第10話 AIの正体と新機能

 <何者とは?>

 「最初出会った時に言ってた言葉が気になってね」

 「共に行動したいって言葉」

 「たしかに時期をみて話すって言ってたけど」

 「なんかモヤモヤするものがあってさ」

 「今話せる事だけでも聞きたいなって」

 麟太郎の疑問とは、この一連の事件が続く中、AIの現れたタイミングとあの高度な科学技術は理解できないものであった。

 タイミングは偶然があるにしても、科学技術は間違いなく現代のそれではないと思うのは明らかにわかる。


 <……かしこまりました>


 <私は遠い未来から現代に戻って来たAIです>

 <ある目的のため、墜落した隕石の中に搭乗していました>

 <そして私を製造した方はあなたの父親である十四郎さまです>

 <世界線という概念があるため今話せるのはこれくらいですが……>

 <共に行動することで解明できると思っています>


 (なるほど、そういう事か!親父の仕事は機密がなんちゃらで教えてもらったことなかったな)

(しかもAIが詳細を話せない理由も何となく解った。話すことで未来の何かが変化して、目的が変わってしまう可能性があるということだな)

(だから話すよりこれから起こる未来線を一緒にたどる事で、すべての謎が判明するということか)


 「うんわかった」

 「何となくだけど理解したよ」

 「話は変わるけど俺の左目が変なんだよね」


 <マスタの左目はメタルスライム細胞で形成されてます>

 <今私が演算中のプログラムシステムに同期した最初の反応です>

 <戦闘中以外は大丈夫です。元に戻ります>

 「そっか安心したよ」

 <そして私がOFFの時のシステムも完成しましたのでこれからインストールを始めます>

 「おお完成したか」

 <スリープモードシステムおよび量子のゆらぎシステムおよびステータス同期システム>

 <展開します>

 {インストール中:……}

 {レジストリ構築中:……}

 {設定ファイルに書き込み中:……}

 {ショートカットを作成中:……}

 {………………}

 {インストール完了しました} 


 <各種アプリ起動>

 『ヴィン』


 麟太郎の左目が一瞬光り、モニター画像が目の中に現れた。

 それはMMORPGなどのゲーム画面とそっくりでスキルアイコンなども表示されている。

 

 「ゲームのインターフェースみたいな世界だな」

 <そうですねゲーム画面のUIを参考にさせて私が見ている視点をマスタとリンクさせて頂きました>

 

 <右上にONとOFFのアイコンが表示されてます>

 「うん見える」

 <今はONのアイコンが光ってますがOFFの時はスリープモード中という事です>

 「おk確認した」

 

 <そして画面下に並んでるアイコンは開発したスキルや魔法などが瞬時に使用できるシステムになっています>

 「なるほど、いちいちAIさんにお願いしなくても自分の意志で使える訳か」

 <その通りです>

 

 <ちなみに《インビジブル》”透明化”だけはカギが掛かっているので戦闘モード以外は申請が必要です>

 「くっ。」(まぁしょうがないか)

 

 <そして画面左隅に表示されているのが分裂と吸収分析システム&ペット機能です>

 <第一魔法である素粒子変換”量子のゆらぎ”を応用した科学的な理論があるのですがいつかタイミングをみて説明しますが>

 <私の能力であるメタルスライムの分裂と吸収分析を付与したうえで分裂した物にAI機能を搭載して同期します>

 <使い方はマスタの考え方次第です>

 

 「例えば、ペットの犬に変化させて散歩とかできるの?」

 <可能です>

 

 「じゃあ散歩中にミニスカートのお姉さんがしゃがみながらカワイイとか言ってなでなでしてるのをペット目線で見ることも可能ってこと?」

 <可能ですが、マスタやっぱり”変態”のアビリティーもってますか?>

 「ないない(笑)そんなこと可能でもスルわけないじゃん(笑)カギ枠にしないでね」

 <今後の行動次第です>

 「はい。」


 <そして最後になりますがステータス画面との同期です>

 

 <分析の結果、異世界で使用されている魔法という能力と同期することに成功しました>

 <これにより異世界の敵が所有する特殊攻撃やスキルなどのあらゆる能力をコピー&使用することが出来ます>

 「それはすごいな」

 

 <欠点としてはその攻撃を受けたり本体ごとスライムで吸収しなくては分析が行えないことです>

 「まあそうなるよね」

 「でも希望が見えてきた」

 

 (ということは俺とAIさんがON状態の時で別々に戦うことも出来るってことだよな)

 (それと、救出の為にもう1つアレが必要だよな……)

 「俺なりにちょっとしたアイディアも浮かんだ。お願いできるかな?」

 <承知しました>


 ――――――――――――――――――――――――――――

 翌朝9:00


 麟太郎は会社の浜崎課長宛てに電話連絡をして秩父の営業所を訪ねて営業活動をすることを報告し許可を求める。

 課長も宮本優美の捜索であろうと忖度し、即座に承認した。

 

 浜崎課長の承認を受けて現地に行く準備を整えていた時、突然電話が……N先輩からだった。


 「はい。伊庭です」

 「おい麟太郎!俺も行くぞ」

 「は?なにを言ってるんですか?」

 「お前あれだろ?行くんだよな迷宮に」


 あの人のガッツにはいつも驚かされる


 「はぁ。わかりましたよ。でも課長の許可は大丈夫なんですか?」

 「今許可もらったよ!そこ動くな!速攻で追いつくからな!」

 「まだ出発してませんよ。現地集合で良いですか?」

 『ツーツーツー』

 「電話切れてるし……」


 麟太郎はAIにN先輩の事情と今までの付き合いを話し、同行させる説得をしながら現地に向かうのであった。


 現地でのすれ違いの末、やっと合流した2人であったが、N先輩のその姿に絶句する。

 「先輩……それで良いんですか?」

 「なにが?」

 「その恰好ですよ!」


 先輩が用意したその姿はまさにそのまま、野球のキャッチャー防具一式だった。

 「まぁ、緊急だったのでしょうがないですが」

 「よく検問で引っかからなかったですよね」

 「なんか警官にビクってされて不思議と通された……」

 「キャッチャーマスクかぶって運転して、よくもまぁ、警官になにがあった?」

 「ま、まぁ良いでしょ。」

 「でもこの先 ホントニ 行くんですか先輩」


 「当たり前じゃないかよ!俺の大事な部下なんだ!」

 「助けに行くの当たり前だ!このやろ!」


 このN先輩は合コンの鬼ではあるけど社内の女性には一切、手を付けた事ないんだよな

 本人なりの聖域なのかな?純粋に部下思いの良い人だ。

 その反動なのかな、外ではガッツき過ぎてアレだけど・・・

 麟太郎はN先輩の姿をイジリながらも彼の熱い思いに心を打たれていた。


 「麟太郎!キャンプ地はアッチだけどどうする?」

 「とりあえず行ってみますか」


 キャンプ場に行ってみたが平日ということもあって利用者も少ない。

 何人かに話を聞くことが出来たが先輩の装備にビクっとして怪しい人達と思われている様子。

 その中の大学生風のキャンパー達からの情報だと、日曜日の昼くらいに4人家族がバーベキューをしていた記憶があるという事だけが分かった。

 それ以降の目撃者は居ない。捜索が行き詰ってしまい、前を歩いていた先輩に声をかけた。

 「先輩。他を当たりましょうか」

 「うむ。そうだな。ん?」

 「たしか宮本の家族には小さな弟が居たはずだ」

 「この辺に子供向けの観光施設なんてないかな?」

 「なるほど!さすが先輩」


 (確かにその可能性もあるが、消息不明ってことはゴルフ場の事件を考えると何かの事件に巻き込まれたことも否定できない)

 (その施設の近くに迷宮があったとか?)

 (AIさん迷宮の検索頼む)

 <検索結果>

 <ここから直線距離で3km先の小動物公園という場所に反応があります>

(なるほど、キャンプ場からゴルフ場をまたいで小動物園か)

(ビッグベアーの出現したエリアだな)

(彼女は何かのイベントでそっちに向かった可能性はあるな)


 「先輩!説明は後です。小動物公園に行きますよ!」

 「お、おぅ分かった」

 すぐにでも現地の迷宮に移動したかった麟太郎は、周りに人が居ないことを確認し、N先輩をお姫様抱っこで抱き上げ秘密であった能力を解放した。

 「先輩ビックリするかもしれないけど動かないでくださいね」

 「え?」


 N先輩を抱きかかえ、《空中浮遊》を発動し、直線的に現地に空飛ぶ、おっさん2人。

 「ファ!!」

 「んぎゃぁぁ~ぁああ!」

 「暴れると堕ちますよ」


 体格の良いN先輩が暴れている状況に面倒くさくなった麟太郎は首に手刀をかます。

 気絶したパイセンを運び終えて、目的地である空間のゆらぎの前に立つ。


 「ここか……」

 気絶したパイセンを無理やり起こし迷宮に入る準備を整える作業に移った。

 「先輩、起きましたか?」

 「ん?ここは?」

 「なんか目の前の空間がユラユラしてないか?」

 「迷宮の入口です」

 「人命優先なので説明は省きますが、まずこれを装備してください」

 左腕からバスケットボール大とソフトボール位の大きさの銀色のスライムを二つ分離させN先輩に渡した。

 「なんだ?これは?」

 「お前のギフトキューブの能力か?」

 「説明は後で」

 

 「今からトランスフォームします」


 その瞬間、銀色の光と共に変化した物体は片方は大きな盾、もう片方はドライヤーのような形をしたランチャーに似た武器だった。


 「あsdfghjkl;」

 「先輩の言いたいことは分かってます」

 「ですが今は宮本さん救出一択ですよね」

 「そ、そうだな」

 「飛び込みますよ!」 

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