第31話 自宅に呼んで合宿会議
最寄りの駅を降りた3人は近くのスーパーに寄り、夕食の材料などを調達することにする。
「なにか食べたいものはありますか?」
「私、主任の料理が食べたいです♪」
「もちろん。俺が作るよ!」
「でも、会議するんで簡単に作れるものになるけどね」
「ああ、そうだったな。うん会議、重要だ」
「??先輩?今日の目的は会議ですよね?」
「当たり前じゃないか!わはは」
先輩の(そうだった)発言が少し引っかかったが、気のせいだろうと思い買い物を続ける。
「なんか、こうやって主任と一緒に買物カゴを持ってると……ぉぉぅ♡」
またなんか妄想しているようで、宮本優美の顔がニヤケている。
――n先輩の心の声――
おい。宮本。こっち側に帰ってこい!
お前、今どんな顔してるのか鏡で見てこい(笑)
同人誌を見て妄想している腐女子と変わんねえぞ(笑)
もう一度言うが、今日の目的を間違えるなよ!
それに、なにしれっと自分の歯ブラシ買ってんだよ!
お泊り女子か?
気をしっかり持て!
――心の声終了――
「よし。食材も買ったし、行きますか」
「はーい♪しゅにんのいっえ!行きましょう!」
材料も買い込み、自宅に戻る途中、大事なことを思い出した。
「あ、家に帰る前にゴブリンダンジョン行かないと……」
「麟太郎。何故だ?」
「昨日ダンジョンが休止してからそろそろリポップする時間なんですよ」
「ああ、なるほど、スタンピード対策か!」
「そうです。まだハンターが揃ってないので」
「放置しているとモンスターが溢れて近隣の住民にも被害がでる可能性もあるので」
「主任!それでしたら私たちが行きますよ」
「私と係長でジェネラルを討伐すれば良いのですよね」
「ま、まぁそうだけど、俺は?」
「主任は料理の準備があるじゃないですか!美味しい料理!」
「私たちが狩ってる間に作っていてもらえると萌えます」
「萌え?」
宮本優美は妄想の天才である。
今の彼女の頭の中は、自宅で料理しながら帰りを待っている彼氏の手料理を想像していたのだ。(普通逆じゃない?)
そう、普通は彼女が彼氏の帰りを待ちながら手料理を作っているシチュエーションを想像するのだが、今回は彼の家である。
初めてお邪魔する立場なので、そこから妄想が始まっているみたいだ。
彼氏の家に行ったら手作りの料理で迎えてくれたというシチュエーションが、彼女の考えた萌えなのである。
「萌えは置いといて」
「先輩大丈夫ですか?」
「おう。任せとけ!」
「ってか、アイツ1人でも問題ないけどな(笑)」
「たしかに(笑)」
「じゃぁ、ダンジョンの近くでインビジブルを掛けます」
「了解」
「任されました!」
麟太郎はゴブリンダンジョンの付近まで行くと、二人にインビジブル(透明人間)を付与した。
さらに効果時間の設定を設ける。
効果時間は討伐してダンジョンから出てくる所までとし、警備の目が届かないための配慮をする。
「じゃ行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
早速自宅に戻り、夕食の準備を始める。
手早く済ませるために今回作るのはビーフストロガノフ風ハヤシライス。
牛肉を赤ワインで漬け込み、スライスした玉ねぎと一緒にバターで炒める。
そして、パプリカパウダーで風味を付け、ブランデーでフランベした。
そこに、伊庭家秘伝のデミグラスソース(仕込んで冷蔵庫にストックしていたソース)を投入し軽く煮込む。
あとは、適当に前菜とサラダを作り、二人の帰りを待っていた。
小一時間経ったろうか。
〖ピンポーン♪〗
「はいはい。今開けますね!」
「麟太郎。終わったぞ」
「ご苦労様です!ささ、上がってください」
「主任♪お邪魔します!」
「優美ちゃんもお疲れ様――」
「先輩。どうでした?ダンジョン」
「どうもこうもねえよ」
「俺は見てただけだ(笑)」
「やっぱそうでしたか……」
「主任!私頑張りました!」
「そっか。そっか。そうだよね」
そう言うと宮本優美は部屋を見渡しキョロキョロとしだし、徘徊をはじめた。
「こら!宮本!人んちで勝手にウロウロすんな!」
「なに後ろを振り向いてんだよ!」
「お前だよ。おまえ。そうお前だ」
「ここ。……そうだ。ここに座れ」
「はい……。」
N先輩は宮本優美の暴走を止めるべくリビングのソファーに誘導した。
「みなさん、御飯が炊き上がるまであと15分ほどありますので」
「軽く飲み物でも飲んでミーティングしましょうか」
「ああ、わかった」
「今回の合宿の件なんですが日程はどうしますか?」
「やっぱお前が言ってたようにゴールデンウイーク辺りが丁度良いんじゃないか」
「優美ちゃんはどう?」
「私の家族もゴールデンウイークなら全員合わせられます」
「じぁ決まりだな」
麟太郎の提案に2人とも賛成のようだ。
そして彼らに相談を持ち掛ける。
「それとですね、今回のメンバーですが」
「もう一人呼びたい人物が居るんですが、大丈夫ですかね」
「ん?だれだ?」
「もしかして、隣の今日子さんか♡」
「ちがいます」
「同じ部署の進藤君です」
「ああ、新入社員の進藤か。しかし何故?」
麟太郎は2人にステータス検査の時の事情を話した。
その経緯を聞いて、納得してくれたようだ。
「進藤君、研修のときに私が担当したんですけど」
「すごく大人しい子だったのでそんな熱い思いがあったとは意外です」
「だな。俺も礼儀正しい控えめな新人だと思ってたから驚いてるよ」
「じゃぁ、正式にメンバーに加えますね」
「わかった」
「はい!」
「お、御飯が炊けたみたいだ!」
「食事にしますか!」
「やったー!!」
――――――――――――――
その頃、港区支部の情報を田中から伝えられた【新海】は【あの方】への報告にためらっていた。
まだ情報が少なすぎるのである。
【あの方】は報告をいれると必ずこんな言葉が返ってくる。
『対応策は?』
こちらが単に情報を報告するだけではダメなのだ。
報告だけなら誰でも出来る。
幹部に求められているのは、情報を整理しそれに対するしっかりとした対応策を、セットにして報告しないと許されないのである。
新海は焦っていた。
日比谷ダンジョンの失態を取り戻すためには、何としてでもダンジョンを消滅した張本人を探し出し、例のキューブを奪い返さないと自身が【あの方】に消される危険がある。
考えてても前には進まない。
「嫌な相手だか、もう一度連絡してみるか」
同じ組織に所属しているライバルでもあり、あまり貸しを作りたくないのだが、そうも言ってられない。
新海は先日、電話した警視庁の○○にもう一度アポを取る決断をした。
――――――――――――――――――
少し狭いリビングのテーブルを囲み、夕食にありついた3人であったが……。
「あー美味しかった♪幸せ♡」
「麟太郎!うまかった!御馳走様」
「いえいえ。今日は簡単に作ったので、大したものでは(笑)」
「主任!なにを言ってるんですか」
「お金払ってでも食べたい料理でしたよ!」
「うちのお父さんも言ってました」
「伊庭さんの料理はもっとたくさんの人に食べてもらう価値があると」
「そんな(笑)優美ちゃん乗せるのがうまいね(笑)」
「そんな事言ってたらサービスで食後のコーヒー出しちゃうぞ!」
「わーい♡」
「これがしゅにんとの生活なんですね♪」
「宮本……。」
N先輩は呆れていたが、そろそろ本題に触れようとタイミングを計っていたが中々切り出し方が難しい様子だ。
「それではさっきの続きなんですが合宿場所はどうしましょうか」
「今は全国にギルドが設立されたので、どこでも行けますよ」
「やっぱ車で行ける範囲で探すのが良いんじゃないか」
「そうですよねー」
『ピンポーン♬』
「ん?」
「誰だろう?」
会議中、突然誰かが訪ねて来たようだ。
こんな時間に誰だろう?不思議に思いながら玄関モニターで確認してみると、なんと西野美咲の姿が!!
「麟太郎。誰か訪問者か?」
「あ、あ、えと、何て言うか……」
「お隣さん?かな?あはは……」
「なに!!今日子さんか♡」
「いや、その、妹さんの方です」
「主任!私が玄関に」
「ちょーーと。待った優美ちゃん。ややこしくなるから」
「君はここに!俺が対応するから」
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