第3回 日露戦争の凄さ

 3回目は、日露戦争について。


 2024年現在、ロシアがウクライナに侵攻して未だに凄惨な戦争が続いています。そして、私が北海道出身で、ロシア対策が常に求められてきた地域で育ったので、ロシアの怖さみたいのを肌で感じています。


 北海道では、小中学校の授業で北方領土のことを勉強するからです。


 まあ、それはともかく、日露戦争。


 有名な司馬遼太郎の著書「坂の上の雲」でも描かれていたように、当時の日本はロクな産業も持たない、弱小国でした。


 せいぜい生糸の輸出をしていた程度。(他にもあるかもしれませんが、詳しくは知りません)


 1900年当時におけるイギリスの工業力を100とすると、アメリカは127、ドイツは71、ロシアは47、日本は13だったと言われています。


 戦争の帰結が経済力、特に工業力に大きく左右されることは、よく言われますが、簡単に言うとロシアという国は、日本の4倍の工業力を持つ国だったのです。


 当然、当時の日本の閣僚の中でも、「ロシアと戦って勝てるわけがない」と伊藤博文、陸奥宗光、井上かおるなどは主張していました。


 もっとも、日本がロシアとの戦争を想定した時、必ずしもロシア全部を対象にするものでもなかったのも事実です。


 今と同様に、西はヨーロッパから東はアジアまで広大な国土を領するロシアは、所有する軍事能力を一点に集中することはできないのです。


 これは現在続けられている、ウクライナとの戦争を見ても明らかですが、ヨーロッパの戦線であるウクライナに、極東のシベリア辺りから兵士を送るだけで大変なのです。


 つまり、ロシアとの戦争において考慮すべきは、極東というロシアの東端にかの国が動員しうる軍事能力が、どれくらいか算定すべきなのです。


 その観点において数字上の戦力という視点でみると、実は日露の差はそれほどまでに大きくはなく、開戦前の陸軍兵力は日本16万に対し、ロシアは10万超だったし、海軍に関しても艦船数、トン数で比較しても遜色はなかったのです。


 もっとも、これは、開戦時という「点」で見た場合の話ですが。開戦時における戦時動員計画兵力が日本54万に対して、ロシア207万、講話前の実際の動員兵力が日本87万に対し、ロシア100万だったことを考慮すれば、戦争遂行という「線」で見た場合の日露の格差はやはり歴然でした。


 それまで極東の小国に過ぎず、人口も現在と比べれば半分にも満たない、約4600万人程度しかいなかった1900年代初頭の日本。


 世界では、誰も日本が勝つなどと思っていなかったのです。


 結果は、長いので省略しますが、もちろん日本が苦労の上に、勝ちました。正確には「勝った」というより、「持ち堪えた」に近い状態で、ボロボロになりながら講和に持ち込んだが正しい気がしますが。


 それでも旅順攻囲戦、奉天会戦、日本海海戦などで快勝した日本に対し、当時、ヨーロッパで大国であるロシアに苦しめられていた国々の民衆は大喜び。


 有名なのが、トルコとフィンランド。

 地政学的に、この両国はロシアと近いので、必然的に大国のロシアに長年、脅かされてきたのです。


 なので、そんな憎い敵である、ロシアに勝った日本に喝采を送り、フィンランドでは東郷平八郎にちなんだ「東郷ビール」まで出てくる有り様。


 現在でもトルコとフィンランドは親日国と言われていますが、この影響もあると思います。


 現在、ウクライナに侵攻したロシアに対し、何もできず、ただウクライナに金だけを送っている、情けない日本政府には考えられないと思いますが、当時は本当に凄かったのです。


 もっとも、これには「ロシア脅威論」というのがあり、緩衝地帯である朝鮮半島をロシアに取られそうだから、現代風に言うと、


「ヤバい。ロシアが朝鮮半島を取ったら、今度はこっちがやられる」


 と、当時の日本の閣僚は思ったのでしょう。


 今と違い、当時は「帝国主義」が蔓延する「力と力」の時代なので、油断すると国が攻められ、滅ぼされるという危惧もあったのです。


 そして、なんだかんだ言っても、戦争を左右するのは、国力と兵力、そして士気です。日本の士気は相当、高かったようです。


 今こそ日露戦争が見直される時だと思うのですが、個人的に思うのは「日本人は歴史から学ばないなあ」ということ。


 特に国会議員が「歴史を知らなさすぎる」。


 そういう連中が、過去と同じ過ちを犯しているのを見ると、バカバカしくなりますね。


 「愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ」


 これは、ドイツの有名な宰相、ビスマルクの言葉ですが、今の日本人の多くは歴史から学ぼうとしません。


 それでは、発展はないのです。

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