第3話 空蝉

 ジージージー。

 

 カレンダーの上では夏はそろそろ終わるはずなのに、まだ夏は終わっていないと言わんばかりの太陽をにらみつけた。すぐに目をそらして、今回の被写体を探していく。こうも暑いと、よいものを探そうという気もなくなってくる。


 ジージージー。


 絶え間なく振り祖沿いてくる音ののれんをくぐりながら進んでいくと、道端にヒマワリが咲いているのを見つけた。どこかの家の子どもが育てているらしい。なぜそう思ったかというと、ヒマワリの足元に「まっちゃん」というつたない字で書かれたプレートが刺さっていたからだ。

 ひ”ま”っちゃん、まさしく子どもらしい発想だ。5秒で考えたに違いない。そう思いながらしゃがみ込むと嫌な予感がした。


 セミがいた。しかも足の広がった”爆弾”の方。セミは苦手だ。子どものころはよくとって遊んで、虫かごいっぱいに詰めていたが成長していくにつれて苦手になっていった。

 後ずさるつもりが、間違えて踏み込んだものだからセミは勢いをつけて跳んでいった。しかし、それは黒ではなく透明に近い白だった。


 あ。


 私は慌ててシャッターを切った。


 

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怪異スナップ 一色まなる @manaru_hitosiki

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