第2話 【 命の危機 】



二年前、


風太は母さんが死んだのは自分のせいだと酷く落ち込んだ時期があった。









───────────────────────… 、

(雷雲)



「ゴロ.. 」


……ゴロゴ…。









……………!

(急いで屋敷に戻る一人の足音)




(???)

「 三月! 」



風馬ふうま】(風太の兄)。



(風馬)「 詩織から聞いた、風太は. .っ 様子は今どうなってる 」




三月みつき】。

(風馬と同世代の一族の若者)



(三月)「 風馬、 ... 落ち着いて聞いてくれ。風太は…… まだ 症状が全く治まっていない。」


「 今しがた白老様が状態を見てくれているが具体的な処置はまだはっきりと分からないそうだ。」



(風馬)「 処置が、分からない・・? 」



“ 詩織は事故で風太の力が突然暴走して里の子供達に怪我をさせたと聞いた ”



(三月)

「 手立てが見つかるまでは、力の暴走状態が危険に及ぶ。念のため部屋には限られた人数で俺達は外で控えるよう皆言われてる。」



「 こんなこと初めてだからな 」




(風馬)

「 ……、 ( 風太…。 ) 」








天暘てんようの国、ヤマト。



────… それは、

遥か西の渓谷を越えた秘境の険しい山中に



彼らは【風人ふうにん】といわれた里集落で先祖代々 マホロバの地に暮らす民と共に 調和を守り、狩りに秀でた腕と風の力を自在に操る神の血を引いていた。



一族は 大気の変動を動かす神の力、【風術】といわれる神通力を使い、天災や国の争いを治め平穏豊かな土地を築き古来より人々を守ってきたのだった。



しかし、彼らに流れるその血は今、

ある幼い少年の身に危険が及んでいた。






(里長の屋敷)



… キシ..・・・

..ッ!




「バキィィィィィンッ!!!!」




「!?」



「 当主様の結果が!?」




(3重結界が崩壊)


……………………………… 。


(当主)

「 下がれ!みなっ 」




ヒュウビュウ..ッ!


大気の天候が荒ぶる台風のうねりを響かせる風鳴り。




「カハッ..ッ!! あぁッ ………っ!..うぐッ!!」



(母親)「 風太っ!」



屋敷の大広間の中央に五つ歳と見られる幼い少年が仰向けに寝かせられていた。


突発的に激しい動悸と呼吸困難が起きるたび、体から膨大に放出される風力が渦を作り当主達は目を開けられないほど強烈な暴風に成すすべを遮られてしまった。




風太ふうた

「 …、……。」



(封印の施しをする男性)

「 まずい、さっきより強力な風圧で体力が衰弱してきている。」



「白老様っ」




白老はくろう】。

(先代おさに仕えていた一族の重鎮)



「 …、幼い成長期と共に蓄積された力の制御がもはや自分自身で抑えきれなくなっておる。」


(白老)

「 そのせいで心臓にもかなりの負担が、特別な医術の処方で煎じた薬をすぐに飲まさねば危険じゃ。」



【桜】(風太の母)

「 …!」


桜花おうか】。

(風人16代目里長・風太の父親)



(桜花)

「 ですが何故、風太にだけ突然このような症状が 」



体力が落ち内側から抑えきれなくなった風術は人の命まであやめるほどの暴走性もあった。










─── 屋敷の外 ───




(里の幼い子供達)

「 ふうた!」



「 ねぇ風太、急にどうしちゃったの? 」


「 ぼくたちもなかにいれてよ!」



(若い女性陣)「 だめよ! みんな 今は危険だから私達はここで待ってるの。………、」



中には怪我をした子までいた。



(心配で泣く優奈)

「 ッ!ねぇさま、ゆうなたちとあそんでたらふうた、きゅうにたおれちゃったの。」



(斗夜とうや)「 みんなしんぱいして、いそいでそばにかけよったら 」


(ケガをした霖之助りんのすけ)

「 そしたらとつぜん、風太のちからがぼくらにおそいかかったんだ 」



(悟)「 こわかった。けど、いっしょにもうあそべなくなるのはやだよぼく。」



(上の兄達)

「 ……。他に怪我してるやつはいないか? 」



(弟達)「 にいちゃん、風太、どうなっちゃうの? 」



(兄)「 今、当主様や白老様達が様子を見てくださってる。きっと風太もじきに元気に遊べるようになるさ、だからお前たちは心配するな。」



(優奈)

「よくなるよね?ジジさまたちがなおしてくれるもん…ぜったいに 」


(姉)

「 …そうね、突然こんなことになるなんて。きっと大丈夫だから優奈。」



周りの木々はおびただしく鋭い刃物のようなもので切り倒された傷跡が残っていた。





(白老)

「 ・・────恐らくこれは心技体、体が成長段階にある不安定な幼い時期にかかる術者にとって一つの病なのかも知れん 」


“ 特に風太は今までの歴代術者の中で一番濃い神の血を引いた分、まだ幼い体にはあまりにも負担が大きすぎるのじゃ。”


(白老)「 これが修練を多く積んだ熟練者ならば力の消化も上手く内側へ抑えられるのだが…それに至るまでにこの歳ではまだ早すぎる。」



(男性陣)

「 風太に… それほどまでの力がまだ小さなこの体の中にあるというのか。」



(男性陣)「 されど、このままでは打つ手も無しに 」


(白老)「 そうではない、神の力なら神水から煎じた薬を飲ませれば症状があるいは軽減できるやも知れん。」



(桜花)「 ですが、神水は里の掟で一族の女達以外は白翁山はくおうざんへの出入りは禁じられております。」



それに危険過ぎる…


” 龍神斎様の元へ行くには “



それを聞いた里の女達は危険をかえり見ず行かせて欲しいと二人の前で申し出を出すが、



(桜)「 … ! なりません。この達には皆、幼いきょうだいが、親のいない代わりに子供達を養ってあげている娘達ばかりです…… 」


「 この子の為とはいえ、どんな事があっても行かせられません。」



(女達)「 ですが、桜様を行かせるわけには…っ 」



(桜花)

「 白翁山はただの山ではない、霊験あらたかな神の神霊山に入山するという事は、神聖な神の領域を侵す行為と同じこと。」


「 掟には本来、女でならない理由にはそれだけ容易に人間は決して足を踏み入れてはならぬという危険も警告として先人が戒めに作ったと考えられている。」



(白老)「 . . それに少し気になることがある。ここ最近の地響で白翁山はいま、恐らく地下に眠る龍神斎様の活動が激しく動いておられるのやも知れぬ。」



(桜花)「 ……、」



“ 先日の大きな地震が地盤もかなりだが絶壁の多い高山ほどもろく緩んでいる ”



それを・・・




(風太)

「 ハッ..ハァ…・・ッ!、うっ! 」



(桜)「 ! 風太っ、.. たとえ 龍神斎様の怒りに触れてしまう事になっても、いま苦しんでるこの子の命をここで救えないのであれば、私達は一生 親などと、子供に言える資格はありません。………、」


「 あなたの意思に反くのは決して私の本心ではありません、ですが .. どうかお許しください。」



(女達)「 桜様… 」


(白老)

「 、何の事情も神とて見極めない訳でもない そう願うしか今はそなたの息子も桜の言う通り救えぬかも知れぬ。」



「 強張る握る手に嘘はつけないであろう、桜花。」



“ それが父親の本心というものなのじゃから。“



(桜花)

「 ……、」




“ 決断をしなければ “













(我が子を抱きしめる桜)



“ 風太の力の発作がおさまらないのです…。 ”



(桜)

“ すぐ楽になるからね・・・。”










そしてこの日に襲った当時の落石事故。






…ザアァァァァァァァァ────…ッ (雨)




天候による落雷で起きた不幸な事故だった。




(桜花)「 !! 桜…っ!!!」



「 桜様 ! ! 」




…パシャンッ。



(風馬)

「 ……、」



( 巨大な岩石の下敷きに巻き込まれた桜の死を見て頭が真っ白になる風馬 )



(桜花)

「 ..さ...っ ……! !

─────────・・・・、」



(一族の男性)

「 … 神水が入っている。それも無傷で.. 」


「 桜花様、」


(桜花)

「 ..神水は直接、神の許しを得て湧水から持ち出せるもの、………… 」











“ 事情があるとみた “



(龍神斎)


” 一刻も下山を急げ “


“ 里の者なら天候をよめよう “




(桜花)「 ! 」



“ 桜……… “



落ちてきた岩に巻き込まれ全身が強く打ちつけられていた。



お願い…


この神水だけは




“ 大丈夫、すぐに戻るから・・ ”



“ 何かあったら風太と勇真をお願いね ”



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