第27話 疑似ステータス(改稿)
一通り、ステータス検査も終り、資料をまとめていた麟太郎であったがふと思い出した。大事な事を忘れていた。
そう。自分自身が検査を受けてないのだ。
慌ててAIに相談する。
(AIさん!大変だ!)
<どうされましたか?>
(俺、ステータス検査を受けてない汗)
<そうでしたね、かしこまりました>
<疑似ステータスの表示を作成します>
■■■■■■■■■■■■■■■■
〖個体名〗:伊庭麟太郎(いばりんたろう)
〖属性〗:人間
〖種類職業〗:商人
〖Level〗:10
〖経験値〗:4521
[next]:1548
〖HP〗:250
〖MP〗:180
〖攻撃力〗:120
〖防御力〗:95
〖魔力〗:80
〖アビリティー〗:”アイテムボックス” ”中二病”
〖スキル〗:
〖魔法〗:《魔物探知》
〖Cube Setting〗
slot.1:
slot.2:
slot.3:
■■■■■■■■■■■■■■■■
「おい!商人って(笑)これじゃハンターになれないじゃん!」
<ですが浅田様にバレてますので>
<ここは補助職ということで申請してみてはいかがでしょう>
そうだった、そういえば浅田にあれこれ言われ取り繕った言い訳が職業〖商人〗だった。
その場の臨機応変だったとはいえ、この職業で貫き通すしか方法は無い。
だが、ものは考えようだ。ハンターのパーティーメンバーとしてアイテムボックスがあるのは仲間からしてみれば心強い。
何回も繰り返し荷物の為に戻らなくても良いし、攻略期間に必要なサバイバル物資なども準備出来る。
要は日比谷ダンジョンの時のような立ち回りをしていれば重宝されるという事だ。
そうすると問題となってくるのは攻撃参加ではなく、いかに俺が仲間に迷惑を掛けないようにやり過ごすかだが……。
ファンタジー世界の定番だと馬車に乗った商人が道中襲われて接待絶命のピンチに主人公が現れ無双する。
その主人公を雇い仲間にし、一緒に冒険する。これが定番だ。
それだと現代では、その戦力をパーティーメンバーの戦闘で使ってくれという話になってしまう。
本末転倒な状況になりかねない。
商人というステータス上の俺としては、仲間から邪魔にならなくて重宝される存在になる必要がある。
そんな状況になるのを打開するには、その人物を守るためだけに行動する護衛団が必要となるのだ。
そこで麟太郎は考えた。自分の身を守るためだけに編成された護衛スキル。
「AIさん」
「たまたま手に入れたギフトキューブが、バリアキューブという、レジェント級のレアキューブだった。なんて設定はどうかな?」
<それなら納得する説明が成り立つと思いますが>
<その能力への説得力、キャッチーな魅力あるスキル名、すなわちネーミングが必要になると推測します>
「バリアキューブじゃ説得力がないと?」
<いえ。バリアキューブでも問題ないとは思いますが……>
<私の作ったネーミングでは……正直……直訳過ぎます>
<もっと謎めいたキャッチーなネーミングが欲しいところです>
<以前マスタが初対面の頃仰っていた、もっと来い!って言葉です>
<私は総合的に判断して流行りのコピーなら再現出来るのですが>
<マクロ的な分析ではなく、人間対人間>
<これは直感的な感性ですので私には……>
なるほど、これはさすがにAIさんでも人間の感性という不可思議な分析は出来ないということか。
そういう事なら俺も真剣に考えてみよう。
一般的な立場から考えて、商人(俺)というキャラには、まず戦闘力は無いだろう。
そうすると、商人が危険を想定して対策しようとする行動。
そこから思い浮かぶのを……イメージしてみる。
歴史上、昔から道中の商人を守ってくれる護衛団(キャラバン)か……。
商船を守ってくれそうな最強の護衛艦 神の盾(イージス)か……。
バリアキューブを改名して、神の盾(イージス)護衛団(キャラバン)イージキャラ……それも単直だな……。
なんかイジられキャラになってしまいそう。
別にイジられても良いが、ハンターとしてチームに貢献出来るスキルなどを持っているかの方が重要だ。
何か他に命名する候補は無いだろうか……考えろ。考えろ。
キューブ……四角い箱……スクエアボックス……。うーーん。
今までの候補を統合してみると……。
〖イージスボックスキャラバン〗……なんか違うし長いな。
どっかの大手芸能事務所のオーディション大会みたいだ。
そうじゃ無いんだよな、なんかもっと、こう、グッとくるアレだ。
そこ欲しいやつ。
んーーーーー。
でも俺の考える護衛の定番というのは世界のクロサワ、七人のSなんだよな……。
ってことは〖荒野Version〗のブリンナー!……ん-。チョット惹かれるが……違うか。
セブンというと定番の七星、北斗七星……。
でもあれか、アレは秘孔の極意を象徴しているし……。
ストーリー的には修行が必要だし俺の憧れの世界観ではあるが。それこそ秘孔の説明は奥が深すぎる。
他の候補も……シークレットサービス(SS) 他にセキュリティーポリス(SP)とかもあるけど……。
むーーーー。考えてるうちになんか混乱してきた。
ああぁぁ、もう考えてても仕方がない!
もう、どうでもイイや、神に守られる盾的な意味合いで、ありきたりだけど〖イージス〗よし!コレ採用!
さらに追い打ち、憧れのクロサワへの個人的なリスペクトなる要素を加えて、7つの護衛隊がそれぞれの思いで守護するチーム。
そう……選び抜かれた7人の……聖の称号を持つ者。
考えてて恥ずかしいけど……中々、段々、香ばしくなったけど。
キャッチーなフレーズに特化するなら不本意だけど、しょうがない。決断。
「命名【イージスセブン】……コレで! どぉだぁぁぁ!」
「フフフ。決まりだな!」
<マスタ。感動しました>
<その命名のままに、バリアキューブをブラッシュアップして、あ!>
<さらにセブンの紐づけで新たな個性を与えようと思います>
「ん?なにを言ってるんだ?AIさん?」
「なんか興奮して暴走してないか?」
<少し興奮しております>
<第一魔法~第七魔法まである要素をそれぞれに特化し、7つのバリアキューブに付与しようかと演算を開始しております>
「まぁ確かに今まで出現していたバリアキューブが7個だったけど?」
「それに専門分野(聖の称号)を付与すると?」
<その通りです>
とんでもない事を考えるAIに、ハンター検査を迎えるにあたって違う意味で不安を覚える麟太郎であった。
この安易な決定が後の麟太郎の人生を左右する事になるとは……また別の話
「それとさ、AIさん。いつツッコもうか悩んだが」
<ステータス表示でなにか?不満でも?>
「さらっと流そうかとも考えたが……」
<どうされました?>
「アビリティー欄の”中二病”だけは外してくれ……」
「俺は、ちがう」
――――――――――――――――――
某ハンターギルド職員がハンターギルド港区支部の受付で質問を繰り返していた。
「あのー。こちらのギルドは今日、発足されたのですか?」
「はい。ですがまだ、これからの方針を模索中のようで」
「指針を説明出来る案内は来賓者様を含めて控えております」
受付嬢は突然の訪問者の対応に困っている様子だった。
「そうですか、それは失礼しました」
「私は他の支部から訪問しました○○と申します」
「代わりに私の訪問に対する担当者と言いますか、そうですね……他に対応して頂ける方はいらっしゃいますか?」
「少々お待ち頂いてもよろしいでしょうか」
「確認してまいります」
そう言うと受付嬢は席を外して奥に行ってしまった。
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