深い微睡
あれからはなんとかいつも通りを装って、三人で教室に向かった。
一時的に我を失っていた気がしなくもないが、気のせいのはず。
司は運の悪いことに寝坊で朝練を休んでいたらしく、偶然私達と遭遇してしまったらしい。
最悪なことに司は私達と同じクラスだが、これ幸い、司は私達二人と席が離れている。
そして香菜は私と隣同士の席。
結局今日の授業は何も集中できなかったが、なんとか放課後までいつも通りの私を装って過ごす事ができた。
でも、私の精神状態はもう限界。
今日一日改めて香菜に注目して過ごしてみたが、香菜はあまりにも無防備だし、変に他人に甘い。
だからこそ、香菜に変な気を起こしてるやつもいるだろうし、香菜に近づきすぎなやつも何人かいた。マークしておかないと。
司とか、灯里とかに関しては香菜の頭を撫でたりしていた。許せない。
だから私は今日も香菜を部屋に招くことにした。
香菜は私からの誘いになんの疑いもなく了承して部屋にやってきた。
もし、他の…司とかの誘いが来たとしても香菜はそれを受けてしまうだろう。それは絶対に避けなければならない。
香菜を部屋に呼んで良いのは私だけで、その逆もそう。
「えへ〜、香菜いらっしゃい!」
「うん、お邪魔します」
先週の失恋した件と似たような状況に少しデジャブを感じる。
ただ、今日は香菜から話があるわけでも無ければ、時間が遅いわけでもない。
まだ空は青いし、今日話があるのは私の方。香菜も不思議そうな顔でベッドに座って、未だに立ったままの私を見つめている。
「香菜、恋バナしよ!」
「えぇ?!」
本当は香菜の恋バナなんて聞きたくないし、聞く気もない。
だけど、香菜は驚きながらも私の提案に首を縦に振った。
そこからはあまりにも地獄だったから心を無にして聞くに徹した。
聞きたくもない好きになった点とか、好きな動作とか。香菜は意外とこういう話に熱くなっちゃうタイプなんだね。かーわいっ♡
でもね?私、香菜のそんなことを聞きたくて香菜を読んだわけじゃないの。
「そんな感じでね?あの時の司ちゃん、かっこよかったなぁ」
「ふ〜ん…」
「あっご、ごめんね?私、熱くなっちゃって」
今更恥ずかしくなったのか香菜はようやく話を切り上げた。
「んーん、いいよ!」
私もいい感じに胃がムカムカしてきたところだ。正直、今にもゲロがでそう。
「じゃあ…私の恋バナも聞く?」
「え?雪ちゃんも好きな人いるの?!き、聞かせて聞かせて!」
香菜はいかにも興味津々といった様子。そこには嫉妬とかの感情はなく、とてもきれいな目で純粋な心で聞いてきているのがよく分かる。
「うん!」
私は香菜のそばに、もっと近くに座り直す。
もう膝が触れ合っていて、こうしてみると肌の色が違うのがよく分かってなんだかとてもえっちだ。
「あのね?私の好きな人、と〜ってもひどいんだよ?」
「え?」
「私はその人のこと、好きなのに、その人は別の人にお熱みたいでい〜っぱい惚気けてくるの」
「ゆ、雪ちゃんは友達多いもんね…優しいし、そういう相談したくなっちゃうの、わかるなぁ」
香菜は私を慰めようとしているのか、香菜の肩に預けた私の頭を撫でてくる。
「だからね?私、許せなくなっちゃって」
私は顔を上げると香菜のことを押し倒した。
「え?ゆ、雪ちゃん…?」
香菜の顔は困惑と焦りでいっぱい。さっきみたいに顔を赤くして嬉しそうにしている様子もない。
私はなんだかそれがとっても残念だった。
「ねぇ、さっきみたいに顔、赤くしないの?」
「ゆ、雪ちゃん?な、なんだかこわ…」
私はそっと香菜の首に手をかける。
その瞬間、私が何をしようとしているのか理解したようで香菜の顔はみるみるうちに青くなっていく。
違うの私はそれが見たいわけじゃないの。もっと赤くなってる顔がいい。
私も自分の手にグッと力を入れた。
「うぐっ……ぅあ」
香菜は私の手を振りほどこうと必死にもがく。でも、そのせいでもっと苦しくなっているようで、どんどん顔が赤くなっていく。
「香菜、苦しそう……でも、かわいいよ♡」
香菜は生存本能に抗えなくなってきたのか、私の手首を掴んで爪を食い込ませる。
私の手首には鋭い痛みが走るが、私は力を緩めず、むしろ強くする。
「…っ……ぃ……」
ああ!香菜が私を見てる!潤った目で!蒸気した頬で!興奮する!
「香菜っ香菜っ私、香菜のこと大好きだよ♡愛してるのっ♡司なんかよりもずぅ〜っと!だから香菜も私のこと好きになっちゃお?♡そしたら、こんなことせずに香菜のこと甘々になるまでよしよしして♡キスして♡愛をいくらでも囁いてあげる!♡」
香菜が好きだという気持ちがどんどん溢れてくる。とってもドキドキして、幸せ♡香菜もきっと私の気持ちが伝わって、今頃私のことを好きになってくれてるはず!♡ああ香菜!好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
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