第11章 モデル


「モデルデビューか!いやー、嬉しいねぇ!」


 満面の笑みを浮かべながら鈴華は言う。


 受付のお姉さんは、モデル(鈴華と皐月)のための服を買いに行った。なにやら、モデルたちの服がシンプル過ぎて良くない、とか………。



 1時間ほどして、お姉さんが帰ってきた。



「鈴華さん、皐月さん、こちらを。」


 さっそく、専用の部屋で(ただの病室)着替えた。


 皐月の服は、ジーンズ地のオーバーオールに、白色のTシャツ。靴は今まで通りの黒色のスニーカー。


 正直言って、可愛い。


 素材皐月がもともと良いのはもちろんあると思うのだろうけれど、服の趣味もとっても良い。


 ナイスセンス、受付のお姉さん!


 

 試着室を出て、受付に向かうと、もう鈴華がいた。鈴華の服もとっても可愛らしい。


 鈴華の服は、赤色のチェックのミニスカートに、筆記体のロゴが胸の辺りに書いてある白色のTシャツ。靴下は黒色のハイソックスだ。鈴華も、変わらず黒色のレインシューズを着用している。


「鈴華さんも皐月さんも、とっても似合っていますよ。じゃあ、あそこに立って、私の言う通りにポーズをとってくださいね。」


 鈴華と皐月は白色の壁のところに立った。


「鈴華さん、手を、”頑張る”みたいな形に…そうそう!」


 鈴華は、両手を握りしめて、顔の横に持っていった。


「それで、笑顔にね〜!そう、いい感じ。そのままキープ。皐月さん、右手をげて、左足もあげる!そうそうそう!笑顔ね!笑顔!」


 皐月は右手を広げて高くあげ、左足はかかとがお尻につくぐらいまであげた。口角も、忘れずにあげた。


「はい、じゃあ、撮るよ〜!」



 パシャッ、パシャッ、パシャッ、パシャッ、パシャッ、パシャッ!



「もっと撮るよ〜!」



 パシャッ、パシャッ、パシャッ、パシャッ!



「はいっ、ありがとうね!」


 鈴華も皐月もなんだかほっとした。






 受付のお姉さんに写真を見せていただいた。


「私、めちゃくちゃ可愛い!」


 鈴華が言う。私の方が、と皐月は言い返したかったが、堪えた。




 私は、大人ですから。




「そうね。鈴華さんも皐月さんもとっても可愛らしいわ。」


「あの、この洋服はどうすれば良いですか……?」


 貰っても良いのだろうか。


「荷物にならないのであれば、どうぞ持って行って。」



 悩んだ末、結局洋服は、皐月の着ていたオーバーオールと、Tシャツにした。貰うなら、動きやすいものが良かったから。







 それから1時間後、鈴華と皐月は病院を出た。これからハピネスシティに向かう予定だ。


 お姉さんに聞いた話によると、まず、ここは”ハピネスカントリータウンB幸せの田舎町B”という場所らしい。ネーミングセンス無いわよね。


 そして、ここからハピネスシティに出るには、車魔くるまを借りれば良いとのこと。値段もお手頃らしい。



 ——車魔とは、この世界にある、魔法を利用した車のこと。レビトラーナ空中浮遊魔法を使って浮き、進む——



 鈴華と皐月は、ハピネスシティに出るため、車魔を借りに行くのであった。

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