第2話 広告マジで邪魔
そもそも何でこんなことになったか。
それには深いわけが…あったわけじゃないんだコレが。
その日。俺は自分の部屋のベッドにもぐり、スマホでイケナイ・コンテンツの鑑賞に努めていた。
ああいうサイトを1度でも見たことがある奴なら分かると思うが、そういう時の俺はかなり神経質になる。
なぜなら、ほんの一瞬のミスタップで訳の分からねー広告に飛ばされちまうからだ。
せっかくページの下の方まで来てたのに、ふと気を抜いた瞬間にぴゅっと飛び出たバナーに指が持っていかれた瞬間と言ったら…
アレはいくら温厚な俺でもブチギレそうになる。
だから俺は全神経をスマホの画面に集中させていた。
その時だ。急にスマホが振動しはじめた。
「おわっ」
スマホの画面は着信画面に変わっていた。
しかもそこには「姉貴」と表示されている。
俺は迷った。今それどころじゃない。
神経をすり減らしながらサイトをさまよって、やっと一番の見どころまでたどり着いたんだ。
ここからがお楽しみタイムのはずだった。
だけど、姉貴の電話を無視する。そんな恐ろしい選択をする勇気は俺にはない。
俺はあきらめて通話ボタンを押した。
「…もしもし」
「出るの遅えんだよ」
「…すみません」
姉貴の後ろから、女の子たちのきゃいきゃい言う声が聞こえた。
「これから友達連れて家に帰るから、ケーキ買ってこい。6個」
「いや、でも俺忙しくて」
「ああん?」
「ア、イエ」
それじゃーな、とだけ言って切れた電話を俺はしばらく見つめた。
暴君すぎる。ジャイアンかよ。
俺は姉貴の顔を思い浮かべた。ジャイアンとの違いは、整った顔くらいか。
実の姉に言うのもなんだが、アイツまじで顔だけはいいんだよな。
俺も似たかったもんだ。
俺は溜息をついて立ち上がった。
お楽しみの再開は、ケーキを買った後だ。
そして俺は家の外に出た。
歩いて十分くらいのところにケーキ屋があるから、そこに行くつもりだった。
家の前の道を歩き、大通りの交差点に出る。
そこで歩行者信号に引っ掛かったから、俺は横断歩道の前で立ち止まり、スマホを取り出した。
その時だった。前の方からフォンと音が聞こえて、俺は顔を上げた。
「は?」
そこにあったのは魔法陣だった。
横断歩道の中央くらいに、どぎついピンクに光る魔法陣が浮かんでいる。
俺が目の前の非現実的な光景についていけないでいる間に、ものすごい風が吹きつけて俺の体は前にもっていかれ始めた。
あの魔法陣だ。あいつがすごい勢いで周りの風を吸い込んでいる。
俺の体が浮き、道路の方につんのめった。
右の方からプアァァと耳をつんざくようなクラクションの音が響く。
目線を右に動かすと、トラックがすぐそこに迫っていた。
やべ、ぶつか…
次の瞬間、俺は桃色の空間で目を覚ました。
変な場所だ。空も周りも、どこもかしこも胸焼けするくらい桃色だなんて。
「やっとお目覚めかしら? ボウヤ」
耳たぶをくすぐるような妖艶な声がする。
「ん…」
寝転んだまま横を向いて、俺は目を見開いた。
そこには赤いボンテージスーツを着た美女が、俺に添い寝をするように横たわっていた。
艶めく生地越しに、ハリのある大きな膨らみが桃色の床に押し付けられている。
俺は思わず叫んだ。
「え、チョ、ダレデスカ」
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