第2話 唐傘お化け
しとしと。
しとしと、と。
静かな音を立てて雨が窓ガラスを伝っていく。久しぶりの雨が降ったおかげか、生け垣の緑が際立って見えた。アジサイの青や赤紫が沿道に沿って大きな毬のように見えた。合羽をかぶり、カメラを持って外に出る。時には花や何気ない日常をとるのも悪くない、そう思いカメラを構えていると雨音に混ざって何やら不思議な音が聞こえてきた。
ぴちゃん。
ぴちゃん。
ぴちゃん。
普通なら間を開けずに聞こえてくるはずの足音が一つずつ聞こえてきた。まるで、両足をそろえて一緒に歩いているような。
(まさか)
確かに、ここは人通りが少なく出てくるとしてもおかしくはないけれど。
ぬるりとアジサイの壁の合間から出てきたのは古めかしい傘だ。和傘と呼ばれる、和紙を張り合わせてできたその体は所々がしみがついていて、先の方になれば痛んでいた。
特徴的なのは本来人が持ち手にするところが人の足になっている所だ。一本足で跳ねるように道端に出ていた。足は影が落ちていても分かるくらいに細く、そして白かった。
傘だから雨はうれしいのだろう。
時折傘を広げたり、屈伸して大きく跳ねあがったりと雨を愉しんでいるようだった。それはどこかアジサイの毬で遊んでいる子どものようだった。
——— シャッターを押し込んだ。
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