。
「ふふふ、そうですね。なにを隠そう、この私は人気VTuberグループのフェアリップ所属、夜空 るな……その人なのです。お隣さんも従者だったとは驚きですが……」
「あぁ〜……すまん、別に従者じゃないんだ」
「私が夜空 るなだからといってこれからの関係を……今なんと言いました?」
自信満々に話していた月城さんには申し訳ないけど、正直に本当のこと言うか。
「夜空 るなを知っていたのは作業用に長い配信とか欲しくて、最近見つけたって感じかな」
言わばただの偶然である。
動画編集はどうしても長丁場になるのは当たり前なわけで。そうなってくると何かしら垂れ流したくなるから、長時間配信をしてくれたりするVTuberなどの配信者は都合がいいのだ。
それで結構長時間配信をしているのが夜空 るなだった。それだけなのだ。
「まあ、そんな事は今はいいさ。一旦置いておこう」
「そんな事言われました」
俺の言葉に月城さんが捨てられた子犬のようにシュンとしてしまった。
「俺が今1番気になるのは長時間配信をしていた。それに限る」
「一体何を、私が夜空 るなと言うこと以外に気になること……なん……あっ……」
:え?何この空気
:お隣さん怒ってる?
何を言いたいのか分からないと質問をしてきていた月城さんも直ぐに理由に気づいたようである。
俺が何に怒っているのかを
すぐそこで固まっている月城さんと画面の夜空 るなを尻目に話を続ける。
「俺の知らぬうちにまた夜更かし、していたんだな?」
声に威圧感を込めてそう言うと、彼女は目をキョドらせ始める。
「えーと、それはそのぉなんと言うか……すみません」
「素直に謝ることが出来てよろしい。まったく、夜更かしはお肌の敵とよく言ってるだろうに」
たまにしょぼしょぼしてたと思ったらこういう事だったのか。多分、今回の料理もそのためだったのかもしれない。
そんな風に呆れていると、ふと気になったのでコメントの方に目を向けると。
:え?何この流れ?
:これはおかんですわ
:あぁ、これがるなちゃんが言ってたやつね
:彼氏なのではと邪推する人いたけど、これはお母さんですわ
あ、そういえば釈明?配信してたはずだったな。
自分で流れを変にしてしまったのは反省しなければ……
「従者の皆様を放置してしまいましたね……申し訳ございません」
「いや、すまん、これは俺のせいだわ」
月城さんも配信していたことに気づいたのか、少し申し訳そうにしていたので、俺もそれに追随するように謝る。
「けど、これで何となくわかって貰えたかと思うのですが、このやり取りなどを私が従者の皆様に定期的に語っていたので、受け入れてもらえる土台が出来上がっていたということです」
:るなちゃんはお隣さんに餌付けされてたことをな
:お隣さんがいないと生きていけない体にされたとな
:いやらしく聞こえそうなのにさっきのやり取り聞くと全然聞こえない事実
「それは分かったよ。けど、それとここに呼ばれた理由はまた別な気がするんだが」
受け入れて貰えたのはとりあえず分かった、けど本題はまた別なような気がして、純粋な疑問を聞いてみた。
「そうでした。今回お隣さんをここに呼んだのは理由があるのでした!」
すると、月城さんが突拍子も無い提案をいきなりしてきた。
「お隣さん、VTuberに興味はありませんか?」
多分、ここがターニングポイントだったのだろうなと後になって考えたのはまた別の話である。
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