第11話 【 あなたがいてくれるだけで 】




「 … 」

(静かに開けられる障子)




(勇真)

「 …、…─────・・。」



朝の冷たい空気が外から流れこんだと同時に

風馬が部屋から出て行った気配がした。





─── トン..。



(風太)

「 …ん… ・・───…。う…ん、……風馬にいちゃん?」



「 あに・・・ …!?」


(勇真)

「 ───・・、 スゥ..。」



一緒になって寝ていた勇真と仲良く毛布がかけられているのに気付いた風太は気になって後を追うように起きてしまった。



「ガタガタ…ッ ガタ!」


(風太)

「 風馬にいちゃんっ 」






(風馬)

「 …? 風太、おはよう。まだ早いのにこんな時間に起きてこれたのか?」



(風太)「 うん、勇真は寝てる。……・・、・・・.. 、」



「クシュン! …。」



(風馬)

「 まだ寝てていい。勇真ももうすぐ時間まで起こそうって思ってたから 」



(風太)「 ううん、ぼくももうお兄ちゃんだから。これからは兄上といっしょに起きて勇真をおこさなきゃ。」



「 あさのおしごと、やるの!」


(風馬)

「 ──風太は偉いな。それじゃあ、俺は今から火を起こしてくるから、風太は勇真が起きたら寝床を片付けて廊下の雑巾掛けをしてくれ。」



「 勇真と二人でできるな?」



(風太)「 うんっ、 大丈夫。勇真起こしてくる!」





(風馬)「 ────… 」



“ あの子、お兄ちゃんになれたことが凄く嬉しいみたいなの ”


“ きっと、自分がそうだったから。”


(桜)

「 あなたが あの子の事よくおしめや、あやして見てくれていたように勇真のお世話も、あぁやって面倒良く見てあげようとするところは自然と風馬に似たのかしらね? 」



(風馬)「 風太が?」




“ ははうえ、”



(風太) “ ゆうま、ないてない? ”



(桜)

「 えぇ、ずっと赤ちゃんだった時、私の背中におぶさっていた間あの子、いつも静かに寝ていたの。でも風馬が私の代わりにおんぶしてあげようとすると… 」



「 ににっ。」


(風馬)「ん?」



(勇真)

「 にゆ、まうあっ。… に、にーにっ!」


(桜)「 起きたの、ゆうちゃん? ──… さっき、母乳も飲んだばかりだからこれはおしめじゃないみたいね、ふふっ。」


(風馬)

「 ………じゃあ..、勇真。ほらっ!」



「きゃうっ! ! エヘヘヘッ!」



風馬が広い空へ向かって高い高いをしだすと勇真は手足をばたつかせて喜んだ。


(桜)

「 ────不思議ね..。風馬がいてくれるだけで風太も勇真もどんなに泣いていても、二人ともすぐに泣き止んで笑って喜んでくれるの。良かったわね、勇真。」



(勇真) ”にーぃ!“

(風車を持って喜ぶ風太と重なる)



「 ………………。」



“ そう言えば、風太にもそんなことが・・。 ”




“ あにうえ ”


(クイクイと服を引っ張られる)

(風馬)「 ──風太、? 」



(風太)

「 ねぇ、あそぼ。 」



「 あのね、かたぐるま。きにのぼりたい!…それから……あのね・・ 」



(勇真)「 ? あっ。あう.. あっ、…ふうあっ。」(手を伸ばす)


(桜)「 ──…ゆうちゃんほら。てんとう虫さん、こんにちはって。」



(勇真)「?」



(風馬)

「 風太、勇真お前と遊びたがってるぞ。」

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