第18話 日比谷ダンジョン①
ダンジョンの中に潜入した麟太郎だったがあのクズが目障りのためAIに相談した。
(AIさん、あいつが居るとまともに会話出来ないのだがどうすればいい?)
<対策としてはペンダントを通じて仲間同士で念話的なシステムを使用して会話するのはいかがでしょうか>
(念話?テレパシー会話みたいなもん?)
<そうです>
(おk。グループチャットみたいだな早速頼むよ)
<かしこまりました>
<脳内スカイプアプリケーションexe.展開>
{インストール中:……}
{レジストリ構築中:……}
{設定ファイルに書き込み中:……}
{ショートカットを作成中:……}
{………………}
{インストール完了しました}
<これより脳内スカイプを開始します>
――――スカイプアプリケーション――――
[あーあーあ。聞こえますか]
[え!?なんか頭の中から主任の声が]
[おわ!なんか聞こえてきたぞ]
[お二人とも聞こえてるみたいですね]
[この会話は3人だけで行えるグループチャットみたいなものです]
[じゃぁ、あいつとギルド職員さんには聞こえてないってことか?]
[実はですね、相須さんも俺たちの仲間なので聞こえてます]
[ん?何を言ってるんだ麟太郎?]
[主任?]
[実は、あの相須さんは俺の能力で作り出した相棒?っていうか……]
[改めて自己紹介します私は麟太郎様から作られた左腕の分身体です]
[ええええぇ@@]
[ちょっと頭の整理が追い付かないです]
[まぁオイオイ説明はするけど今はダンジョン攻略と浅田にバレないことだけに集中してもらいたいのですが]
[わ、わかった。麟太郎には驚かないつもりでいたけど今はアレだな]
[はい。主任のためなら。それと……出来れば個人的なぐるーpきゃ♡]
「今の状況を説明すると2人には透明のトンボ型の防御を主体としたアーティファクトが身辺を守っています」
[なので敵からの攻撃はほとんど防げると思ってもらっていいです]
[しかも迎撃もしてくれますので安心です]
[そこで・なんですが、その能力が浅田にバレないように演技をしてもらいたいのです]
[演技とは?]
[回避行動と攻撃行動です]
[なるほど、トンボが行動していることを見破れないようにするのだな]
[そうです。戦ってるフリをしてもらえると助かります]
[わかったやってみる]
[私も頑張ります!]
[ありがとうございます]
[全体的な戦闘は俺の能力の代わりに相須さんがやってくれるのでなんら心配はありません]
[では相須さんから意見はありますか?]
[麟太郎様は戦闘に参加しないほうが良いと思われます]
[それをお二人が麟太郎様をカバーする形の演技が効果的だと推奨します]
[あの部外者の方に無能と認知されることのほうがこのダンジョンを攻略するより重要だと演算結果が出ました]
[少しでも違和感を与えると今後、リサーチされる可能性が高いと思われます]
[だよな……アイツ蛇のようにリサーチ能力高いもんな……もっと他の生かし方もあると思うんだけど]
[麟太郎、おれに任しておけ!演技はまぁまぁ得意だ]
[さっき思いっきり棒読みでしたよ……]
[私も思いました。あれは小学生の文化祭レベルでしたね]
[ちがうんだよ!もっと、そう、リアリティがあれば俺の情熱的な演技が……]
[ま、まぁ……先輩。善処してください……]
[わ、わかった。頑張るよ]
[ってことで、このチャットで会話をしながらダンジョンを攻略して行きましょう]
[そうだな。早く攻略しないと街のみんなが犠牲になる]
[ですね。伊庭主任と一緒に共同作業します]
[ところで先輩。なんで野球バットなんか持ってるんですか?]
[ん?これはあれだよ。秘密の共有したじゃねえか]
[公の場であんな盾とかランチャーぶっ放す訳にはいかないからよ]
[でも身の安全が第一なので危ないと思ったら使ってくださいね]
[わかった]
――――――――――――――――――――
ダンジョンの様相は木々と植物の生い茂った傾斜のキツイ山林だった。
例えるなら、箱根あたりの道中で見かけるような霧の深い谷底に露出した岩肌と、緑色の木々が生い茂る、自然の摂理を象徴する風景だろうか。
清らかな音と共に渓流が流れる河川敷に古木が倒れている。
そんな古木にも情緒あふれる風情を醸し出す緑のオーラを示すように苔の衣が優しく包んでいる。
「それでは皆さんギルド職員である私が先頭を務めますので後を附いてきてください」
「それと、伊庭さんと宮本さんは非戦闘員なので隊列の真ん中に居てください」
「では順番を決めます。まず私が先頭で一番」
「二番目に浅田さん」
「三番に伊庭さん」
「四番に宮本さん」
「最後尾に中村さん」
「中村さんが最後尾なのは重騎士である中村さんが後ろに居ることで後方からの攻撃に対処してもらう為です」
「了解した!後ろを守っていれば良いのだな」
「お願いします」
「おいおい。俺が二番目なのは理解するが伊庭の前か?」
浅田としては麟太郎の前で盾になることが納得いかず宮本優美の側で活躍したかったのだ。
だが美人のギルド職員に実力を認められ、もしかしたら彼女とワンチャンあるかも等、勝手に妄想し火力として二番手に指名されたことへの優越感を感じている様子だったのだが、それでも、どうしても麟太郎の盾となる配置が気に食わなかったようだ。
「浅田様には是非とも私の後ろで精霊系の魔法で援護してもらいたいのですが……だめですか( ;∀;)ウル……」
浅田は宮本優美にアプローチしながらも、今日突然現れた絶世の美女に援護を頼まれ、その”ウルウル”した吸い込まれるような瞳にアッサリ撃沈した。
「お、おぅ。そうまで言われたら仕方ないか。相須さんの為に攻撃には参加するが……」
「……だが、後ろのお前!俺の邪魔すんなよ!」
〖ピピピ・ピピ〗
「んな事言ってて良いのか?敵がもうそこまで来てるぞ」
「20体だ」
「っく、わかってるよ」
(左目のマップ検索で確認した結果ワイルドウルフ8体グレートボア4体シャドウバット8体だAIさんどうする?)
<仲間で情報を共有しましょう>
<とりあえず浅田さんに前方のワイルドウルフ3体を相手してもらいます>
<左右から迂回してくるグレートボアなどを中村さんに処理してもらい隊列後方の残りを私が処理します>
――――スカイプ――――
[先輩]
[僕を中心に左右から来る敵を戦うフリをして撃破してください]
[了解]
[優美ちゃんは僕の側に居てね。離れないように]
[はい♡守られます♡]
――――――――――――――
迫ってく敵が20m圏内に入って来る。浅田は神のギフトを発動し木の精霊を呼び出し謎の光が周辺を包み込んだ。
その瞬間、光に干渉した周りの木々が生き物のように動き出し、枝が
〖バキバキバキ〗
〖シュイーン〗
〖バシッ〗
〖シュルシュル〗
まるで意志を持ったかのように動き出した樹木に縛り上げられる者。蔓の先端に刺されれる者。枝が強振する鞭のしなりで叩き出される者。三者三様であった。
「フフフ。どうだ伊庭。おまえにこんな攻撃出来るか?」
「……よそ見してていいのか?」
「なに!?」
突然浅田の足元の影からシャドウバットが出現し瞬速でソニックウェイブを放ってきた。
避けようにもこんな至近距離に出現してきて発動された魔法に対処出来るはずもない。
思わず腰が抜けへたり込んでしまったが、AIトンボの防御スキルが自動的に発動し、吸収されてしまった。
「へ?」
「た……たすかった?」
その時、同時に麟太郎たちの周辺にもグレートボアが左右から攻撃してきていた。
「お。来たぜ、麟太郎!魔物が横から回り込んできたぞ!」
「先輩の男優魂にお任せします」
「よし!おらぁぁぁああ来いやぁあ!」
〖ドカァアーン〗
「ウウウをぉぉおりゃー」
N先輩は会社の野球部倉庫から持ち出してきた金属バットを振り回しトンボが繰り出す攻撃にあわせて演技中
(なんか相手に攻撃が当たってからバットを振ってるような……)
一方左側は安定の演技だった。
「キャーー!こっちこないで!!」
宮本優美はトンボの防御スキルを利用して右手を掌底のように突き出しバリアで跳ね返すヒロイン的な演技をしながら攻撃を防いでいた。
「宮本ー。今ぁーそっちー行くぞぉー」(棒読み)
右敵の処理が終わった先輩は左側に回り込んで防御中の宮本優美に代わり攻撃開始。
トンボの攻撃〖ドッカーン〗
一呼吸遅れて。
「おりゃぁぁあ」
「やーああーああ」(棒読み)
やっぱりワンテンポ遅れている残念な大根役者に目を配っていた相須莱夢が、ため息をつきながら冷たい視線を送る。
そして奥に居る他の魔物に対して攻撃準備を進める。
麟太郎は内心焦っていた。
トンボが守っているとはいえ相手の数が多すぎるし、自分が参戦出来れば普通に余裕なのだ。
しかし、アイツも居るし、どうしたもんかと気をもんでいたのだが……。
相須莱夢がこちらを向き安心してくれと言わんばかりに目線でサインを送って来た。
彼女は敵に振り向き替えると複数対応型の戦闘モードに移行し、右手を振り払うような動作を始めた。
多数の魔法陣が出現しそれぞれの魔物の体に張り付いた瞬間、彼女の右手がゆっくりと旋回しながら捻じるように握りしめられる。
「捉えたすべての物質を押しつぶせ!」
「重力魔法」
〖gravity press ,now!〗《グラビティ プレス》
〖キュィーン〗――――……
〖グシャッ!〗
……味方全員……唖然となった。すべての魔物が即死である。
まるでスクラップ工場で車がキューブ状に押し固められ圧縮されたかのようにな物質になりさがり地面に転がっている。
浅田を襲ったシャドウバットも四角い物体になって目の前に落ち果てていた。
そして無慈悲に即死した魔物たちはモザイクの光を散りばめながら消えていく。
そんな最中、麟太郎も早速仕事を開始した。ドロップしたギフトキューブ集めである。そして回収しながら笑みを浮かべAIに念話を送った。
(AIさん。凄かったな(笑)あのアイディア覚えてくれてたんだ!)
<はいマスタ。インビシブル浮遊魔法の実験が終わった後のマスタのアイディアでしたね>
(うん。あの時、浮遊魔法が重力操作だって聞いたから、軽くする重力があるなら逆もアリだと言ったんだよね)
<はい。マスタがバリアキューブをヒントに敵を重力で圧縮できるキューブみたいな事出来ないかと>
(そうだった。その理論でデータファイルみたいに圧縮する技術を応用して構築してみますとかAIさんが言ってからさ、その後時間が経っていたから忘れていたよ)
<使用するタイミングをお待ちしておりました>
(ナイスタイミングだ)
<ありがとうございます>
(ちなみに今、思いついたんだけど圧縮ファイルにして保存出来ないかな?)
<生きたままですか?>
(うん。そのうち魔物も有効活用出来ないかな?と思っただけだけど……)
<かしこまりました。今後の課題として演算に入ろうと思います>
(頼む!)
浅田清志は青ざめた顔して相須来夢を見つめていた。
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