第8章 危機一髪


「皐月……?コホッコホッゴホッ…、どうしたの。」


 そう言って、鈴華は氷の箱から出てきた。


「コホッ……、これ、コンクリート?」


「ええ。どういうことかしら……。」


「越えられ、ゴホッ、ないの?」


 越えられなくはない。横にハシゴがついている。しかし……。


「ハシゴが錆びていて、いつ壊れるかわからないわ。」


 そう。ハシゴはボロボロ、埃も被っていて、あまり頑丈そうには見えない。


 皐月は足をかけてみた。とりあえず、1段目は壊れなそうだ。


「ゴホッ、でも行くしか、ないよね?」


 コンクリートの壁は100㍍ほど。浮いては行けない。


 ………登るしか、ないのか。


「じゃあ、まず、鈴華が行って。もし、足を滑らせたり、ハシゴが壊れても、私が魔法で受け止めるわ。」


「わかった。」


実際には、高いところから落ちてきた物を受け止める魔法なんて、皐月は使えない。鈴華を安心させるために言っただけだ。


「ゴホッ、到着した、よ!皐月、ゲホッ、おいでー!」


 鈴華は無事に登り切ったようだ。


「じゃあ、行くわよ。」


  1段目に足をかける。そして2段目、3段……。


慎重に、急いで皐月は登る。そして、コンクリートの壁の上の部分に手をついた時……、


 足元のハシゴが崩れた。


 軽く添えていただけの手では体重を支えきれず、皐月の体は落ちて………、



 パリンッ………。



 浮いた。


 ふわっと浮いて、気がついた時にはコンクリートの壁の上の部分に立っていた。


「「??」」


 鈴華もなにが起こったのかわかっていないらしい。


 ハシゴのあたりには、金色の粉が舞っている。


「ゴホッ…、なに?ゲホッ、どういうこと?」


 生きている。金色の粉が舞っている。その事実だけしかわからない。


 考えても何が起こったのかわからないため、鈴華と皐月はとりあえず先を急ぐことにした。

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