④-11 バルカローラ③
「る、……なに?」
「アンリ」
「いや、黙っていたところで」
「?」
ティトーは首をかしげているが、すぐに思い当たったように話した。風が騒めき、再び魔物の気配を感じさせる程のエーテルの不安定さを感じさせる。
「もしかして、
「! ティトーは知っているのか」
「聞いただけです。僕はまだ計測していなくて。いつかしなきゃいけないっていう話は、何度か」
「そうだな。計測には、教会の司祭クラス以上が必要なんだ」
「僕も、計測するんですか」
ティトーは不安そうに呟きながら、再び歩み出した。そんな様子に、アンリは言葉を選んで中々言い出せずにいた。そんなアンリを横目に、グリットが声を掛ける。
「ティトー。皆そうそう計測するもんじゃないんだ。俺も測ったことは無い。ティトーが計測されるときは、俺も計測されようか」
「そうなんだ。一緒に測ろうね!」
「ああ。アンリも、もう一度計測してもらったらいいさ」
「僕は0だった。そうそう揺らぐものじゃない」
「お兄様……」
「アンリ、何だって間違いはある。計測方法だって、よく分からないというじゃないか」
「敵だ。気付いているだろう」
「ふえええ!?」
「ティトー、後ろへ。アル、ティトーを」
アンリは剣をすでに抜いている。敵は、熊だった。
「だめ!」
ティトーは熊の前に立ちはだかると、すぐに両手を掲げた。
「ばか! そいつは野生の熊だ! 魔物じゃあない!」
「で、でも!」
「いけない、ティトー!」
熊が手を振り上げた瞬間、アンリは熊の懐まで間合いを詰め、腹を蹴り上げた。熊はそのまま後退すると、睨みを利かせて激しく咆哮した。
「睨め、アル! あいつは弱い」
アンリの言葉に、グリットは名前を呼び間違えられたことを指摘する余裕などなかった。すぐに睨みを利かせる。
「ティトー、目線を外しているか」
「ははははずしてる」
「そのまま、動かすな。熊を見るなよ」
「待って、斬っちゃヤダ!」
ティトーが熊を見上げると、グリットが後ろへ更にティトーを押した。それでも、ティトーは怯むことなく
「熊さんが満足するものを、僕らは持っていません! 食べ物もないんです。僕らを食べて、討伐されて、他の熊さんが討伐されたいですか! パンの一切れだって、僕らは持ってないんです!」
ティトーは尚も続ける。
「食べたくて来たんじゃないですよね! びっくりしたから、来てるんですよね! だって、狩りの態勢じゃないもの!」
ティトーの呼びかけに、グリットは目線をティトーへ移した。
少年の煌めきは金色に染まり、瞳が呼応する。
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