番外編②-7 相棒との出会い①
和やかな食事を終えると、寝床を作ったと呼びかけられ部屋へ向かった。レオポルトの寝床は、まさかの宝物庫と呼ばれた部屋だった。
「きんきらしてるが、ここならゆっくり寝れるだろ」
「信用しすぎじゃないですか」
「別に持って行けるなら持ってっていいぞ! 気前いいだろ、ガッハッハ!」
持ち帰る場所がない以上、持ち帰ることは出来ない。レオポルトは卑屈に考えた瞬間、すぐ目の前に置かれた歪曲した棒状の煌びやかなものに目を奪われた。
「これは、なんですか」
「おお。こいつぁ、景国の刀っちゅう剣だ。なんか異国の商人が売りに来たんだが、向こうはこっちの織物が気に入ったらしくてな。そいつ一本で一巻き買っていったんだよ」
「一巻きで、この一本と交換したのですか!」
レオポルトに相場はわからない。セシュールの部族の村々ではいまだに通貨が浸透しておらず、物々交換が主流だ。それでも、この刀という剣の価値は高いと視ていた。
「この刀、抜いてもらえませんか」
「おお? 別にいいが、手入れもしてないぞ」
「構いません、お願いします」
「それじゃあ、ちょっと離れてな」
セシリアは腰に刀を控えると、スラリと音もなく刀を抜き、その美しい刃を輝かせた。窓から入る光など無いに等しいにもかかわらず、その刀は煌めき、そして刃にはレオポルトがそのまま映り込んでいた。
「きれい……」
「ああ。でもこいつはどうも、刺すんじゃなくて、切る、らしくてな。俺は刺す方が得意なんだ。殴ったりな」
「物騒なこと言いますね」
「それをさせないのが、お前の父親だったんだがな。次こそは我等タウ族が勝つぞ! ガッハッハ!」
セシリアはひとしきり笑うと、何かを思いついたようにその笑いを止め、まじめな表情を浮かべた。
「レオポルト、刀を持ってみろ」
刀を鞘にしまうと、セシリアは刀をレオポルトに差し出した。恐る恐る受け取った刀はずしりと重い。しかしその刀は、風に乗るかのように軽やかに手に収まる。
「そいつは、風と水の加護がかかってるらしい。ちょっと地も齧ってるって言ってたか?」
「僕の属性と、同じだ」
「ああ。全部そろってるな」
「…………あの、この刀、名前はあるのですか」
「名前? あーどうだったか。あったんだが、俺は景語が読めなくてなあ」
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