第3章 決行の日
ついに、この日が来た——。
約束の時間である夜10時、の10分前。皐月はこっそり家から抜け出し、鈴華と約束した場所にいた。
準備は万端。ハンカチ、ティッシュ、水筒、絆創膏、日焼け止め、お金、虫除け、殺虫剤、杖。杖は魔法を使うときに必要不可欠なのである。
さらにさらに、皐月は自分の机の上に、
“友達と、夏休みの旅行に行ってきます。”
という手紙を置いている。両親は心配で仕方がないだろうが、皐月が自分の意思でいなくなったことは伝わるはずだ。
遅刻癖のある鈴華も、今日は約束の時刻の8分前にきた。
「うっわー、皐月、早いね。私だって、早く、きたのに。」
家から走ってきたのだろう、息を切らしながならそう言う。
「お!もしや服に、気がついた?1ヶ月前に、私、服破いたじゃん?……孫の手で。それで新調したやつなんだよね。」
「……この1ヶ月間はどうやって過ごしてたの?」
「平日は学校だから制服でしょ、で、休日はパジャマ。」
鈴華の家は貧乏なので、1着しか外出できる服が用意されないらしい。
「新しい服を着て冒険に出かけたかったから、これ着るの、我慢してたの〜!」
そう言って鈴華はくるりと一回転。ベージュ色のワンピースがふわりと舞う。腰に巻いてある白色のベルトが可愛い。靴は膝丈の黒色のレインブーツだ。
「皐月も、可愛らしいよ。」
シンプルイズザベスト。
私は白いTシャツにジーンズ地の半ズボン、白色のハイソックスを履き、靴は黒色のスニーカー、という感じでまとめている。
「ありがとう、鈴華。それじゃあ、行こうか。」
「うん、行こう。……えっと……。」
「どこに行くか決めていなかったの?」
「いや!チガウヨ。あっち行こう!あっち!」
「良いけど、そっちは森よ?危ないよ。」
「危ないからこそ、冒険だから!うん。」
そう言って鈴華は行ってしまう。でも、その森は……。心配ではありながらも、皐月は鈴華の後ろを追いかけた。
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