⑦-14 狼煙の余波④
アルブレヒトの突っ込みと、レオポルトは自虐的な笑みが、その真相を語った。アドニスは頭を抱えたため、レオポルトはゆっくりとした口調で説明を始めた。
「黙っていて悪かった。ルゼリア側に、ティトーにとって姉と兄が一人ずついる。俺にとっては妹と、もう一人の弟だ。……ネリネ歴941年、今から13年前。連合王国が解体されてすぐに、母の妊娠が発覚したらしくてな。
「おねえちゃんと、もう一人のおにいちゃん!」
「俺も、一度しか会ったことはない。故に、妹弟という認識はない」
「レオ……」
すると、アドニスは二つの情報をティトーへ聞かせるように話し出した。
「姉の名をミリティア。ミリティアは、魔力が0であったが故に、剣に目覚めて今は騎士団に入ったそうですよ。今はまだ12歳だというのに。それから、弟のトゥルク、君にとってのもう一人の兄ですが……生まれつき病弱であるが故、ほとんど寝たきりなのです。生まれてからずっと、離宮で過ごしているそうで、王位継承権は無いようなものです」
王位継承権と聞き、レオポルトは自虐的な笑みを浮かべるとその言葉を吐き捨てた。
「こんな俺に、何度も継承権復帰の話が来たくらいだ。即答で断ったがな」
「レオ……。あまり自虐的になるな。ティトーを見ろ」
しかしティトーは俯くと、アルブレヒトの服をしっかりと掴みなおした。
「魔力がないと、病弱だと、継承権はもらえないの?」
心配をよそに、ティトーはまじめな質問を返した。
「ない訳ではないが、あくまで二の次だ。魔法特化の国でもあるからな。二人とも、瑠竜血値は低くはなかったという。だから、実質的にティトーが第一位に上り詰める可能性が高い。ティトーの魔力の高さは折り紙付きだ。ただ、ルゼリアでは女性の方が、王位継承権は高くなる。そこで紛争が起きる可能性があるんだ。ミリティア派と、ティトー派さ」
「ッ……! 僕、王様になんてなりたくない!お兄ちゃんとアルとマリアおねえさんと、セシュールにいたい」
「ティトー……」
ふむ。と唸り出したアドニスを尻目に、ティトーは寂しさで我慢できないと言わんばかりに目を潤ませた。
「でしたら、単なる巫女ではなく、大巫女になればよろしいのでは」
「大巫女に? どうして?」
「巫女には、ルゼリア王族と変らぬ地位が備わります。たとえ親族でないとしても、それは揺るがないのですよ。そして、大巫女だった場合その地位は」
「王様と同じ地位…………」
アドニスは頷くと、ティトーへ手を差し出した。ティトーはアルブレヒトの足にしがみつくと、その圧に恐れおののいた。
「そうです、その地位を利用して、籍を外すことなく王位継承権を放棄すればいい。そうすれば、誰も逆らうことが出来ませんし、お兄さんたちと一緒に居られますよ」
「おい、アドニス」
「レオポルト・アンリ。これはティトーさんが大巫女を継承し、成人後に決めることです。ですが、そうすれば共に居られる上に、巫女がセシュールへ移ります。これがどういうことか、わかりますか」
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