もっと酷い失恋を

「が、はっ……ひゅー…ひゅー…」


 気持ちが最高潮に達して香菜の手から力が抜けだした辺りで私はようやく香菜の首から手を離した。


 香菜の顔はもう首まで真っ赤。胸はしきりに上下してて、香菜のきれいな瞳からは涙が溢れ出ている。


「可愛い♡」


 私は思わず再び離した手で指の跡が薄っすらと残った首をなぞる。


 香菜は再び締められると思ったのか体がビクンッと跳ねて震えだす。


「あぁ♡そんな怯えないで♡」


 香菜はズリズリと私から離れようと体を少し起こして後退りする。


 しかし、ここはベッドの上。後退りしても逃げ場はなく、壁に背中を打ってしまう。


「やだっ…雪ちゃん、落ち着いてよ!」


「え〜?落ち着いてるよ〜♡香菜こそ、そんなに怯えないで♡」


 私は胸元でキュッとガードしている香菜の手を掴んで両手を壁に当てて動きを封じる。


 香菜は必死に私から逃げようとしているけど、力では全く私にかなっていないようでただただ震えているだけ。そんな様子があまりにも可愛くて仕方ない。


「香菜♡可愛い…♡」


 私はそんな香菜の様子に我慢ができなくなって、ついにキスをした。


「んぅ?!」


「んっ…」


 はあぁぁぁあ♡♡♡♡♡私、香菜とキスしちゃった♡初めてのキス♡♡♡♡♡


「んっはぁ♡」


「はぁ…はぁ………そ、そんな…私、ファーストキスだったのに…」


 知ってる♡知ってるけど、改めて聞くと嬉しさがこみ上げてくる。


「香菜っ♡」


 今度はもっと深く、香菜のもっと深いトコロまでキスをする。


 香菜の舌はとっても甘くて、熱くて、トロトロとしていて、私まで溶けてしまいそうだ。


 何分経ったか分からないほどキスをして、ようやく口を離すと香菜はもう喋る気力もなくなったのか、はぁはぁと息を切らしている。


「かなぁ♡きもちぃ?」


 香菜はまだ理性が残っていたようで、必死に首を振って否定する。


 でも私の膝にあたっている香菜のお股は少し湿っていて、気持ちよかったことがわかる。


「香菜♡もっと、もっと気持ちよくて、ふかぁいコト♡しちゃおっか♡」


 私は壁に固定していた香菜の手を離して頬に添える。


 香菜の右手首には私の手形が赤く、くっきりと残っているし、左手は私と深く繋いでいたからかびっしょりと濡れている。


「ほら♡香菜♡口、開けて?」


 香菜は私の要望を聞かず、口を固く閉ざす。


 ダメな子。恋人の言うことは聞かなきゃダメなのに。


「……まぁいいや♡」


 私は気を取り直して香菜の首元に齧りついた。


「いっ……」


 グッと力を入れて舐めたり、噛んだりしていると少し口の中に鉄の味が広がる。


「おいひぃ♡♡♡♡♡♡♡♡」


 香菜の味♡香菜の味がしゅる♡♡♡♡♡♡


「かなぁ♡♡♡ふぁなぁ♡♡♡♡♡」





 必死にむしゃぶりついていると『パァン』という乾いた音とともに頬に痛みが走った。


「……え?」


 理解するのに時間がかかった。私、私は…香菜に打たれたの?あの、香菜に?


「さ、最っ低!!!!!!もう雪ちゃんなんて大嫌い!!!!!!!!!!!!」


 嫌な言葉が耳をつんざく。


「もうイヤ!なんで雪ちゃんは私の気持ちを無視するの?!私、何度も嫌だって…い抵抗したのに!離れて!私から離れてよ!」


 香菜は私を引き離そうとグイグイと押してくる。




 私、私は………………………………

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