光らない蛍は蚊帳の外
そして、人類がケツを光らせるのが当たり前になった頃、一人の女の子がこの世に産まれた。名前を
蛍光ちゃんは不思議なことにこの世に生を受けてから全然ケツを光らせなかった。それは異様なことだった。両親は心配してケツを青く光らせながら大きな病院に蛍光ちゃんを連れて行った。そして、蛍光ちゃんが何故ケツを光らせないか分かったんだ。
蛍光ちゃんは生まれつき感情を表すのがとっても苦手だったんだ。「
いや、困ったね。本当に困った。だってこの頃の人類は───ケツを光らせることに慣れすぎて、旧時代的なコミュニケーションをほとんど使わなくなってしまっていたんだ。
言葉とか、表情とか、ジェスチャーとか。そういうのが軒並み光に変換されるもんだから衰退しちゃってたんだよね。
無表情のほとんど言葉発しない動作もロボットみたいなケツをピカピカさせる人間の中でこれから生きていかなきゃいけない。自分はケツを光らせることが出来ない中で。自分の感情も他人の感情もよく分からない中で。
控えめに言っても地獄だね。人類は相互理解に等しいものを手に入れてたからそれを持たない蛍光ちゃんを恐れた。声を出して意思を伝える蛍光ちゃんを恐れた。分かりやすく表情を変えようと頑張る蛍光ちゃんを恐れた。身振り手振りする蛍光ちゃんを恐れた。
蛍光ちゃんは感情を表すのが苦手だったから、自分の感情もよく分からなかったから何とか生きてこれたけど、そうじゃなかったらさっさとこの世が嫌になっていたかもしれない。
皮肉だね。蛍光ちゃんが世界に馴染めない原因が蛍光ちゃんを生かしたんだ。
蛍光ちゃんは生きた。頑張って生きた。自分の置かれた状況を表す感情が分からないけど生きた。
生きて高校生になった時、とんでもない変人が彼女に恋をした。
その男の名前を
それが僕だ。
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