⓪-3 追憶の朱は何を見て③


「ここまで来れば、敵はあの通路しか通らない……」


 一方通行の通路まで逃げ込むことに成功したものの、レイスの出血は止まったわけではない。既に左腕はほとんど動作をする様子が無いのだ。


「残りの弾数は?」

「……ごめん。二、三発くらいしかないわ。驚いて無駄撃ちをしてしまった」

「それは今言っても、仕方ありません。正確に把握する必要があります。今確認なさい。私が警戒します」



 今のレイスは血だらけであり、左肩から服を染めている鮮血は彼女のものだが、それ以外は返り血である。あれから銃撃戦を繰り返し、何人も撃ち殺している。


「二発分ね」

「そう、次で最後ね」


 最後。彼女の言う最後とは、次で決着をつけなければならないという事である。


 襲撃者が何人であるのかも、不明だというのに。


「……あなた、足は問題ありませんよね」

「走れるかという事? それなら問題ないわ」


 レイスは銃を下ろすと、自身に手渡そうとしている。


「私のは四発あります。これを持って逃げなさい」

「冗談でしょ、やめて」



 レイスとラーレの拳銃は別物だ。


 レイスの拳銃は.45口径モデルで1800年代後半のアメリカ西部で使用されたシングルアクションのリボルバーだ。片手でも撃てる、早撃ち用の拳銃である。

 対して、ラーレの拳銃は最近でドイツで設計されたセミオートマチックであり、新しい方のピストルである。衝撃の少ないことを重視し、持たされている。


 このどちらもが、この拠点で改良が施されており、一般で出回っているものよりも性能は上だ。

 だからこそ、一般に出回っている拳銃よりも、レイスの拳銃は衝撃が大きく、ラーレには不向きなのだ。

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