番外編②-11 出立と出会い②

 レオポルトは感激し、腰に持った刀を掴んだ。麒麟刀は鞘の中で、主人の喜びを感じ取っていた。


「いずれ、修行したら、手合わせ願います!」

「ははは。急だね。いいよ、レオポルト。手合わせ願おう」

「こら、レオ! アルブレヒト殿下を困らせるな」


 話の終わったルクヴァが横槍を入れるが、アルブレヒトは微笑みながら答えた。


「いえ、いいんですよ。ルクヴァ王。俺は同年代の知り合いとは、手合わせすると決めていますから」

「まあ。アルブレヒト、知り合いだなんて言わないの!」


 イングリットは腰に手を当てると怒ったような仕草を始めた。


「母上。レオポルトはその様に幼くありません。妹と同程度の対応は控えるべきです」

「まあ。それはごめんなさい。ついつい、やってしまうの」

「殿下には、妹がいるのですか?」

「ああ。七つ下に、妹のメリーチェがいる。今度紹介するよ」

「そうですわ!」


 イングリットは手を合わせ軽快な音を一つ鳴らすと、その提案を話した。ルクヴァだけが、嫌そうな表情を浮かべた。


「二人は兄弟になればいいのです!」

「いや、母上。それはさすがに」

「無理かしら」

「無理でしょう」

「無理かしら?」

「………………はあ。こうなっては折れないのが母上です」


 額に手を当てるアルブレヒトだったが、打って変わってその言葉に、目を煌めかせたのはレオポルトだった。


「僕、なりたい! あの、アルブレヒト殿下と兄弟に!」

「な! レオポルトまで」

「……お願い出来ますか、アルブレヒト様」


 まさかのルクヴァが仰々しく申し出たが、アルブレヒトは照れ笑いを浮かべて頷いた。その表情に、レオポルトは嬉しさ余ってアルブレヒトへ抱きついた。


「おにいちゃんって、呼んでもいいですか!」

「こら、レオ! さすがにそれは殿下に失礼だ」

「構わないよ、レオ。俺も君のような弟が出来て、嬉しい」




「俺たちは、兄弟になるんだ」

「はい! 兄さん!」


 アンセム国の港から出立の際、ルクヴァは号泣し、セシリアに宥められた。というより、笑われていた。その姿を見ながら、レオポルトは麒麟刀に誓いを立てたのだ。



「立派な剣士に、侍になってきます」




 航海は順調であり、アルブレヒトとイングリットに見送られ、レオポルトは異国のヴァジュトール港を旅立った。そして、単身で景国へ入ったのだ。


 そのニュースはアンセム、セシュール両国だけでなく、ヴァジュトール国へも広がり、景国が大陸人を受け入れたと話題になったのだが、それはまた別の話。


 その後レオポルトは2年の修行に入った。それは14歳で成人の儀に向け出立するまで続いたのだ。アルブレヒトとヴァジュトール港で再会を果たし、妹とも初対面するのだが、それはまた別の機会に。


 ―暁の草原 番外編2、完―

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