第10章 仕事の依頼
「あ、怪しい薬、ですか?」
皐月は動揺が隠せない。思い当たる節などいくつもあるからだ。
「はい。えっと………、まず、鈴華さんは、片側性頬熱病という病気にかかっていたんです。」
皐月の予想は当たっていた。
お医者さんによれば、片側性頬熱病は注射を打てばすぐに治ってしまうようなものらしい。
「しかし、そのあとの鈴華さんの様子が変でして。副作用のない薬なのですが……。」
皐月はお医者さんのあとを追って、鈴華のいる部屋に入った。
「あっ、皐月!見てよ、私、すっかり元気になっちゃった!へへ!」
鈴華はクルッと一回転。
「お元気そうで何より。…お医者さん、どこが変なのですか?」
「今はなんてことないのですが、先程まで、『私は魔法少女、りんりん!』と叫んでいて、手のつけようがなく………。」
「りんりん?」
なんだろう、それは。
ていうか、手のつけようがないって……。人に迷惑かけないでほしい。
「ふっふー、りんりんって言うのはね、私のニックネーム!注射してもらってる間、私寝てたんだけどさ、その時に、夢の中で神様みたいな人が語りかけてきたんだよ。『鈴華よ。これからは魔法少女りんりんとして世界に貢献しなさい。』ってね!」
ニックネーム?夢の中?神様?世界に貢献……?
はあ。
「お医者さん、鈴華はいつも通りです。ご心配ありがとうございます。」
「あ、ああ。そうなんですね。わかりました、こちらこそ失礼いたしました。」
鈴華には本当に参っちゃう。
その後、受付のお姉さんに呼ばれ、鈴華と皐月は受付に行った。
「片側生頬熱病は再発しやすいものなので、これから1週間はお薬を飲んでくださいね。粉薬か錠剤、どちらがよろしいですか?」
「粉薬が良い!」
鈴華がすぐに答えた。ふっ、鈴華はお子ちゃまね。私は半年前には錠剤をマスターしているのよ。
「粉薬ですね。では、夜に1袋ずつ、お飲みください。……それと、お金はどうされますか?」
お金?
「お金って、なんのお金……なんでしょうか?」
病院も……、そうだよね、お金、かかるよね。
「お薬代と、診察代ですね。このお薬の場合なら、1袋520リースなので……、1週間で3640リースになります。それに加えて、診察代で……。」
3640リースならギリギリ払える。
「えっと……、診察代は、子供(中学生以下)ですと、1万リースですね。」
え……?いちまん……?
いや、おかしいでしょう。お薬代を大きく上回っているじゃない!
「どういうことでしょうか??」
「高くて申し訳ないです。ここは田舎ですので、都会よりも高くとらないと生活できなくて………。」
お姉さんは困った顔をした。
田舎の方が都会より安いなんて、そんなことある?
……理由はどうであれ、今の手持ちは5000リースほど。それは変わらない。
つまり。
どう足掻いても1万3640リースは払えない!!
「ど、どうすれば良いですか??」
お姉さんに、わらにもすがる思いで尋ねる。
「やっぱり払えないですよね………。どうしましょう。私にもわからないです。」
頼りない………。
「お姉さん〜、ここは私の可愛さで、ちょっとだけ、まけてくれません?」
何を言うておる。
「え?」
ほら、お姉さんも驚いているよ。
「それ、良いかもしれないですね。」
………は?
「鈴華さんも皐月さんも、とても可愛いので、この病院の広告のモデルになっていただけませんか?」
「え、そんなことで良いんですか?」
希望が見えてきた。
それにしても、やっぱりこのお姉さん、私のこと可愛いって思ってたんだ。まあ、誰でも思うだろうけどね。
「ええ、ここは田舎ですので、可愛い子もあまりいないですし、都会に行こうとしても、そんなに病院をあけていられないですし。やって下さるなら、今回の診察代とお薬代は払わなくて良いですよ。」
お金を払わなくて良い……だと!?
「「ぜひよろしくお願いします!」」
鈴華と皐月は声を揃えて言ったのだった。
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