第31話 詠唱魔法
私たちのことなんて眼中にないなら、この時間を全部使ってあいつを後悔させるだけ。
その場から動かない【千呪の黒龍】を睨みつけているレオが、【燎原之炎】を剣にチャージしている。
それを横目に、私も詠い始める。こいつが相手になるってわかってたら、最初から使いたかったけど、気が動転していてそんなことも考えられなかった。魔力の消費量が半端じゃない、私のとっておき。
「あいつを倒して、私は……! 行くよ、詠唱魔法……」
【酒吞童子】を倒した後、私の魔晶石には新たなスキルが浮かんでいた。
《魔素量》:A
《魔法》:星・炎・雷(全)
【轟炎】:炎属性の魔法に微補正。込められた魔力が多いほど、その炎は世界に轟く。
【轟雷】:雷属性の魔法に微補正。込められた魔力が多いほど、その雷は世界に轟く。
"【魔力凝縮】:魔力操作に補正。魔力を集中し、より効果を高める。使用する魔法に微補正。
【一点集中】:魔力を集中し威力を高める。使用する魔法に微補正。
【限界突破】:生命の限界が近づくほど全能力が向上。意識的に発動する場合、あらゆる能力を瞬間的に向上させるが、自身の魔力・体力・気力の消費量が増加する。
【魔の祝福】:魔法を用いた行動に微補正。認識しているあらゆる魔法属性を使用可能。
【月光一閃】:武器に星属性の魔力を纏い、光速の斬撃を放つ。魔物へ攻撃するとき超高補正。
【星光の煌き】:星属性の魔力を用いた行動に微補正。
【流星姫】:自身の魔力を消費して、星の光を纏う。身体能力、速度に超高補正。
A級になったことで【流星姫】が現れてから、すぐにまた他のスキルが増えるとは思わなかった。A級探索者が持っているスキルの数が、平均で三個っていうことに比べたら、私のスキルの数はかなり多いほうだけど……。
こんなに早く増えるなんて今まではなかった。ここ最近の戦闘の大変さが影響しているのかもしれない。
新しく現れたのは、詠唱魔法。それは、普通の魔法とはかなり異なる魔法。
通常、魔法には決まった形はなく、使用者の創造力によって魔力が形となり、魔法になる。
でも、詠唱魔法はそうではない。詠唱をすることで、一定の決まった効果の魔法を放つ。流石に魔力によって威力や効果・範囲なんかは変わるけど、効果自体が変わることは少ない。
今のところ、A級以上の探索者にしか確認されておらず、その原因は魔力の消費量ではないかと言われている。希少性と使用にかかる時間に見合った効果を持ち、確認されているすべての詠唱魔法が、たいていのスキルよりも強力な効果を持っているらしい。
「【闇に奪われ、夜に囚われ、断絶された我が人生】」
詠唱魔法は、本人の過去から大きく影響を受ける。強い感情によって発現するものらしい。だから、これは私自身。
「【過ぎ行く季節、流れ行く時間、独り打たれた涙雨】」
身体中の魔力が励起する。暗い夜、寂しい夜、どこにもいない家族へ思いを馳せる。
「【輝くべき光はどこにもなく、欠けた月こそ我が太陽】」
暁を超える術はなく、極稀に、そしてダンジョンの中でしかその陽を浴びることは敵わなかった。
「【如何なる闇にも敗れぬ星よ】」
星色の魔力が、私の周囲で暴れ出す。まだ発動前にもかかわらず、全魔力の二割くらいが持っていかれていることに、笑ってしまいそうになる。発動したらどうなるんだろう。
「【あらゆる影を消し去り、あらゆる夜を乗り越え、絶望の
体が熱い。あまりにも暴れまわる魔力の制御が難しく、頭がパンクしそうになる。また二割持っていかれた。身体中が光り輝き、全身がみなぎる。
「【明けない夜が明けるまで、希望の
また、二割。あまりの威力に驚いて、空まで届きそうな銀炎を剣に纏いながら口をぽかんと開けているレオを見て、思わず笑いがこぼれる。そんな場合じゃないのに。
私もこんなに大変な魔法とは思っていなかった。起動するだけで魔力の六割を使う魔法。これで、私の夜を終わらせよう。
「――――――――【
月の光で隠されていた星々の光が、私に集まってくる。私を中心に光が波紋のように広がっていく。あまりの魔力の強さに大地が震え、空の闇は晴れ、夜明け前のような明るさになっている。
身体中を全能感が駆け巡り、自分がかつてない絶好調になっているのを感じる。
バチバチ、バチバチ、と煩いほど、強く強く魔力が溢れ出す。
「すごい……。それに未来、髪と目が……」
「ほんとだ」
魔力制御のコツを何とか掴み、自分の髪を見ると、元の銀髪が星のような色になっている。一色ではなく青と白を基調に、黄、橙、赤……様々な光が髪にちりばめられたかのように光り輝く。
「準備完了。何時でも行けるよ」
月すら霞むほどの星光で、明日の朝陽を迎えに行こう。
【
そして、
——――——焦がれた光が強いほど、この魔法は強くなる。
——―――――
大変お待たせいたしました。
ご質問頂いた【孤軍奮闘】やスキルについての詳細を近況ノート書いておきました!
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