ここまでが前置き。これからが本題。
蛍光ちゃんに恋したばかりの僕はそれはまあバカだった。何せ、蛍光ちゃんにピンクに光るケツを見せつけていたんだよ。蛍光ちゃんは自己紹介の時にちゃんと自分のことを教えてくれていたのにね。これが話を聞かずに自分のやりたいようにやる男の典型例だ。モテないから気をつけた方がいい。蛍光ちゃんは薄く口を歪ませた。後から知ったけど、これは彼女の困ってますの合図だった。
自信満々ピンクケツ光の僕と口を歪ませる蛍光ちゃん。相互不理解のお手本の様な光景だった。見かねた友人が僕のことを蛍光ちゃんからひっぺがし、お前は蛍光ちゃんの話の何を聞いていたんだとケツをピカピカ怒らせてた。
そこで僕は、ようやく自分が大バカ大マヌケのトンチンカンだって気付いたよ。ケツをいくら太陽の如く光らせたって、それは蛍光ちゃんにとって意味不明な行動にしかならないのだ!
僕は悩んだ。蛍光ちゃんに僕の思いを知ってほしかった。僕が本気だと分かってほしかった。それは本当に本心から。
でも、それ以上に謝りたかった。蛍光ちゃんに恥をかかせてしまったことを。ケツをピンクに光らせた男子を無視した蛍光ちゃんが皆にどう思われたかって考えると、僕は毎日毎日吐き気がした。案の定、皆が蛍光ちゃんが分からないのをいいことにケツをピカピカさせて彼女をからかっていた。僕はなんてことをしてしまったんだろうって高校生にもなって死ぬほど後悔してケツを青く光らせた。
それで、僕はちゃんとすることにした。
蛍光ちゃんと同じ相互理解をすることにした。
言葉を学んだ。持ってる小説、漫画、雑誌、ぜーんぶ毎日毎日言葉に出した。僕の話し方が何か変だとしたら、そこから知識を得たからかもしれない。呂律が回らなくて酷いもんだった。それでも毎日舌が擦り切れるくらい練習した。
表情を学んだ。鏡の前で色んな表情になるように顔の肉を引っ張った。本でどの表情がどの感情を表すのか勉強した。あの日、彼女が浮かべたものが苦笑だと知った。蛍光ちゃんもきっと、練習したんだろう。少しでも誰かに何かを伝えるために。
ジェスチャーも学んだ。あまりに動きのないクルクル表情を変えるお喋りは逆に不気味なロボット味を増していたからだ。身振り手振りで分かるように、分かりやすくなりますようにと僕は覚えた祈りの手の形で毎日祈った。
そして
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