バンピアーデーモン再戦
「いやーおっそろしい敵でしたねー」
みんなの後ろでカメラかまえてただけのドバッシーが言う。
「おい虫賢者そんな大切なこと忘れんなよいいかげんにしろ。刺身で食っちまうぞ」
「ぎゃー、めろースオー!」
「やめてください! こんなにかわいいのに! 岩動さん周防さんを止めてください!」
「周防くん。たぶんおいしくないからやめよ? エスカルゴでがまんしよ?」
「まずそうなのはまちがいない。しゃーないゆるしてやるか。でもどーします? ほかに手に入れられる方法ないかなー。魔法のランプどっか売ってないかなー」
「コンビニでは見たことないねー」
「うちの店ラインナップ貧弱ですしねー」
アハハとぼくらは笑う。
「魔法のランプなんてどこのフランチャイズもあつかってないよ!」
あのー。
鬼城さんがおずおずと下からくる。
「ブラウマイスちゃんによると、さっき話題になったお城のすぐそばに、倒せるアイテムが、あるそうですが……」
チビ賢者が鬼城さんに耳うちしてしゃべらせてる。
「川ぞいのキノコのすぐ下に、かくしてあるそうです……」
「川ぞいにキノコ。なにそのパワーワード」
「いやマジックワードでしょ」
「物理攻撃効かなさそう」
「食ったらある意味トビそう笑」
ブラウマイスが鬼城さんに言わせた場所にいくと、キノコがあった。
「まじか。城のウラ手のキノコのそばとか」
「伝説の告白ゾーンになってそう」
みんなしてカサをベンベンぶったたくと、ヒダのあいだから金属の塊がおっこちてきた。
なんでここの人たちすぐにキノコに物かくすの?
胞子すごいじゃん。
運河で洗うと、十字架だった。
「めっちゃ中世キリスト教世界観」
「おい昆虫賢者。これであいつ倒せんのか?」
「せいなるジュウジカ。デーモンにきく。バンピアーデーモンならすごくきく。スオーしね」
だんだん賢者の口が悪くなってる。
「ワラであぶってきざんでタタキにするぞアホ賢者」
「スオーバーカハーゲ」
「ニンニクたっぷりきかせて吸血鬼にぶつけてやる!」
わりと効きそうな味つけ。
「店長。キャノピーってたしか」
「後部ドアだねえ」
「ぼくらはキャノピーのキャノピーに十字架を」
ぼくらはだれの心もゆり動かさない話をする。
10分もしないで神殿にもどり、ふたたび吸血鬼アタック。
「いきましょう。このアイテムどう使うかしらないけど」
「もってるだけでいい」
ブラウマイスが言う。
「なにその便利アイテム」
百均で売ってそう。
ほかに使い道なさそう。
「フォーゲルヘイムでは、ほかにつかいみち、あんまない」
「あんまないのかー」
ぼくらはせーのでとびらをけりあける。
「石動さん神域ですよ」
「テヘペロしとくよ」
先ほどと同じくとり囲んでなぐると、今度は攻撃がきいた。
「グアア」
「おお、倒せそう!」
「やっちまえ!」
「弓打ちまーす」
今回は5分もしないで倒せた。
「やった。あーつかれた」
「やりましたね」
「いえー」
全員でハイタッチ。
「……ヨクゾ、ワレヲ、タオシタ……」
「あ、吸血鬼しゃべってる」
「関西弁だねー」
「その『ワレ』じゃないのでは? 文法的に」
「じゃあ『オンドレ』は?」
「韓国語」
「それはオンドル……」
「オンドレとは言ってませんが……」
鬼城さんとギムさんがきちょうめんにつっこむ。
「オマエラ、ハナシ、キケ……」
「あ、おこだ」
「ごめんごめんつづけて」
「……ヨクゾ、ワレヲ、タオシタ……」
「あ、そこからやり直すんだ」
「……タガ、ソノツヨサデハ、デーモンキングニハ、カテヌ……」
イベントムービーってか、わりかし長いダイイングメッセージで、しかもしゃべりがたどたどしい。
めんどくさいから略すとこう。
「お前らじゃデーモンキング様にはぜったいに勝てないし。デーモンキング様マジつよいし。俺の倍ちょっとつよいし。じっさいにパラメーター倍ちょっとだし」
「パラメーターいわれてもなあ」
「こいつの倍ちょっとならザコっすね。鬼城さん草生やしまくって死体蹴りっていいっすよ」
「そんな下品な煽りしません……」
「みんな、まだ吸血鬼しゃべってるから!」
さいごの力をふりしぼった吸血鬼の言葉を、店長が中腰で耳をそばだてて聞く。
「店長、さいごなんて?」
「……『オマエラ、シネ』だって」
死にかたしょーもなさすぎてぼくらは大笑いした。
賢者までゲラ笑いした。
吸血鬼の体がボロボロ崩れて消え、そこに魔法のランプが出現した。
「おー魔法のランプだ」
「こすって願いかなうか試しましょうず」
「次の蘇生はアップルさんのマウストゥマウスでお願いします」
「しつけーっす。ぜってーうんこつめた店長あてがうわ」
「周防くんはなにもお願いせんの?」
「つぎ石動さんが死んだらすぐそばにちょうどいいうんこと店長がありますように」
「周防くん俺がアップルさんに蘇生されそうになってヤキモチ妬いてるでしょ笑」
「めっちゃ焼いてます笑」
ぼくらは肩を組んで笑顔で神殿を出た。
――俺たちだけでも、やれるんじゃね?
ちらとアップルさんの顔が頭に浮かんだけど、中ボスを無傷でやったったぼくらは、無敵気分にひたっていた。
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