第2章1話 南部に到着 驚くべき光景
師団集合会議が終了した日の翌日、スタークとソフィアが守護する南部から悠宛てに応援要請が届いた。
「第3と第4ってスタークとソフィアですよね?具体的な内容はありましたか?」
「いや、具体的な内容はなく、『早めに頼む。』とだけだったそうだ。」
「そうですか。恐らくですけど、魔物関連じゃなさそうですね。」
「だろうな。魔物関連だったらスタークたちでも問題なく対処できるだろうし、悠を呼ぶにしてももう少し後だろうからな。このタイミングで悠を呼んだってことは十中八九・・・。」
「手が早いというかなんというか。はぁ~わかりました。明日の朝には出発します。スタークたちにはこちらから連絡します。」
「あぁ、すまんが頼んだぞ。」
「かしこまりました。」
悠は総理官邸を後にし、第1の基地へと帰っていった。
「師団長、お帰りなさい。」
彩音が悠を出迎えた。
「あぁ、ただいま。早速で悪いが寧々に通信をつないで涼介兄がいるか聞いてくれないか?」
「?わかりました。」
彩音は第2にいる寧々に通信を繋いだ。
「はい、こちら第2師団綾辻です。」
「寧々、私彩音よ。氷室師団長はいるかしら。」
「あら、彩音。師団長ならいるわよ。多分訓練場にいると思うけど、なに急用?」
悠は彩音と通信をかわり
「寧々、俺だ。出来れば急ぎで頼む。」
「!悠師団長。はいわかりました。少々お待ちください。」
通信を一度切り、寧々は氷室を呼びに行った。しばらくすると、第2から折り返しの通信がかかってきた。
「いや~悪いな悠、トレーニング後でシャワー浴びてて遅くなった。」
「マイペースですみません。」
寧々が氷室の後ろから申し訳なさそうに謝ってきた。
「大丈夫、こっちも急に呼び出してごめんね。早速本題なんだけど。今日、総理のところに行ってきたんだけど。」
「あぁ、梅谷さんのところか。」
「そう、そこで聞いたんだけど俺宛にスタークのところから応援要請があった。」
「!スタークのところから ?またなんで?」
氷室は驚いた様子で聞き返した。
「具体的な内容がなくてとにかく早めに来てってことだった。まぁ、大方の予想はついてるけど。だから、少しの間涼介兄に東部を任せたい。」
「それはいいが、1人でいくのか?」
「いや、彩音も連れていくつもり。本当は新田隊も連れていくつもりだったけど、艮の件もあったからおいていくことにしたよ。こき使ってやってくれ。」
「わかった。東部は任せな。」
「ありがとう、お願いね。」
悠は、通信を切った。
「南部で何があったんでしょうね?」
「このタイミングで俺を指名してきたってことは、十中八九魔物関連じゃなくて俺関連だろうな。」
「それってまさか・・・。」
「まぁ、憶測だけどな。彩音は全師団に応援要請のことと俺が行くことを通達しといて。俺は、いつもの訓練場に行ってくるから。」
「かしこまりました。」
彩音が全師団員に通達を送ってから約2時間後、パトロールに出ていた新田隊が帰ってきた。
「あの通達は本当なのか?彩音。」
「おかえりなさい。えぇ、本当よ。多分明日の朝には出発すると思うわ。」
「師団長は今どこに?」
「いつもの地下訓練場。2時間前に入ったきり出てきてないからまだいると思うわよ。なにか用事があるの?用事があるなら呼んでみるけど。」
「いや、師団長に俺らもそっちに行ってもいいか聞いてもらってもいいか?」
「え?まぁ~いいけど。ちょっと待って。」
彩音は悠のいる訓練場と通信を繋いだ。
「師団長今大丈夫ですか?」
「?彩音か。どうした?なにか問題でもあった?それとも来客?」
「いえ、そうではなくてですね。荒太たちが帰ってきたのですが、そちらの訓練場に行ってもいいかと聞かれまして。」
「ここに?え~っと、うんいいよ。」
「わかりました。今から向かわせますね。」
「はいよ。」
彩音は通信を切った。
「いいってよ。訓練場のセキュリティーは解除しておくから行ってきなさい。あっ、訓練場に行く前に食堂によって弁当1個持って行って。」
「弁当をか?」
「師団長、朝に総理官邸に行って戻ってきてからそのまま訓練場に行ったから多分ご飯食べてないのよね。だから、無理やりにでも食べさせて。」
「了解。行こう。」
荒太たち新田隊は、一度食堂に寄ってから悠のいる地下訓練場へと向かった。
第1師団基地の地下には、悠が個人的に訓練するとき用の訓練場がある。その訓練場はその他の訓練場より頑丈にできており、武器による攻撃を何回ぶつけようがびくともしない。さらに、その訓練場は様々な天候や気温、環境を変化させることができ修行するのにはうってつけの場所となっている。しかし、その訓練場に入れるのは悠と悠が許可を出したものしか入ることはできない。
長いエレベーターを降り切り、目の前の扉を開けるとそこには、着物の上だけを脱ぎ大量の汗を流しながら刀を振っている悠がいた。
「おう来たな。それにしてもみんなしてどうした?」
「突然すみません。彩音からの通達を見まして、南部へ出発する前に稽古つけてくれませんか?」
「今からか?」
「はい。師団長が艮という魔物と戦ったデータを見まして、今の自分たちでは恐らく倒すのは困難だと思います。ですので、師団長がいなくても敵幹部から東部を守れるように少しでも強くなりたいのです。お願い致します。」
荒太たちは悠をまっすぐ見つめた。
「了解。俺も荒太たちが強くなるのは嬉しいし出発までは時間があるからいいよ。」
「ありがとうございます。」
「今すぐ始めるか?パトロールから帰ってきたばかりだろ。」
「弁当を持ってきたのでこれを食べてからにしましょう。食べてないんですよね。」
「あぁ。よくわかったな。」
「彩音が言ってましたよ。無理やりにでも食べさせてくれって。」
「彩音には頭が上がらないな。よし、みんなで食べようか。」
「はい。」
悠は一度訓練を終了し、荒太たちと一緒に弁当を食べた。
「そういえば、うちって極端に彼氏持ち彼女持ちが少ないですよね。」
弁当たべながら雑談をしていると、萩原が急に話を切り替えてきた。
「なに?それは、恋人のいない私たちに喧嘩を売ってるってことでいい?」
萩原の発言に新田隊の女性隊員の一人である
「そういうわけじゃなくて。他の師団には既婚者だったり恋人持ちがちょこちょこいるけどうちにはいないなぁって思っただけだよ。他意はない。」
「言い訳になってないぞ。
「え!誰ですか?」
「荒太。」
突然のカミングアウトに全員が食事の手を止め、一斉に荒太の方を向いた。
その後、隊員全員が荒太の肩を掴み質問攻めにあった。
「さてと、休憩はその辺にしてそろそろ始めるか。」
「はい。」
片づけを済ました隊員たちは、悠を囲うように配置についた。
「とりあえず、10分間俺と組手な。そのあと、個々にって感じの流れでいいか。」
「大丈夫です。それでお願いします。」
「了解。じゃあ、お前たちのタイミングで来い。」
「はい。・・・いくぞ!」
荒太の合図と同時に隊員が一斉に攻撃を仕掛けた。だが、悠は隊員たちの攻撃を全て捌ききり、10分間隊員たちが悠に攻撃を与えることはできなかった。
「今日も当たらなかった。」
「動きはだいぶ良くなっていたし、チームワークも流石の一言だな。前線で経験を積んだだけはある。」
「強くなってて嬉しかったぞ。」
悠はそういうと、笑みをこぼした。
「ありがとうございます。」
「それじゃあ、1人ずつさっきの組手を踏まえてアドバイスしていくぞ。ますは、荒太。」
悠はそのあと、新田隊の隊員1人1人に細かな反省点やアドバイスを行った。
「とまぁ、こんな感じかな。」
「ありがとうございます。」
「さっきも言ったけど、動きはよくなってる。あれだけ動けるなら大丈夫だろう。荒太。」
悠は荒太にあるものを投げて渡した。
「なんですか?これ?」
「この部屋のスペアキー。今の位の実力があれば大丈夫だ。まぁ同時に宿題をこなしてもらうけど。」
「宿題?」
悠は、壁にあるパネルを操作しあるボタンを押した。すると、新田隊の隊員たちは両ひざをつき、荒太は片膝をついた。
「こ・・れ・は・・?」
「今、この部屋の重力は2倍になっている。簡単に動き回れる重さじゃないよね。」
悠は重力増加をといた。
「体感してもらった通り、この部屋は様々な環境を再現できる。そこで宿題。荒太たちには俺が南部に行って帰ってくる間に1.2いや1.3倍の重力下でも普通に動けるようになっていて欲しい。それができるようになったら荒太たちのレベルも格段に上がるはずだ。出来るか?」
「もちろんです。その宿題、完璧にこなして見せます。」
隊員たちは迷うことなく即答した。
「そうか。じゃあ、この部屋を使うにあたって俺との約束が1個ある。それは、絶対に無茶な設定をしないこと。この部屋で体を壊して通常業務ができなくなったら元も子もないからな。守れるな。」
「はい。」
「よろしい。じゃあおいで。パネルの使い方を教えてあげる。」
悠は荒太たちに部屋の使い方を一通り教えその場を後にした。そして、そのまま彩音のもとへと向かった。
「すまない、待たせたな。」
「いえ、大丈夫です。一応、南部に通信をつなげようとしたのですが繋がりませんでした。」
「やっぱりか、しょうがない応援要請を寄こすくらいだ。そこまで手が回らないんだろう。」
「出発だが、朝一の飛行機で出発する。大丈夫か?」
「はい、準備は済んでいます。」
「よし、向こうに着いたらとりあえず、第3師団の基地へと向かう。そこで話が聞けるだろう。」
「質問はあるか?」
「いえ、ありません。」
「じゃあ、その予定で。お休み。」
「はい、お休みなさい。」
翌朝ー-
悠と彩音は飛行機に乗り、南部へと向かった。
約2時間のフライト後、車で南部の第3師団の基地がある地域に着いた。そこには多くの人だかりができていた。
「なんだ?」
「何かのデモ活動のようですが。」
デモ活動をしている人の手にあるボードを見ると『子供の師団長反対』・『すぐにやめろ』の文字が書かれていた。
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