第12章 車魔

「やー!ハピネスシティ!どんなところだろ!?ワクワク!」


 ついに、大都市・ハピネスシティに行くことができそうで、鈴華は上機嫌。


 ………というか、病気が治ってからとにかく鈴華はテンションが高い。


「うん、そうね、嬉しいわよね。だからさっさと車魔を借りちゃいましょう。」


「ははは!だね!……ねぇ、おじさん!車魔に乗りたいんだけどー!」


 この車魔貸出所の管理人と思われる人に、鈴華が声をかけた。


「車魔にかい?誰が乗るんだい?」


 50代くらいの、白髪混じりのおじさんが出てきて、そう言った。


「私と、皐月!」


「皐月?」


 おじさんが首を傾げた。


「あ、皐月は私のことです。」


 慌てて言った。


「大人は?お母さんとか、お父さんとか……。」


「実は私達、今、冒———」


「母と父は仕事で忙しくて、私たちをここに送ったあと、ハピネスシティに戻りました!」


 大きな声で、皐月は鈴華の声を遮って言った。


 冒険の話とかしたらめんどくさくなるでしょうよ。


「んー、つまりお嬢ちゃんたちは、ここに家族できたは良いものの、帰るのは2人だけってことか。」


「ああ、そうです、そうです。」


「そうか、大変だな。………ま、車魔は、好きなのを選んでくれ。決まったら声をかけてくれよ。」


 車魔の使用許可が出た。よかった。


「どれにする、鈴華?」


「えっとね、大きいやつが良い!椅子が8個ぐらいついてるやつ。」


 いやいや。


「大きいのはやめておこう。小さい方が小回りが効くよ。」


不必要に大きいものにはしないでいただきたい。大は小を兼ねるって言うけど、小があるならそれでよい。


「!確かに。」




 最終的に、車魔は黒色の、2人用のものに決まった。




 黒色なのは万が一傷がついても目立ちにくそうだから。


「おじさーーーぁん!決まったよーー!!」


 大きな声で、鈴華がおじさんを呼んだ。


「よし、わかった、これだな。そうすると………、60分で100円ってところか。」


「や、安い!」


 驚いて、つい声が出てしまった。お手頃とは聞いていたけど、これほどとは……!


 だって、病院だってあんなに高かったのに………。


「そうだろう?都市が、金を出してくれてんだ。」


「あ、あの、お金はどうやって払うんですか?」


「使った時間に合わせて、金が減っていく仕組みさ。そこに金を入れておいてくれ。60分までは100円、それよりも長く使うなら、20円ずつ値段が上がるぞ。」


 なるほど。


「さ、中に入って金を入れてくれ。ちなみに、レビトラーナ空中浮遊魔法を使うのはどっちだい?」


「私です。」


 皐月は言った。


「運転は?」


「私です。」


 鈴華は言った。


「2人でやるのか。まあ、お前らの年齢ならそれくらいが安全だ。レビトラーナ空中浮遊魔法を使う方は助手席に座りな。で、運転する方は、もちろん運転席。運転の仕方はわかるな?」


「うんっ!もちろんだよ!」


 鈴華が胸を張って答えた。


 悔しいことに、鈴華は『車魔運転コンテスト』で、毎回トップ3には入るほどの猛者だ。


 ………ん?私?私は、まあ、下から数えた方が早いくらいだね。


「さ、乗ってくれ。」


 先ほど言われた通り、鈴華が運転席に、そして私は助手席に座った。


「行ってきな。この車魔は、ハピネスシティで返せば良いからな。」



 皐月は、運転席と助手席の間の穴に、レビトラーナ空中浮遊魔法を使った。



 車体が浮いた。


 鈴華が、鈴華の左側にあるレバーを倒した。


 すると………。



 車魔が動いた。鈴華は素早くハンドルを動かし、速く、でも丁寧に車魔を進めた。







 そうそう、ちなみに車魔の利点はね、レビトラーナで車体を浮かせるから、摩擦がないわけじゃん?だから、速く、スムーズに動かすことができるところだよ。


 車体も、車に比べてシンプルで良いから、安くなるしね。


「安全運転!健康第一!」


 鈴華はそう言いながら、器用に車魔を進めて行くのだった。

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女の子と魔法少女 聖帆 @T-Seiho

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