ニョロスキーの城

社員の輝き(魔法アイテム発動光)

 森はけっこうジャングル。

 暗いし木や葉や枝で身のまわり5〜10メートルぐらいしか見えない。

「ギムさん、バルドフントってどんなモンスターなの?」

「とにかく足が速いです。犬みたいな顔で」

「へーあんなかんじっすか?」

 周防くんが指さすところに、小さい人型モンスターがいた。

「バルドフントです! うごきに注意して!」

「おけまる。俺がくずすから周防くんよろ」

「おまかせ!」

 俺が盾をかまえて体あたりし、ヨロついたところを周防くんが矢をたたき込んで瞬殺。

「わあ、お二人ツヨッツヨですね!」

 鬼城さんが歓声をあげる。

「まねー」

「それほどでもありますけど」

 俺と周防くんは肩をくんで得意顔。

 女子にほめられたのもうれしい。

 アップルさんあんまりほめてくれないんだよね。

「しかし大きな城だね。夜だからわからないけど、日中ならこの国のほとんどの場所から見えるんじゃない?」

「ええ、本来、王が国をすべる場所ですから」

「ラスボスデーモンキングってどこにいるの? ここじゃなくて?」

「運河の果て、湖にうかぶ小島です。門番としてリントヴルムがいます。ここには今ニョロスキーが住んでて、兵はみな逃げました」

「ニョロスキーとは?」

 なんでそこだけロシア人名っぽいし。

 ギムさんは正門正面にまわって指さした。

「あれです」

 ニョロスキーは、カラフルな木の幹みたいな胴体して、高さは人間ぐらいだけど、胴よりもふたまわりでかい頭から2メートルはありそうなミミズっぽい触手がたくさん出てるやつだった。

「うわーやべーやつだ」

「職質不可避」

 いやー警察もやでしょこんなの。

「えええ……近よるのむりですぅ」

「これはトラウマなるねー」

「吉田さん連れてこなくてよかった……」

 それはアップルさんがぜったいにキライなやつだった。

「強いの?」

「けっこう。でも僕や皆さんなら、問題なく倒せます」

 やだギムさん自信に満ちててステキ。

「じゃあ、まずはどれだけ強いのか、見てやりますか。なあ周防くん」

「フッ。腕がなりますね石動さん」

「いくぜ?」

「せーのっ!」

 俺が両足。

 周防くんが両腕。

 ぼくらは2人がかりで店長を城内にぶち投げた。

「2人ひどすぎなあーい?!」

 店長は太っ腹をタイヤのように転がしながら、城内にきえてゆく。

 散歩してたニョロスキーがよってきて店長にはげしくミミズ攻撃をする。

「ひいい! たすけて! たすけて!」

 心にまでとどく、身も世もないさけび声。

「店長防具に魔法つかって」

「ぎゃあああなんかビシビシしてくるよ石動くん!」

「いいぞニョロスキーもっとやれ」

「ニョロスキー応援してないで助けて浅生あそうくん!」

 ちなみに浅生は周防くんの苗字だ。ゆったっけ。

 ほっいてながめてたらそのうち店長が防具に魔法をながして立ちあがり、ヒイヒイ息を切らせながらニョロスキーと戦った。

 5分後、なんとか勝った。

「おおー社員さんお疲れ様です」

「っぱ社員はちがうっすわ。かがやきがあるわ」

 自分だけフルプレートメールつけてる店長をあてこする周防くん。

 そう、魔法のアイテムって使ったら光るんだぜ。

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