番外編②-3 タウ族の村①
そこに女性の姿はなく、出迎えの男たちは屈強な体を競って自慢するように、高光する腕の筋肉を見せ合っていた。
「暑苦しいんだよ! お前ら、いい加減にしろ」
「何を言う、ルクヴァ。次の王戦では待っていろ」
一番ガタイのでかい男が前へ出ると、突然片膝をつき、首を垂れた。
それに従い、控えていた男たちも全てが同時に片膝をつき、首を垂れた。圧巻するほど統率された動きは、少年の心を打つ。
「そういう所だけにしたらいいんだ」
「というか、なんだあのコンドルは! 雄たけび返しはどうした!」
「俺たちラダ族は視る部族だ! 何度言ったらわかる! 俺たちは、狼じゃない!」
「ガッハッハ! 元気そうじゃないか。ルクヴァ! 離婚して、引きこもっているかと思ったぞ!」
「馬鹿野郎! 息子の前でなんだ、それは!」
「ほう、ではこの少年がラダの子か」
豪快に笑う男は立ち上がることなく、その姿勢のまま少年を見つめた。負けじと睨み返す少年は、ハッとして大きな声を上げる。
「あなたが、セシリア⁉」
「なんだお前。俺の事を知らなかったのか! ガッハッハ! 俺様こそ、タウ族が族長セシリア様だ!」
「せ、セシリアっていうから、女性かと思って!」
レオポルトの叫びに、一行とタウ族の部族民は多い笑った。あまりに笑われたため、顔を赤らめる以外に、腹立だしさがこみ上げてくる。
「アンリ、タウ族は女性名を男に付けるのが流儀だ。それが彼らの誇りなんだ。お前は、それを知らなかっただけだ」
「なッ…………‼ どうして言って下さらないのですか」
「お前がわからないと言わずに、自分の知ったかぶりで生きているからだ」
「ッ……」
「よさないか、ルクヴァ。ルゼリアに居たのだろう? 我等の常識を知らなくとも、仕方のな」
「仕方ない訳がないでしょう!」
レオポルトは憤慨すると、思わず叫んでしまった。タウ族の奥で控えていた女子供も、皆がレオポルトを見つめている。
「ぼ、ぼくは……。僕はもう、セシュールの民だ! ルゼリア民じゃない!」
「そうだな。ラダの子よ。そうだ、それでいい。それこそ、我等セシュールの民だ」
「何をわけわからんことを言っている。ほれ、セシリア。言ってた牛だ」
そう言ってレオポルトの頭をぽんぽんぽんしたルクヴァは、そのまま少年を追い越し、タウ族の村へ入っていった。
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