第13話 【 涙 】



どんな父親であっても、紫苑にとっては…



“ 親に変わりない。”



(息絶えた父親の方をもう一度見る)


(桜花)「 …。」



「 ( この子にはもう…… ) 」





(大牙丸)「どうするんだ? 桜花。」


(桜)

「 ─────・・あなた…っ 」




(桜花)「 …桜、もういい。」


(刀)

カシャン…。(鞘に収める)



(高王)「 …!、 ─────・・ったく、分かっちゃいたが、うちの総大将ときたら..。どーすんだよ紫苑は、そいつはもうこっちの手に落ちりゃ、身分なんざ いずれ朝廷に剥奪されちまう身だろ、普通に故郷にいれる居場所すらねぇだろうに。……、」


(大牙丸)「 戻ってもあれだけの兵を俺達が全員殺ったんだ、一人でも兵力を失うことはそれだけ国の死活問題にも関わる。この結果を朝廷が黙っていると思うか?」


(高王)「 んなこたぁ、最初から分かってるよ。」



..チャキッ・・!! (槍)



(高王)

「…チッ、」


「( ひと思いか…。) 」


“ ただの討伐と違って国絡みが関われば殺す必要の無い相手まで最後まで殺らなきゃならねぇのが恨みつらみの血生臭せぇ戦争の世だ。”



“ …けど、あいつ(桜花)だけは違う。”



刀を鞘に収めたということは、死罪を咎めないという事だった。




「 ………… 」


“ 私には、責任がある 。”



「 紫苑、」


(桜花)

「 お前に言っておかなければならない。」



(紫苑)「・・・はい … 」




──────…、


桜花は同じ目線にしゃがみ、紫苑の涙の頬に優しく手をやると真っ直ぐ彼に向けて偽りの無い言葉を放った。


(桜花)

「 ……目の前で そなたの父親を斬ったこと… 許してくれ。」








(紫苑)「!」



(桜)「 …あなたは、自分の命を粗末にする必要なんてないの。」



“ 罪の重さも償いのやり方は人それぞれ ”


絶望に生きるだけじゃなく、


その中でも


自分のこれからの幸せを生きてく為の道を見つけ、


あなた自身の手で作ってゆくのも



(桜)「 また 大事なことなの。」



“ 今はまだ罪の苦しさから遠い道のりになってしまうかもしれないけれど “



いつかこれで良かったのだと


自分自身を許してあげることが出来たら、


自然と人生は人を幸せへと導き


“ またそこから本当のあなたの生き方が始まっていくのよ ”



これからは



(桜)「 誰もあなたをもう、一人にしないわ 」



私達がずっと、側にいてあげるから…



“ いつか、本当の幸せを見つけなさい”




“ …紫苑、私達の子になるか? ”



(桜花)「 お前はここに居て構わない。自分で決め、これから先、どう生きていくのが本当に自分にとって何が一番幸せなのか、私達の元で少しでも道を選ばせたい。」



(紫苑)

「 生きても…いい・・・」



“ 自分自身の為にも ”




「 “ 風馬 ” 」


(桜花)「 ……純粋な思いやりを持つその馬は、何人たりとも捕らわれない風のように遥か大地を駆け抜け、その足はどんな逆境をも切り抜けられるまさに神の起こす風と言えよう」



“ この名を今から授ける。“



(桜花)「 とてもお前に似合う名だ。風馬 」



そして桜が優しく触れると、全てを包み込むように母親の愛情を示してくれた。


風馬の本当の母もまた、この世にはいなかったのだ…。



目からあつい涙が溢れ落ち

強く抱きしめられた。

その温もりが彼の心の心境に一番大きな影響を与えたのだ。









─────…やがて、


少年は十五、六の成人を迎えた頃、風太が生まれた。




“ ありがとう…。”


(桜)

風馬・・風太と勇真を、お願いね…。




“ 母上っ…!!!”



(桜花)

「 “ お前がいてくれて助かる… ” 」


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