何故に蛍は光るのか
292ki
蛍に学ぶ相互不理解解決法
蛍って知ってるかい?
そう、あのケツをピカピカさせて求愛する、やたら環境に厳しいあの虫さ。今じゃ僕らが滅ぼしてしまったあのイカしたヤツ。
それとは全然関係ないけれど、人類は相互不理解に疲れていた。
だって、分かり合いってあんまりにも難しすぎる。全人類に相互理解を求めるのは無理ゲーだ。同じ赤色を指さしても林檎の色って言う人と、夕陽の色って言う人がいるんだ。
ここに信念だの夢だの環境だの利益だの愛だの勇気だの悪意だの復讐だの希望だの何だの複雑怪奇な悲喜こもごもをぶち込んでみろ。誰が相互理解なんてできるって言うんだ。
だから人類はずーっと相互不理解のまま、相互理解を夢見ていた。え、ここに関しては一致したのかって?もちろん、どんな世の中にも逆張り野郎はいるからね。してないよ。
何回目かの相互不理解によって、地球の環境をまたちょっと悪くして、人々の絆を何本かブチブチと千切って、命の価値をほんの少し軽くして、人類は疲れたなぁって思ったんだ。
何とかならんものかと相互理解に努めて相互不理解に至る無駄な時間を使い、頭を捻って考えてみた。元々元気だった頃だって無理だったのに、今や疲れちまった人類だ。何ともならん時間が続いて、人類はより疲れただけだった。
皆がもういいや〜これを理由にもういっちょ相互不理解といきますかと銃やら爆弾やら戦車やらに手をかけた時、一人がこう言った。
「もう、人間全員見るだけで相手の気持ちが分かるようにすればいいんじゃないっすかね」
ナイスアイデアでグッドアイデア。なんで皆思いつかなかったんだろうね。ちゃんと頭の螺子を締め直せ。でもでもどうやってそんな素敵でワンダフルなアイデアを実現させるんだい?
皆の期待の視線を一身に受け止めて、その人は考えた。まあ、実は適当に言った一言だ。深い意味なんてなかった。ごめんなさいして逃げようかなって思った時にその人はこの世にもういない自分の好きだった物を思い出したんだ。
それが何かって?もう分かってるはずだよ。ケツをピカピカ光らせて意思疎通をするクールでクレバーな虫。
「人類皆のケツを感情に合わせて光るようにしたらいいんじゃないっすかね」
ようこそ、ここは全人類がケツをピカピカ光らせて意思疎通する未来だ。
アホみたいな話だけど、全人類はこのアホみたいな話に乗った。
生まれてくる赤ちゃんのケツに小さな電球を埋め込んで、神経系をあれしてこれして感情に合わせてケツが光るように真面目に取り組んだんだ。
嬉しかったら明るくピカピカ。悲しかったら暗めにピカピカ。喜怒哀楽は黄ピカ赤ピカ青ピカ緑ピカに置き換わり、イエス・ノー枕はその存在意義を失った。良かったらそういう風に、嫌ならこういう風に相手に分かるようにピカピカするからね。
犯罪も減った。ゼロとは言えないかもだけど。だって、どうやったって悪いことしようとすると感情が昂る。感情が昂ると悪意に応じたダークカラーでケツがピッカンピッカン光るんだ。目立つし、一発でヤバい奴だって分かるからね。相当なアホじゃない限り、やろうと思わないよね。
最初はこの人類総ケツピカ計画に反対する人達もいたんだ。そりゃそうだ。全人類、明日からあんた達のケツをピカピカ光るようにさせていただきます!って言われてはいそうですかわかりましたってなるんなら、この計画はそもそもいらないんだよ。
結構無理やりピカらせたよね。そんで、結構無理くりな洗脳じみた教育も施してみたよね。なに、辛いのは最初だけだ。ピカピカするのにゃすぐ慣れる。実際、人類は速攻で慣れて、中々便利だなぁって思い始めたんだ。チョロいね。
ちなみに流石にこの計画はもうちょっといい案が出るまでの繋ぎのつもりだったんだけど、それが出る前にこの安上がりで喜劇じみた世の中を皆受け入れたもんだから、このままで行くことになったんだ。何でもやり始めとやり直しはめんどいしね。
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