ライオンの剣

「このすぐ北に、ヒトダマのさまよう地下墳墓があるんです。そこに伝説の武器があるので、よってっていいですか?」

「まじか伝説の武器」

「いきましょう!」

 地下墳墓は徒歩1分のところにあった。

 これが駅との距離なら下北のレオパでも家賃月10万は下らない高級賃貸だ。

 地下にもぐると魔法のランプが自動でまわりを照らしてくれる。

「おー明るい明るい」

「見える見えるすっげー」

 壁とかまる見えで感動する。

 よく考えたら見えてふつうじゃんだけど。

「うわっ! 火だ!」

「わっわっわっ」

 店長と鬼城さんが声をあげる。

 見たら火だ。

「火じゃん」

「火ですねー」

「ヒトダマです! モンスターですよ!」

 ギムさんが言う。

「まじか」

「ぜんぜんヒトじゃないんだけど?」

「ヒトダマは人の魂と書いてヒトダマなんだよ! 日本産の妖怪だよ!」

 ぼくらは一生懸命にたたいてヒトダマをたおした。

「ぜー……あーしんど。まあまあ強かったですね」

「ええ、でも弱点はわかったので」

 ヒトダマはフワフワ飛ぶ青い火の玉で、一番明るくて青い場所が弱点だ。

 そんなんすぐわかるだろ、と思いがちだがそれは素人だぜ。

 火をじーっとまっすぐに見つづけないと一番明るいところなんてわからないのだ。

 残像が目に焼きついて、しばらく物が見づらくなる。

「わーまた出た」

「もぐらたたき!」

 しばらく見かけるたびにつぶしていたが、どうもこいつらこっちとは関係なくフワフワしてると気づいてからは、だまってやりすごすようにした。

「ありました、祭壇です!」

「やった。剣ぬこうず」

 鬼城さんと周防くんがはしゃぐ。

 床の間みたいな祭壇に、かっこいい剣がささってる。

「ギムさんどうぞ」

「ありがとうございます……これが、伝説の、ライオンの剣!」

 手にした光かがやく刀身を、ギムさんはかかげてしばらくながめていた。


「つぎは、おしろ! ニョロスキーたおして、みとーしのブレスレットをとるの!」

「みそ汁のブレスレット? なに? 高く売るの?」

「うらない! とるの!」

「お城って裏手で十字架みっけたあそこ?」

「ええ」

 ギムさんに確認をとってぼくらは移動した。

 とちゅうで道草して、ちょっとダンジョンもぐってみた。

 赤いヨロイの騎士がこっちに接近してきた。

「フラミンゴヘルムよ! にげるの! ちょっとつよいよ!」

「えーめんどくさ」


▶ぼくらは にげだした


「おーこわかった。城にいこう」

 城にはすぐについた。

 ただし外壁で、入り口は見あたらない。

「それでこのお城なんですが、中におさめられてる見通しのブレスレット、それがあると、かくされた通路が見えるそうです」

「おーなんか。おー」

 たいへんけっこう。

「城門は外壁ぞいにこの森をこえた先です。森の中にはバルドフントがいます。弱いですけど足がはやいから気をつけてください」

 ギムさんが前にでてぼくらを先導する。

「んじゃ、自分ここでまってますわ。車をはなれて傷つけられたらたいへんだし」

 ドバッシーがここでドロップアウト。

「だれかこのカメラもってってくださいよ。お昼おごるから」

「おけまる。でも壊れても弁償しませんよ」

「おけまる」

 カメラは周防くんが担当することになった。

「戦闘になったら、ジャマじゃありません?」

「そんときは鬼城さんよろです」

「わ、私は参加しないでいいんですか?」

「鬼城さんは、なんだっけあのタコ、倒せるぐらい強いんだし、わるいけど最終兵器魔女でおねがいしますねー」

「いっすねーデビルフィッシュ倒せたんだし、たしかにその作戦なら、デーモンキング戦で優位に立てそう」

「ええ……自信ないです」

「ザコ狩りはボクらでやりますから、暴れん坊将軍の用心棒みたいに、ラスボスのときに召喚しますんでよろです」

「それラスボスの悪徳大名が、おいつめられて喚ぶやつ……」

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