第5話 もし言葉が点ならば
もし言葉が点ならば
点の言葉を書いてみたい。点というと小さそうだ。物理的な大きさは、たとえに米粒が浮かんだがそうではなく、人がなんの支援も受けずに読み書きできる大きさ、とここではする。顕微鏡があれば読めるということはなく、裸眼で扱う文字サイズとしておく。内容を覚えていられるくらいの内容を有している。あらゆるものが引いてみれば単純な点に見え、寄ってみればさまざまに複雑でありえる。 どんな長さの文章でも点でありえる。一文字で点であり、一冊でも点である。区切りのつくひとまとまりの文章は、点である。
もし文章が点ならば
点のあり方は自由だが、決まっていることもある。点と点の間の空間は真空である。点は周囲に空きスペースをもっている。点は独立していて、周囲の点に一定の距離がある。それ単体でも意味を成している。自律した意味をもつ文章がいくつか真空に浮かぶ。 真空を介して隣同士の点とつながりがある。点が増えれば、より多く、周囲の点とつながる。遠くの点ともつながる。書かれた時点を基準に、時間的に遠く離れた点とのあいだにもつながる。時間的な隔たりの他に、地理的に離れた点とも、文章同士のつながりがありえる。
もし点として文章を書くならば
つながりを言葉に書くと、線の文章になる。点と点の隙間は埋まる。点と点から線ができ、線から立体になる。立体的な文章がある一方で、文章を線でつながずに、点だけが浮かんでいるような文章がありえる。点だけの文章は、平面的で、つながりや奥行きを想像させる余地がある。点の書記法がしやすいエディタがありえる。そこでは点と点の距離を自由に配置できる。距離感を判断してくれる機械が相棒になる。執筆の作業は、点と点の距離を調整することや、点の密度を調整することになるだろう。星図のような画面で。言葉と言葉の距離を相棒は知っている。
書くことのエスキス 石上丁 @IshiGamiTei
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