百舌鳥の早贄

周りを畑に囲まれた友だちの家の近くには、大きな鉄塔がそびえていた。


イタズラを防ぐために、その周囲にはフェンスと有刺鉄線が厳重に張り巡らされていた。

有刺鉄線に干からびたカエルが突き刺さっているのを見たときには、その謎の儀式に恐怖した。


それが鳥の仕業だと知ったのは、ずいぶん後になってからだった。

「もずのはやにえ」、僕は何度も口ずさんだ。

その鳥の習性を知ったとき、恐怖以上に自然の営みに対する畏怖が生まれた。


百舌鳥もずは獲物を捕らえ、それを保存するために有刺鉄線を利用している。

その行動に計画性が感じられ、動物の本能の奥深さを垣間見た。


そして、人間も同じだと気が付いた。

スーパーの精肉コーナーや鮮魚コーナーには、ずらりと死骸が並べられている。

百舌鳥と同じように、僕たちもまた、生きるために他の命を奪い、計画的にそれを食べている。


人間も動物の一種であり、自然の一部であることを認めると、心は次第に軽くなった。

所詮しょせん、文明や文化も自然の摂理に従っているに過ぎないのだ。

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