第7話 バリアキューブ完成と緊急ニュース

 ――――――――――――――――――――――


 夢を叶え、自宅に戻ってAIと談笑中、もう1つのモーションエフェクトが完成したようだ。


 <マスタ>

 「ん?」

 <防御用のバリアが完成しました>

 「おお。どんな感じ?」


 <バリアキューブというアプリです>

 「ふむ。使い方は?」


 <これはインビジブルからの応用なのですが>

 <エネルギー集合体の四角い物体を透明化したものです>

 <展開しておけば自動で動き防御をしてくれます>


 「いいねぇ!ほっといても守ってくれる訳だ」

 「働き次第ではなんかカッコいい名前でも付けてあげようか」

 <お任せします>


 <それでは追加機能について説明してもよろしいでしょうか>

 「うんうん」


 <前回の戦闘において切り札である《Grid break》を発動すれば殆どの敵には勝てると思いますが>


 <エネルギーの消費量が大きいため連発出来ません>

 「そうだね……」


 <そこでこのバリアキューブに反射機能と吸収機能を付与しました>

 <まず反射機能ですが文字通り敵の攻撃を反射してダメージを与えます>

 「わかった!ターゲティングシステムと連動するのかな?」


 <さすがマスタです。その通りです。>

 「うむ」


 <そして吸収機能ですがこれは私の本体のメタルスライムの特徴である>

 <吸収、分析を利用した機能です>

 <受けた攻撃を吸収してエネルギーに変換できる能力です>


 「おおお!ってことはエネルギーを貯めて《Grid break》が打てるようになると!」

 <まさにその通りですが、相手の強さに比例するので>

 <エネルギー量が少ないと時間がかかります>

 「そうだよな」

 「でもあんた凄いわ!さすがAIさんだ!こんな能力持ったらなんでも出来てしまう」


 <ふ>

 「お!?今、照れた?」

 <いえ。>

 「うそ!絶対<ふっ>って言った!」

 <言ってません>



 そんな時、突然テレビから緊急速報が入った


 ***緊急ニュースをお伝えします***


 現在各地で謎の生物が現れ、所々で被害が出ている模様です。

 さらに、事件が発生している周辺の近くに地下坑道のようなまるで迷宮そのものと言っても過言ではない設備が突然現れたようです。

 現在、警視庁各所が対応に追われており、多数の死傷者や行方不明者が出ているため、規制線が張られており〇×▽■……


 「まじか!とうとう来たか!」

 「AIさんどうする?」


 <まずは現場確認ですね>

 <確認だけです。相手の情報が不足しているため慎重に行動をしないといけません>

 「うん。わかった」

 「まずはどこに向かうか……」

 <検索します>

 <ここから一番近い場所は直線距離で約1㎞の東都大学付属高校です>

 「そんな近くに!」

 「とりあえず行ってみよう」


 麟太郎は急いで外に飛び出した。現地向かって走っているとAIからの助言が……


 <マスタ>

 「ん?」

 <この前のモンスターの解析結果の報告が>

 「え?今かよ!」

 <アプリ開発を優先してましたので遅れました>

 「んで、あれはやっぱり異世界の?」

 <その通りでした>


 <何者かの誘導により異世界より迷宮を通じて移動してきたようです>

 <あのモンスターは”ビックベアー”という種類の魔獣です>

 「迷宮を通じて?」

 「うーむ。ゴルフ場の近くにも迷宮があったってことだな」

 <可能性は大です>

 「お!もうすぐ目の前だ!」


 周りに人気は無く、暗闇に佇む校舎が見えた。

 「よし!柵を超えるぞ」

 《トランスフォーム》

 『ギュイーン』

 左腕が一瞬銀色に輝き、鞭のようにしなりながら伸びていき柵にある柱のてっぺんに巻き付いた。


 ひきつけた勢いでジャンプし柵の向こう側に着地し、AIのナビによって反応のある方向に走り出し、体育館の近くで立ち止まり確認する。

 「ここだ」


 <体育館の入口に次元の歪が確認できます>

 「どうする?入ってみる?」

 <その前に準備をしましょう>

 <各種モーションエフェクトを発動>

 <アプリケーション>

 《バリアキューブ》

 《片目スカウター》

 <展開>

 <戦闘モードに移行しました>

 

 左腕から這い上がって来た銀の流体が首筋を伝って左目を覆っていき徐々にスカウターの形に形成されていく。


 そして、今回初めて使用するバリアキューブが発動した。

 それは半透明の15cm四方の四角いボックスのような浮遊体が数個が体周辺を衛星みたいに周回していた。


 「これがバリアキューブか」

 「360度全方位を防御出来るみたいだな」

 <その通りです>

 

 同時に麟太郎は左腕をMP5に変形させた

 「よし!行くぞ!」


 入口に向かって歩き出し目の前のゆがんだ空間に一歩踏み出した。

 中に入ったがそこは洞窟のような岩肌が露出している空間になっていて、まるで異世界に召喚された感じの異様な雰囲気のする場所だった。


 「なんだここは?」

 「なんかビックベアのときはアッチがこの世界に来たような場面だったけど」

 「今回は俺たちが異世界に行ったみたいな変な気分だな」

 <何かの干渉を受けて繋がっている可能性もあります>

 <!!!>

 <未確認生物を感知>

 「どっちだ」

 <この洞窟の50m先です>

 「わかった行こう」


 薄暗い洞窟の壁には水晶の原石みたいな石が所々に露出していて淡い光を放っている。


 天井から滴り落ちる水が洞窟内に反響して異様な雰囲気を醸し出していた。

 感知した付近に辿り着いた時、数体の影が現れ、こちらを認識したようだ。

 それは緑色の肌に錆びた武器をもった人間型の魔物。異世界定番の種族。


 <鑑定>

 <種族ゴブリンです>

 「まじで定番だな。数えると5匹か」

 「戦闘力とかわかるか?」

 <敵のステータスを表示します>

 『ヴィン』

 ■■■■■■■■■■■■■■■■

 〖個体名〗:ゴブリン

 〖属性〗:ヒト型 魔物

 〖種類職業〗:ゴブリン

 〖Level〗:Lv.5

 〖経験値〗:156

 [next]:50

 〖HP〗:80

 〖MP〗:8

 〖攻撃力〗:20

 〖防御力〗:12

 〖魔力〗:1

 〖アビリティー〗:”変態”

 〖スキル〗:《撲殺》《切り裂きⅠ》

 〖魔法〗:なし

 ■■■■■■■■■■■■■■■■


 (ん?アビリティー欄の”変態”って)


 「ステータスを観ても強いのか弱いのか分かんないな」

 <大丈夫ですこの程度ならマスタの練習台にもならないでしょう>

 「でもさ、見た目キモイしさ、違う意味で怖いな」


 <ではこのステータスを総合的にシミュレートした数値をスカウターに表示します>

 <対象ゴブリン 対戦効果30です>

 <ちなみに今のマスタの対戦効果は15万を超えています>

 「なんじゃその数値は」

 <相手のステータスとマスタの比較みたいなものです>

 <ゴブリンがマスタに勝てる確率は15万分の30ということです>

 <要は5000回対戦して一回負けるかの確立になります>

 <ですが5匹居ますので、まとめた数値です>

 <一匹あたり15万分の6となります>


 「ぶw単体だと2万5千回に一回負ける確率かw」


 緊張していた麟太郎であったがAIの分析を聞いて安心した様子。

 最初に出会ったビックベアが強敵だった為、なぜか空振りを食らった心境だった。


 「んじゃ鳩じゃなくてゴブリンで実験するか」

 <御武運を>

 「スカウター起動 ターゲティング」

 『ピ・ピピピピピ』

 「ロックオン」

 「撃て!!」

 『ダ・ダ・ダ・ダ・ダ』


 左腕のMP5から放たれた弾丸はたった5発。

 それぞれにロックオンされた銃弾は非情にもゴブリンの額に100%命中しモザイクの光を放ちながら消滅した。


 「ふう」

 <お見事ですマスタ>

 

 前回と同じく倒した周辺にはギフトキューブが5個落ちていた。


 <カプセルキューブですね回収します>

 「ガチャだワクワクするな♪なんか良いのあった?」

 <ステータスキューブ4個とアビリティーキューブ1個です>


 <ステータスキューブは全部HP+5です>

 <これはステータス画面から挿入するとキューブ画面に関係なく自動的に加算されるようです>


 「なるほど」

 「んじゃレベルや経験値に関係なく強くなれる訳だ」

 <その通りです>

 「んで?アビリティーキューブってやつは?」


 <……>


 「おい」

 <アビリティーキューブの中身は”変態”というものでした>

 「!!!」


 <効果を確認したところ、どうやらゴブリンの習性がそのままアビリティーになったもののようです>

 「意味がわからん」


 <ゴブリンはヒト型の女性を見ると”ムラムラと発動する特殊な縄で拘束”して巣に持ち帰り子作りの器とするようです>

 「なんと!」


 「そんな縛りプレイみたいな能力あるんか?」

 <アビリティーとは修練の末、獲得できるスキルと違い持って生まれた能力と言われてます>

 <この世界の仕様では生まれつきか又は職業にジョブチェンジしたときに現れるようです>


 「それを習得出来ると?」

 <はい。ですがマスタには無用なアビリティーだと思いましたので”勝手”に消去しました>


 「お、おぅ。それはご丁寧に」

 <確認ですが、すでに変態の種をお持ちなのでは?>

 「ないわ!そんなもん!」

 「だいたい、他人にステータスを知られるたびに”変態”って書かれていたらドン引きするやろ!」

 「アホかまったく。」

 

 そんなやり取りをしている時に洞窟の奥のほうから叫び声とも言える女性の悲鳴が……


 〈きゃぁぁぁぁ!!!ヘンタイ!!!変態変態変態〉

 〈変なとこ触んないでよ!この変態野郎!!イヤ。離してよ!だれかぁ!助けてください!〉


 「!!!」

 「なんか心にグサッ!と突き刺さる声が聞こえるがアッチか」

 <ゴブリンに襲われているようです>

 「AIさん行くぞ」

 ……………………………… 

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