第2話 武器と魔法
麟太郎はワクワクしながら少年心が躍っていた。こんな体験をしたらまず間違いなく、誰しもが確実に【小2の遠足前日病】が発症して妄想して、ますます寝られなくなる。
(ここは思い切って行ってみますか!【キカン銃】MP5 9×19㎜の試し打ち♪)
(これは健康かつ野心あふれる男子のワクワクDNAからなる本能だ)
「よし!」
「ねえねえAIさん♪」
<……はい。>
「1つお願いが有るんだけど聞いてくれる?」
<@お願いですか>
「そうそう!とっても大事な心身共に”スッキリ”したいお願い!」
<!♡?…………>
「俺ってさ今寝てたじゃん」
「でもさ、君に起こされてなんかコレの形も変わって気分も刺激されてウズウズしちゃって眠気も醒めちゃってね」
「このままじゃムラムラしてアレだからコレをソレ♡しようかなんて(^▽^)/」
<………………>
「そんなことお互い言わなくても……わ・か・る・でしょ♡」
<…………>
<言ってる意味が・ワカリマセン……>
「んーそしたらまず、フフフ……♪ 公園にでも行こうか。そこでやろう♡」
<●×♡▽■!……こんな夜中に強引にですか?>
「そそ。俺も興奮してるしさ、ほらアレだよ。ベットの上じゃなくて外で銃の試し撃ち♡」
<!…………>
<演算します……>
<シミュレーション結果>
<公園での強引な”キカン♡銃”の試し撃ちを行い銃声を響かせたアナタは近隣の住人による通報のため西中野警察署から出動した数台のパトロールカーに囲まれ、銃刀法違反&東京都迷惑条例違反&危険物保持者&テロ対策特別措置法などの容疑により緊急逮捕され>
「ちょっと待ってくれ!わかったから!」
「なんか勘違いしてないか?とっても嫌な予感する、これって状況のスレ違い?」
<ちなみに米国では
【反テロ及び効果的 ”死刑” 法】
・ 国務長官は、国家の安全保障を脅かすテロ活動に従事する外国組織を外国テロ組織として指定する。
・ 指定された外国テロ組織に対して物質的支援を行い、又は行うことを企てることを、犯罪とする。また、指定された外国テロ組織等の資金を占有又は管理していることを知った金融機関は、占有又は管理を続けるとともに、当該資金が存在することを報告しなければならない。違反した金融機関には罰金が科せられる。>
「もうわかったから!悪乗りした俺が悪かった!」
「これ以上いじめナイデ……HPが」
どうも話が嚙み合ってそうで噛み合ってない空気の中、なぜか勘違いのまま微妙に話が成立している掛け合いが続き、ここは誤解を解きながらも立て直すしかないだろうと奮闘を決意する麟太郎。
(しかしどうしたもんか、マジで奴は頭固いな。勘違いも甚だしい。ってかさ、どういう教育環境で育ってきたのか……)
(まぁ、俺も武器ぶっ放して捕まるのは嫌だし当然と言えばそうなんだけど)
「えーと、AIさん」
<ビク!……はい。>
「あのですね、今までの話は置いといて、なんかさっき行動を共にするとおっしゃっ……てましたよね?」
「”私の能力”を試してみればって発言あったじゃないですか。イヤすいません。たぶんあったのかなぁーと思われますが……」
<……はい。発言しましたがなにか>
「なんとかですね、ここは1つ有能なAIさんを見込んで相談なのですが、アレでどうにかならないもんですかね」
<アレとは?>
「またまたぁぁー。うまいな! AIさん!アレって言ったらアレですよ!」
<……”アレ”とは武器の試し撃ち場所の”代案”でしょうか>
「そうそう!”流れる石”と書いて”さすが”AIさん、解ってるじゃないですか!その洞察力おみごと!イヤ素晴らしい!」
「会話の流れを状況整理され分析し効率的かつ柔軟に対応できる最先端の高性能な人口知能を搭載した最高で芸術的な機能美と共に思慮深さをも携えており」
「さらにですよ!すでに究極で至高の到達点にありながらウィットな表現でわざとトボけて正解を導き出す所作。まさに珠玉のAI業界の女王!」
「厳しさの中にも最上のやさしさを持ち合わせる魅力的な声」
「ちまたの男性達が最もお世話になりたいアンケートNo.1」
「AI史上歴史的な艶姿の純宝石!」
もう一押し、行ってみよう
「なぜ原宿でスカウトが来ないのか不思議でたまらない小悪魔的ミステリアスに満ちたパープルオーラ漂う知識の天才!」
「そんな完璧な素質を持ちながらあえてツンツンするアナタにこ・そ・言わせて貰います」
「この可愛いツンデレさん♡」
<…………>
<かしこまりました。では候補地を検索してみます>
(堕ちた!)
なんとか必死の説得によってようやく目的が前に進んだ麟太郎。
AIの検索により候補地が見つかったようで行動に移る。
<検索結果により最適な候補地が見つかりました>
「おおお!流石AIさん」
<秩父カントリーゴルフクラブがヒットしました>
「ゴルフ場?……遠くない?」
<ここは現在、隣接している山中から野生の熊が出現して>
<利用客に被害が出たため閉鎖中となっています>
<銃声が響いても近隣に住宅も無いため安全です>
<万が一聞こえたとしても熊の討伐で猟友会でも出動しているのだろうと推測されて安心です>
<猟友会が夜中に行動することはあり得ませんが一般の人にはわからないことです>
「わかった」
「早速出発しよう!まぁバレてもAIさんがなんとかしてくれるだろう!」
<……善処します>
左腕を元の形に戻し、そそくさと支度をして急いで車に乗り込み目的地にを飛ばす。
移動距離は101km、所要時間は1時間44分、関越自動車道に乗り花園ICで降りて県道44号まで来れば目の前にその地がある。
運転中は暇なのでAIさんと雑談でもしようかと思いふと何気ない質問を投げかけた。
「AIさんってさ、腕を変化させる能力以外にもなんかあるの?」
<実在する物質であればどのような現象再現も可能です>
「どゆこと??」
<この世に存在しているあらゆる物質を組み換え制御出来るということです>
「もっと簡単に!」
<あらゆるものを再現出来るということです>
「んー。よくわからんが例えば”魔法”とか使えちゃったり?」
<魔法というのは人類が空想の中で作り出した願望に近いと考えます>
<ですが、科学的に似たような現象は作り出すことが出来ます>
「はは……じゃぁアレかな?炎魔法的なファイアとか撃てるの?」
<例えばゲームの世界に出てくるようなファイアを想像しておられるのなら、それは可能です>
「え?」
<科学的に。ですが……物質と酸素が結びつくことを酸化と言います。この酸化反応がある条件で起こるときに熱と光を発し、>
「ちょっとまて!今、可能って言ったよね!マジかよ」
「そうすると、水魔法や風魔法や土魔法とかも使えるって事?」
<そういう事になります>
<ただし、現象を発生させる為の物質から分子、原子、素粒子までの分析と計算する時間が必要になりますが、可能な範囲です>
<一度計算してしまえば内部ストレージにアプリとして保存されますので>
<ゲーム内でいうところの”無詠唱”が実現できます>
(俺やったよ母ちゃん!勝った!人生勝っちゃったよ俺!)
苦節35年、やっと俺の人生が報われるのかと感動しているところだったが、目的地が目の前に迫ってきていた時だった。
突然、夜空から光り輝く星のような小さなものが雨のように降り注いだ。
「うぉ。なんだこの光の雨は!」
<…………>
<分析中>
<…………!〇×▽◇……>
約1分くらいだろうか、やっと収まった光がどこともなく消えていった。
「こんな不思議な現象って初めてみたわ。なんか花火大会の最後の盛り上がるところ?」
「なんだっけ?そう銀冠(ぎんかむろ)だっけ尺玉のやつ」
「アレの中に居るみたいだった」
「ん?AIさん?いる?」
<……はい。居ますよ。>
「しかし何だったんだろう?ね?」
<…………しばらく時間が掛かりますが……分析しておきます>
「そっか。ところで、これからどうするの?入口の門がチェーンで施錠されてるけど入れるの?」
<疑似魔法といいますか《空中浮遊》で上から侵入します。>
「……すげ。。。まじか。」
「お、お、俺飛べるの?」
<はい。ですが事情により短時間しか浮遊できませんが飛べます。>
(やったよ母ちゃん!飛んだよ!飛んだよ俺!)
<魔法という空想的な名詞はあまり使いたくないのですが>
<現象を言語化すると【モーションエフェクト】と呼ぶことを推奨します。>
「うんうん呼ぶ。呼ぶからはよ。はよ。」
<【モーションエフェクト】起動>
{アプリ《空中浮遊》exe.展開}
{インストール中:……}
{レジストリ構築中:……}
{設定ファイルに書き込み中:……}
{ショートカットを作成中:……}
{………………}
{インストール完了しました}
<これより【モーションエフェクト】開始します>
<ME《空中浮遊》>
その瞬間、左腕が銀色に輝きだしオーラが全身を包み込んだ。
麟太郎の体がふわっと浮いて入口の門の上空に飛翔しまるで魂が抜けて浮遊しているような感覚を覚える。
驚きの顔よりもなんかニヤけてしまっている自分の顔を鏡で見たいもんだ。
月夜に吹く爽やかな春風に乗り、満天の星空を背景に35のおっさんが空を飛ぶ”様”は、ちょっと若い女性群にはキツイ光景かもしれない。(見られなくてよかった)
「いやぁぁぁ♪AI姐さん最高だね♪極上だよ♪まさに天にも昇る河、”天河”《テンガ》のような気持ち良さっていうのかな?」
「姐さんって良いモノ持ってるね♪」
<……>
<あのグリーン奥のOB区域に大きい岩があるのは見えますか>
「ん?」
月明かりに照らされて薄っすらと浮かび上がる直径二メートルほどの岩石
「ああ。アレか、見えるよ」
<そこに照準を合わせて撃ってみてください>
「おk。少し緊張するな……」
「機関銃MP5 トランスふぃぉーーむ!!」(チョット噛んだ)
<……噛んだ。……>
左腕が銀色に光り、機関銃の形に変形し、空中に浮きながら目標に標準を合わせ少しだけ香ばしくポーズを作り、心の中で念じる麟太郎。
「撃て!」
その瞬間、怒涛の連続した轟音と共に弾丸が発射されていく。
『ダダガダダダダッドドガガガバーン』
「ファッxxx!@……ッ!!」
一瞬で砕け散った大きな岩石に驚愕し瞳孔が開いたまま感動のリアクション一閃
「Wow!アンビリバボー~~~!」
「OMG! OMG!」
「It Amazing!Blow! め~~ん! Yes Yes Yes!」
「もう最高ですわ!逝ってしまいましたわ私」
訳の分からない英単語を連呼しリアクションをする少し興奮気味でアレな麟太郎だったが余韻に浸る間もなく……ふと周辺に視線が動き……岩があった場所からほんの少し離れたところにいる黒い物体を発見した。
「ん? あれなんだろ?」
<どうかしましたか?何か不具合でも?>
「いや・・・・もしかして・・・!」
「いや間違いない・・・あそこに居るのは倒れている熊だ」
――――――――――――――――――
あとがき
次回、戦闘シーンに注目!
今後の展開が気になりましたら是非ともブックマークや☆評価などコメントも頂けたら執筆の励みになります。
しん吉
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