第12話 救出作戦②
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〖個体名〗:中村猛(なかむらたける)
〖属性〗:人間
〖種類職業〗:重騎士(ガードナイト)
〖Level〗:15
〖経験値〗:16043
[next]:3821
〖HP〗:1950
〖MP〗:50
〖攻撃力〗:352
〖防御力〗:750
〖魔力〗:30
〖アビリティー〗:”鋼のメンタルⅡ” ”遠吠えⅠ”
〖スキル〗:《盾の報酬Ⅱ》
〖魔法〗:《カウントヒールⅠ》
〖Cube Setting〗
slot.1:A【鋼のメンタルⅡ】 S【盾の報酬Ⅱ】 M【カウントヒールⅠ】A【遠吠えⅠ】
slot.2:
slot.3:
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「あうあう!」
「凄いっすね先輩!ステータスが……ガン伸びですよ!」
「まじか。俺って凄かったのね……」
「まじで凄いっす!」
「この調子で救出に成功したら、丸の内OLと合コンですね!」
「帰ったら速攻で店探して予約すんぞ!」
「おお♪是非サポートさせて下さい!」
「俺のステータスを見て女性陣はキュン死してまうわ!」
「いや、あの、ステは関係ないかと……」
(危険を冒してまで部下の救出を行った先輩の男気を披露したかったんだが)
「わは♪勝った!俺勝ったよ!」
「やっと俺の時代がキタか!わはは」
フラグが立った71連敗の記録を打ち立てたN先輩の勇姿を観るのは見慣れているが、たぶん今回もダメだな。
先輩……そうじゃないんですよ、それじゃないんですよ、煽った俺にも責任あるかな?
とりあえず浮かれていた気分を律し、捜索に専念する2人であったが、そこに現れたのが因縁の魔獣であった。
<浮かれて戯れてるところ申し訳ないのですが>
<ビックベアが現れました>
(浮かれてねぇし!戯れてねえし、浮かれてんのパイセンだし)
<そうでしたか。一緒に見えました>
(そうですか、あなたはいつも冷静でいらっしゃって頼りになりますわ)
<!前方200mに接近>
「先輩!この先にチョット厄介な魔物が居ます」
「お?」
「ここは自分が対処しますので後ろに下がっていて下さい」
「お、おぅ、わかった」
《Grid break》は温存したいので、新しい技で対処してみますかね。
「モーションエフェクト展開」
「《Mist World》ミストワールド」
麟太郎は左腕を変形させて霧を噴霧した。水魔法の応用で発生させた霧を風魔法で操り対流させて半径30mくらいの雲の中に居るような世界を発現させた。
その霧がビックベアを中心に徐々に狭まっていく中、雲の中で発生する氷の粒がぶつかり合い帯電している環境のようにモーションエフェクトを作り上げていく。
ビックベアが赤く光る眼を揺らしながら迫ってくるがすでにターゲティングシステムによりロックオンされているため
素早く動くビックベアだが圧縮されていく
ME《サンダーパラライズ》
「雷(いかづち)の檻!」
『バリバリバリ』
霧の囲いの中で、雷に匹敵する電流が轟音とともに一気に霧の内部に放出される。ビックベアはなすすべもなく気絶した。
普通の人間なら落雷に当たって即死レベルの電圧だろう。
昨日、徹夜で考えて魔法属性を組み合わせ完成した新しいモーションエフェクトである。
そして、麟太郎の左腕が再び輝き始め、銀色の水を放出するように地面を伝わりながらビックベアの居るところまで流れ込み、水銀の沼を作り出した。
沼の中心で浮かんでいたビックベアが溺れるように沈み込んでゆく。銀色の水面に波紋だけを残し……。
『トプン……』
モーションエフェクト《水銀の沼》”シンキングマーキュリー”で吸収完了。
「先輩!先を急ぎましょうか」
「…………おぅ……」
目的地の山肌に直線的に歩いて行くと不思議な違和感があった。
途中、変な壁のような土が盛られていたり、お堀のような池なのか沼なのか人工的なトラップの跡がある。
「おい。麟太郎」
「これじゃ真っすぐ進めないぞ」
「これが迷宮なのでしょうかね」
「異世界が作り出す風景なのでしょう……」
『ピピピピp』
「おっと!また敵が寄って来ますよ」
麟太郎の左目のモニターが赤い点を複数捉えた。
しつこいくらいに湧いてくるワイルドウルフだったが、先輩のレベルアップと経験に丁度よい。
「先輩!いけますか?」
「任しとけ!わんちゃんなら余裕だ!」
「来い!ワンワン!わおぉぉぉお!」
なぜか先輩が”遠吠え”を発した。
先ほど倒したギフトキューブのカプセルキューブにワイルドウルフのアビリティ”遠吠え”を獲得しスロットに追加したようだ。
その効果でN先輩に集まってくる集団に向けて盾のモーションエフェクトを発動する。
「バインド!」
『シュルシュルシュル』
『クルッ!シュパン』
一斉に放たれた光のロープが敵に巻き付き、一瞬のうちに引き寄せる。
待ってましたとばかりに、ランチャー砲の餌食になり弾き飛ばされる。
なんかもうワイルドウルフが不憫に思えてくるくらい、実力差が出てしまった。
「さあ。先を急ぐぞ!」
「はい。急ぎましょう!」
――――――――――――――――
(この辺りのはずなんだけど)
麟太郎たちはサーチ反応のあった場所まで来ていたが、崖の岩肌の正面で立ち止まってしまった。
<この岩肌の中に反応があります>
壁の中に居るってことはどうやって中に入ったのか見当もつかない。
どこか他の場所に入口があるのだろうか?
「おい、麟太郎」
「ここで間違いないのか?」
「はい。この壁の中から反応があるんですよ」
「うーん。。。。」
「ちょいと周りに入口がないか見てきます」
N先輩は1人で壁に向かいながら何か考えている様子だった。
麟太郎が歩き出した時、ふと先輩の独り言が聞こえてきた。
「はは、まさかな。魔法で壁を作ったりして(笑)」
(!!!)
(そうか!もし宮本がステータスギフトを貰ってたらその可能性もあるな先輩ナイス)
(AIさん!この壁の解析頼めるか)
<承知しました>
「先輩。まさかが本当にあるかもしれませんよ」
「宮本のステータスか!」
「ええ」
<解析結果>
<この壁は土魔法の《ウォールⅠ》で作られてます>
(やっぱりそうか)
(無理やり壊すと中の人にも被害が出そうだな)
<魔法に干渉し解除出来ますが行いますか>
(マジか出来るのか!)
<魔法という概念に対しての解析は終了しましたので>
<複合でもない一属性の魔法ならさほど問題ありません>
(うん。じゃ頼む)
「ちょっと離れていて下さい。壁を解除します」
「解除?」
「ME《マジックキャンセラー》展開」
左腕を壁に据えると腕が光りだした。そして銀色に輝き手のひらに光の粒が集まりだし、壁に広がり始めた。
すると壁の半径1mほどの範囲が光りだし、モザイクのようなエフェクトと共に消えていった。
目の前には丸い横穴が開いており、中から人の声が聞こえてくる。
『きゃ!』
『もうダメか』
『俺が姉ちゃんを守るよ』
『ユータはさがってなさい』
なにやら魔物と勘違いしているみたいだが、無事で何よりだ。……と思っていたらいきなり光の矢が襲ってきた。
「うわっ」
『キュイン』
「危っぶねぇな」
攻撃してきた光の矢はバリアキューブによって吸収され、大事には至らなかったがどうやら洞穴の中から飛んできたようだ。
「おーーい!誰かいるかーー!」
『シーーーン……。』
静けさが漂う。N先輩が声をかけたが返事がない。
「もしかして宮本かー?中に居るのかー?」
「おれだー。会社の中村だー。」
洞穴の中で混乱していた家族は外から聞こえてきた救助の声に驚いて歓喜した。
『中村係長!ですか!』
「そうだ!中村だ!もう安心していいぞー」
家族たちは勢いよく飛び出してきた。安堵に満ちた表情を浮かべ宮本優美は薄っすらと涙を浮かべている。
中に居たのは宮本優美の家族。両親と弟の少年の4人家族であった。
麟太郎も安堵し、声をかけてみようと手を振りながら、
「優美ちゃん無事でよかったね!」
「伊庭主任!!!!」
『タタタタ』
麟太郎を見た優美は突然走り出し、彼の胸に飛び込んで抱き着いてきた。
『ギュー』
(ぁ!ちょっ!。。。まって!)
「主任も来てくれたんですか!有難うございます♪」
「あ、ぁぁ。と、とにかく無事でよかったな」
突然の抱擁に困惑しながら、体を後ろにピンッとのけ反らせつつ労った。
N先輩が自分を指さし、俺も居るんだアピールをするが気が付いてない様子で気の毒である。
「おい!そこの・おっさん!」
「姉ちゃんから離れろ!このやろっ!」
小学生くらいの少年が、何かのスキルなのだろうか、弓の形をした武器から矢を放とうとしていた矢先。
「ユータいい加減にしなさい!」
『バシッ』
宮本の弟らしい少年が麟太郎に食って掛かり母親に頭を引っ張叩かれている。
どうやら、この少年は姉ちゃん大好きシスコン君らしい。
「息子が失礼な事を言い、すいませんでした」
「いえいえ。気にしてませんよ」
「姉思いの良いクソガキいや、御子息じゃないですか」
「娘の父親の将司です。この度は誠にありがとうございました」
「お怪我もなさそうで良かったですね」
「それより疲れたでしょう。いま救援物資を出しますね」
そう言うと真横の空間に半透明の箱らしき物を出現させて箱の中から暖かい飲み物と食事を取り出した。
「あ、そうだ先輩!」
「回復系の魔法持ってましたよね」
「うむ。」
「皆さんに掛けてもらって良いですか?」
「わ、わかった」
準備している間、先輩に頼んで
「よし。皆、麟太郎が準備している間、こっちに集まってください」
「今から回復魔法を掛けます」
「ふーー。よーし。1人づつ行くぞー」
「初めてだから緊張するな。《カウントヒール》!!」
『シュワー』
カウントヒールの掛け声と共に青色のオーラが発生しそれぞれに回復魔法を掛けていく。
すると一秒カウントするごとに少しずつ体力が回復して行くのが実感でき、顔色も段々良くなって来たようだ。
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