第4回 太平洋戦争の罠

 第2回でも書いたように、戦後、GHQにも罠を仕掛けられた日本ですが、戦前から既に罠にかかっていたとされる説があります。


 有名なのは、「ハル・ノート」。


 これは、アメリカの国務長官コーデル・ハルが日本側全権大使(野村吉三郎きちさぶろう来栖くるす三郎)に手交したノートで、日米関係が悪くなった時、戦争回避の妥結条件として、


・日本軍の中国および仏印(フランス領インドシナ)からの撤兵

・日独伊三国同盟の実質的廃棄

・汪兆銘政権(1940~1945年までの中華民国政府。実質的な日本の傀儡政権)の否認


 という条件が含まれており、これを日本の外務大臣の東郷茂徳しげのりが拒否したことが、言わば「最後通牒」だったと言われています。


 ちなみに、当時の日本でも「陸軍」より「海軍」の方が、アメリカを危惧している軍人が多く、アメリカに留学した経験がある、山本五十六いそろくは、早くから「アメリカと開戦しても勝てない」と言ってましたし、米内光政よないみつまさ、井上成美しげよしと共に「日独伊三国同盟」に反対してました。


 それ以前に、そもそもアメリカを始め、当時、ABCD包囲網(A=アメリカ、B=イギリス、C=中国、D=オランダ)というのがあり、それによって、日本を実質的に「締め上げて」いたのは事実です。


 現在と同じように、「石油」などの資源に乏しかった日本は、外国に頼らざるを得なかったのですが、この包囲網によって、徐々に苦しくなって、最終的にアメリカに喧嘩を吹っ掛ける形になりますが。


 一応、歴史をたどると、中国に対しては、当初は「不拡大方針」が取られていました。


 1931年(昭和6年)の満州事変以降、元々は中国の奥深くまで戦線を拡大するつもりはなかったらしいのですが、それが拡大して泥沼化し、やめられなくなったのが、ある意味、日本の悲劇であり、失策ですね。


 その戦争が終わってないのに、アメリカにも戦争を吹っ掛ける。


 そりゃ、勝てるわけない、というのが今、見るとわかるんですが、それは結果論的に現代から見てるからで、当時に生きていないので推測しかできませんが。


 あと、割と最近の説として、「アメリカはわざと日本を戦争に巻き込んだ」という説があります。


 これは、2001年の9.11テロの時に、アメリカ人が「真珠湾奇襲攻撃」を連想したことから、出てきた説とも言われています。


 太平洋戦争当時、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が、「事前察知をしながらそれをわざと放置した」というのがその説です。


 当時、アメリカにはモンロー主義に代表される孤立主義の伝統があり、他国の戦争に巻き込まれることを嫌う傾向がありました。


 これをうがった見方をすると、「アメリカは勝てる戦争しかやらない」になり、要は、アメリカとしては「戦争が終わる前にヨーロッパ戦線に参加して、漁夫の利を得たい」という計算があったとか。


 なので、強引に日本をけしかけて、戦争に持ち込めば、ヨーロッパにも参戦でき、ラッキーという話なのですが。


 いくらアメリカが強国で、裕福だったとはいえ、なかなかの暴論です。


 一種の賭けに近いですし、日本をナメすぎな気もしますが、それほど「有色人種を見下していた」とも言えるのです。


 コンプライアンスやヘイトなんて、まったくない当時、欧米人の大半が「アジア人を見下していた」のが事実としてあります。


 真実はわかりませんが、結果的にアメリカが一番得をしているのが、何とも言えず、悔しいですが、要は「日本人は純粋で騙されやすく、アメリカ人がしたたか」とも言えます。


 ちなみに、アメリカ人は「徹底的に戦略や戦術を練る」ことで知られており、日本軍の兵器や戦争を徹底的に研究してます。

 焼夷弾を日本本土に落とす時に、わざわざアメリカ本土に、日本そっくりの、瓦屋根の街並みのセットを造り、そこに爆弾を落として、どのくらい燃えるか、実験したそうです。


 日本人はなかなかそこまでやらないですね。


 日本人にも賢い軍人はたくさんいましたが、「根性で勝てる」と思っていた軍人がいたのも事実。


 その辺り、日本人はアメリカ人からも学ぶことが多い気がします。

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