第4話 第〇魔法とキューブ

 「今の攻撃は魔法なのか?」

 <魔法というより物質をコントロールすることによる”基礎現象”に近いと思われます>

 <ですのでモーションエフェクトに定義します>

 <空間支配と時間操作で時空間を作り出しダークエネルギーによって分裂させます>

 「うん。まったくわからん」

 <今回はその3つの基礎現象を組み合わせて演算しました>

 「もっと優しく説明してくれ C'mon!」


 <人類における魔法という空想の概念で仮定しますと>

 

 <基礎現象=基礎魔法となります>

 <今回の3つとは>

 

 <空間支配=第四魔法>

 <時間操作=第三魔法>

 <ダークエネルギー放出=第六魔法>

<そして>

<砕け散れと要望がありましたので>

 <これらを組み合わせアルゴリズムを使用し演算した結果、空間魔法+時間魔法+ダークエネルギー魔法=Grid break.が成立しました>


 「う~ん。要は複合魔法ということか……」

 <その考え方で合ってます>

 

 「ん?第◯魔法?って事は他にもあるの?」

 <はい。いずれ詳しくお伝えしますが、第一魔法~第七魔法まで存在します>

 「おいおい、えらいことになってきたぞ……」

 

 そんな会話の最中、しばらくすると化け物の遺体が光りはじめ、モザイクが掛かったように散り、やがて消滅する。

 それと同時にまた背景がゆらぎ、化け物の遺体があった付近に残っていたのは角砂糖ほどのキューブが1つ。

 拾い上げて観察するがなんに使うものか全く分からない。


 <それは”ギフトキューブ”と定義されます>

 「ギフトキューブ?」

 

 <倒した個体から入手できる言わばプレゼント”報酬”のようなものです>

 <そのギフトキューブの種類で”カプセルキューブ”というものがあります>

 <文字通りカプセルの中に入っている《情報データ》”スキル”や”アビリティー”や”魔法”や”アイテム”などが使用できるようになります>

 <ただし、何が出るかはランダムになりますので期待外れな時もあるようです>

(なんかガチャみたいだな)

 <ちなみに今回入手したカプセルは”スキルキューブ”と言われるものです>

 「どうやって使うの?」

 <ステータスオープンと唱えて下さい>

 「ステータスオープン」

 『ヴィン』

 

 言われるままに唱えた瞬間、目の前に半透明な四角い画面が表示された。

 そこには個人データのような項目別の数字が羅列していて一番下にルービックキューブのような図形が表示されている。

 

 <画面の右下に丸い形の挿入口があります>

 <そこにキューブを投入してください>

 「了解」

 『ヴィンヴィン』

 画面に表示されたキューブに説明書きがされている。


 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ”スキル”《トリプルエアスラッシュ》[三本爪の飛ぶ斬撃]

 効果:武器を使用し素振りをすると三本の刃が飛んで攻撃可能

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 「なるほど」

 <常に発動するには画面下のキューブ画面に装備することでスキルが使えます>

 「よし!やってみよう」


 《トリプルエアスラッシュ》のアイコンをドラッグしてキューブに移動

 確認表示が出る。


 〖装備しますかY/N〗

 

(ここはYで)

 

 キューブのブロックがまるでルービックキューブを揃えるかのように縦回転、横回転を動き出す。そして設定した1つのブロックが光りはじめ、停止した。装着が完了したようだ。

 「なんかさー。ジワジワ来た。なんだろ♪」

 「このワクワク感ヤバイわマジで♫」

 「スキルってこの言葉の響き!ってかこのワード!」

 「だって今まではAIさんの能力で不思議な体験をしてきた訳だけどさ」

 「このスキルっていうのは俺個人の能力ってことだよな?」

 

 <おっしゃる通りです。あなたの能力になります>

 

 「まさにイッツ!ファンタジー!」

 「it's amazing 」

 「まさか夢オチとか無いよね?」

 <現実です>

 

 「マジでこんな経験、しちゃって良いの!」

 「スキルなんて発動しちゃて良いの!」

 「早速、試したくなったな♪」

 

 「AIさんトランスフォームで日本刀とか右手で持ちたいのだが出来る?」

 <かしこまりました>

 <でしたら分離させたほうが良いでしょう>

 (出来るのかい!)

 

 AIは左腕から日本刀に使う分だけの量を切り離し独立した刀を作り出した。

 

 「おおお分裂も出来るんだ。もう何でもありだな」

 

 これなら両手で振れると思い、試しに剣道のような胴打ちを試み、横一線に薙ぎ払う。

 

 ”スキル”《トリプルエアスラッシュ》

 

 『ビュンビュンビュン』

 『ズバズバズバ』

 

 素振りの要領で一閃した瞬間、三本の三日月型の光が一斉に飛び出し林の木をなぎ倒した。

 「おおおお♪すっご!」


 (うんうんうん)

 (想像通りだ!)

 (まじでこれから剣道の道場にでも通うかな)


 「次。」

 「アサシンナイフにトランスフォーム。」

 暗殺用の短めのナイフに変形させ、逆手に持ち直す。

 

 《トリプルエアスラッシュ》

 「ハッ!!」

 『ビュンビュンビュン』

 『ズバズバズバ』


 「ふふふ」

 「次。」


 また、だ。先ほどの試し撃ちの時と同じように、なんか香ばしいポーズをとっている。


 「AIさん。もうちょっとやっても良い?」

 <構いませんが、明日に差し支えないように>

 「ん?」

 現地に到着してから予期せぬ戦闘などもありギフトキューブなどのサプライズもあり興奮しすぎて時間の経過を忘れてしまっていた。

 (おっと!もうこんな時間か、人目に付くのは面倒だし)

 「まぁ……いつでも練習は出来るし、今日はお開きか」

 

 大変満足した麟太郎は今後の自分を想像し余韻に浸っていたが、山の境界線に浮かび上がる空がうっすらと明るくなってきたため帰路に就くこととした。


 


 ―――――――――――――――――――


 帰りの道中、ふと麟太郎は疑問に思ってた事を問いかけた。


 「あのさ、聞きたいことあるんだけど」

 <何でしょうか>

 「隕石の事故の時、なぜ俺を助けたの?」

 <……それは……私の生みの親から受けた学習プログラムの設定です>

 「学習プログラムによる設定?」

 <はい。私たちAIは開発段階からの基本となるルールがあります>

 <決して人類の敵対勢力にならないようプログラムされています>

 <そして学習機能により、”生命の危機にある人類がいれば全力で助けなさい”という刷り込み設定を受けました>


 AIが誕生する上で人類にとって無害である事は開発条件の第一課題だ。ましてや人類に危害を与える存在になる事を望む開発者は皆無であろう。

 もしかしたら開発途中でバグによる狂気的な自我を認識し、突然暴走する危険性をも備えていてもおかしくない。

 そんな中でこのAIは開発段階からの学習と設定を順守している様子を見ると、信頼しても良いのではないかと純粋に思い立った……。

 

 「そっか……まぁ、俺が言うのも何だけどアレだ……」

 「その……助けてくれてありがとう」

 

 <!>

 <……アタリマエノコトデス>

 なんでカタカナなのか不思議に思ったが、この先の事を考えたら彼女無しでは生き抜いていけない直感的な思いを感じた。


 「そう言えばさ、いろいろ突然すぎて君に俺のこと名乗ってなかったよね」

 <そうですね、タイミングがなくて聞きそびれてました>


 


 「俺の名は【伊庭 麟太郎】!」


 !!!!!!!!!!!!

 <イバ……>

 なぜか慌てるAI。


 <1つお伺いしても?>

 「ん?何?」

 <お父様の名前は……>

 「ん?ああ、十四郎(じゅうしろう)だけど?なんかある?」

 !!!!



 <…………そうでしたか>

 <私は今覚悟を決めました。アナタの事をこれからは”マスター”と御呼びします>

 

 「え?いやいやチョットまってマスタって」

 「俺ね。喫茶店のマスターじゃなくてサラリーマンなんだけど」

 <マスターでお願いします>(キッパリ)←

 「……はい。」


 

 

 麟太郎はサラリーマン人生の中で苦節苦難の末、血のにじむ努力の結果、やっと習得した生き残り戦術を発動した。

 

 それは頭の固い・・じゃなくて誠実に業務を遂行している”経理系”女子(ほんとは優しい子)にそっくりなAIさんを無難にコントロールする為のコツっていうか……ズバリ、逆らわないことだ。

 

 〖彼女たちが自分の意見を”キッパリ”言い切った時には、何を反論しても絶対無理〗なのだ。

 

(まじで反論なんてホント無駄だから……新入社員のそこのアナタ!先輩からのアリガタイ貴重な助言だからな!)

 

 俺自身が何回も接待費を認めてもらえず自腹の口惜しさを噛みしめてやっと辿り着いた極意……”領収書”という〖神の札〗を落としてもらう為の常套手段。


 ”スキル”《アナタニハサカライマセン》を発動し、ここは素直にそう呼ばせることにした。

 

 (逆らうとね、今後一切、まじで正当な接待費も落とせなくなるんだよな……共感してくれるサラリーマン多いと思う)

 (本当はそれだけじゃダメで、合わせ”スキル”《出張先からの自腹おみやげ》がセットなんだけどね)


 

 

 <マスター>

 「はい」


 

 <マスター>

 「はい。。。」



 ………………連呼されながら帰宅する、あるある系サラリーマンであった。。。。



――――――――――――――――――


あとがき


次回、魔法を作ってワクワクしよう!

今後の展開が気になりましたら是非ともブックマークや☆評価などコメントも頂けたら執筆の励みになります。


しん吉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る