第3話 【 母との死別 】
“ 風馬…。”
(風馬)
「 ! … 母上─────────っっ!!!」
───… 激しい雨に打ちのめされる目の前には、これまでに無い悲しい現実が、風馬の胸を痛く突き付けた。
決して人前で涙を流がしたことも無かった彼がこの時、悲しみに打ちひしがれ風太と勇真、まだ幼い二人の弟達の事が雨の悲しみと共に脳裏をかすめた。
(勇真の泣き声)
「 ───── …!!!」
(風馬)「 ! 」
(幼子の声に全員が視線を向ける)
(三月)
「 ………、風太..。 」
(桜花)「 何故っ… ここにいる 」
ピチャ…。
(風太)
「 ……… 」
漠然と状況が飲み込めていない冷たい雨に打たれ、ずぶ濡れになりながら佇んでいた。
「 ────────!! ..ッ、…! まうっ 」
「 まうぁっ!!!」
二歳の勇真は雨から体を守るように笠や蓑を被り手を繋がれていたが外の慌ただしい皆の出て行く様子がおかしかったのか突然泣き出し、寝たきりで不安に煽られた風太は病んでいた体を無理して勇真を連れてみんなの後を追ってきたのだ。
(祐之介)
「 …! 詩織、勇真は 」
(すぐに駆け寄った詩織)「 ………、泣いてるけど勇真は大丈夫、
ザァァァァァァァァァァア・・・・・。
(雨)
(風太)
「 …ッ! ひっぐ・・、おかぁ・・さ… 」
心細さに体力をひどく消耗し母を懸命に呼ぶ声は雨にかき消されここにいる兄達の元へたどり着いたのだろう。
「 ───… ふうまにぃちゃん・・。」
(風太)
「 ゆうまがなきやまない…。ちちうえ、みんなをさがして、おかあさんいないと… ゆうま… まだ赤ちゃんだから… 」
「 どうしていないの・・。ははうえ ずっとよんでも… … っ…!! 」
(白老)「 …! いかん、また発作が…っ まだ起きていい状態ではない 」
(風馬)「 ! 風太っ!! 」
” 勇真… ! ! “
(風太)
─────────────・・。
それからまる七日間、風太は力の発作が回復するまでしばらく薬で安静に眠らされていた。
その間、母上の葬儀は・・
(一族総勢で行う)
(桜花)
“ 症状がおさまったら、風太にはまたゆっくり話す…。”
“ 勇真の事もある、それまで二人から目を離さないでやってくれ風馬。”
(風馬)「 はい、父上 」
「 …、失礼します。」
……………、
(部屋を退室する)
数日後。
風太は父上から母上の死去を告げられた。
(雀)
「 チュンチュン ! 」
「 チュン…ッ、
……チチ!」
(縁側に座る風太) ───── . .
(風馬)
「 ……。」
(トキ婆)
「 ほぅれ。よしよし、おぉ… 勇真はいい子じゃなぁ。そぉれ、もう少しじゃよ。」
(勇真)「 ばぁ、ば… ばぁば。」(歩きの練習)
神水の効力が幸いし症状は回復しても
精神的に心を閉ざした瞳は虚ろに全くそこから動こうとはしなかった。
(風太)「 ……。」
(風馬)「 風太・・ 」
(勇真)
「 ばぁ、ば?…ふぅに?」
(トキ婆)
「 …風坊、元気をお出し。そんな所にいてないで寒いだろう? こっちにおいで 」
(風太)「 ………。」
(無反応)
(風馬)「 ──.. 風太、ほら。」
(風太を抱っこし日向に連れ出す)
(風太)「 ……。」
(風馬)「 あまり思い詰めると体にさわるぞ。 お前は無理できない体調だったんだから、…勇真はもうちゃんと笑ってるぞ?なぁ。」
(勇真)「 にぃ… にぃ 」
(両手を伸ばす)
「 ばぁっ!とき、ば。にぃ、ば…?」
(トキ婆)「 そうそう、トキばぁばじゃよ。言葉もだいぶ言えるようになったんだねぇ。桜がいつもここで風坊のこと勇真に言い聞かせていたから… もうお兄ちゃんだからねぇ…って」
(桜)
“ 風太ももうお兄ちゃんになったのね…。 ”
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