言われて気づくていどの愛なんてしれてんじゃね? っていう言い訳をしたいお年ごろ
一番長い左右外側の二本足がぬわわともちあけられ、第三撃の準備をする。
「あわわっあわわっやばっやばっ」
「くぉんの!」
タコ足を胸もとにえっちいくなるようにまきつけられ、ジリジリ引っぱられてゆく鬼城さんを助けんがために、アップルさんのテッカンコークァ、右の落とし蹴りが炸裂する。
「フッシ!」
周防くんちでやる格ゲーのモーションみたいなカッコいい蹴りだった。
だけどタコ足にはきかなかった。
ボミンッ。
ゴムみたいな弾力でアップルさんの蹴りがはじかれる。
そーなんよ、固いんだよねあいつの皮。
「し、しまる……」
「えぇ……」
鬼城さんの胸にタコの足がさらにからまり、アップルさんがとまどう。
マズったのは、ふりあげられたタコ足攻撃の第三波に目をとられて、みんな足もとがおろそかだったこと。
アップルさんにかわされて地面にピロンとのびてたタコ足が、彼女の軸足にからみついた。
そして一気に彼女を引きずる。
「えっちょっちょっ!」
「アップルさん!」
ギムさんがつかんだタコ足に切りつけるがまにあわず、
「こいつめ!」
メタボ店長のワンテンポ遅れた斧がなにもない空間をブンと空ぶりし、
「アップルさん!」
自分たちがバトル中に空けられてしまった距離をつめるより早く、タコ足がアップルさんを宙にもちあげる。
「た、体重差っ体重差っ」
なにを言わんとしたのか、タコ足の力にあらがって地に足をつけながらなにかのプライドを傷つけられたような声をあげた鬼城さん。
「まてっての!」
「こいつめ!」
後方にいたギムさんが再度踏みこんで切りつけるもやはりとどかず、俺と周防くんもアップルさんをすくうことかなわず、デビルフィッシュは彼女の体を頭上に高々とさしあげた。
「ぎゃあっぎゃああああああっぎゃあああああっ!」
「くっそ、弓矢で効くかなー」
半信半疑で周防くんがデカすぎる頭を攻撃するが、矢が完全に埋没するほど刺さっても、デビルフィッシュには効いたようすもない。
「周防さん、頭に見えるのはお腹、消化器官だよ! 頭は目と目の間にあるんだ!」
後ろから車待機のYouTuberが、大タコ攻略情報を伝えてくる。
そういやドバッシーのチャンネル、釣りもやってたっけ。
「目と目の間、めっちゃ広いんですけど……」
水面からでも高さ10メートル近い巨体だから、胴の左右についてる目の間なんて5メートル以上ある。
「とりあえずまん中あたりに撃っときます!」
周防くんが矢をつがえては連発で撃つ。
バフ付きの弓だから、矢がブスブスデビルフィッシュの頭の中にうまってゆく。
6発目、命中してすぐにデビルフィッシュが全身をふるわせて身をよじる。
「やーっとダメージはいった!」
周防くんが快哉する。
「ぎゃああっうっぎゃあああああああああああああっ!」
暴れる足にとらえられてるアップルさんが、コッパのように右に左にふりまわされて悲鳴をあげる。
「アップルさん!」
「あぶないあぶないっ」
それに合わせてぼくらも右に左に彼女をすくおうとかけまわる。
岸のきわきわでやりやがるもんだから、こっちも運河に落ちそうであぶない。
そんなのをつづけてたら、別のタコ足がアップルさんのもう一本のおみ脚にからみつく。
そして左右にひっぱる。
「やっやだ……!」
股わりの状態で、上半身だけ逆さづりにされたアップルさん。
2本目のタコ足の先っぽが、アップルさんのぱんつにかかっているのをぼくらは見のがさなかった。
「言われて気づいたよ!」
「言われて気づきました!」
「ボクも言われて気づきましたよ。さすが石動さんナイッスゥー!」
うらぎり者たちの言葉が背中にささる。
「ちょっとうそでしょ、ちょっと! うそでしょ!」
デビルフィッシュめにきれいな脚がひっぱられて、今にもぱんつがやぶれそうだ。
それはゆるせん。
断固阻止したいが、射程のみじかい前衛タンカーの自分には打てる手がない。
「周防くんどっちかの足撃てない?」
「やってみます!」
1発ずつ撃ってみたが、ただ刺さっただけで苦しむようすもない。
「効きませーん。あーこれまじでやばいやつだ」
「タコはお腹すいたら自分の足食べるっていうから、痛覚ないのかも」
「たこ焼きの具のくせにあじなまねをしやがりますな」
タコは現在足の半分をタイルにのせて接岸し、のこりの足でこっちをけんせいしつつ、アップルさんにろうぜきをはたらいている。
このままではアップルさんの下半身が露出して、自分以外に見られてしまう。それだけはゆるせぬ。
「周防くん、デビルフィッシュにトドメ刺そう」
「やーそれがほら、射線にアップルさんはいってるんすよ」
ちょっとまて。
このクソタコ、アップルさんでガードしてやがらね?
「みなさん下がって! わたしが魔法でたおします!」
体重差でもちあがらないエロボディの鬼城さんが、ロッドをかまえて魔力をこめている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます