第4話 胴体以外はオートアルミュールのイラリオ
西暦3248年
ここはデジタルに囲まれた都市のクラウチテリア。あちこちにロボットたちが行きかっている。女性の姿をしたシルバーのメタルロボットが買い物袋を持って、歩いている。その近くを地面に落ちたゴミを掃除する清掃員ももちろんロボット。ほうきを持って、丁寧にかき集めている。空中に浮かぶゴミ袋に入れていた。ゴミ袋を持つのはミツバチの形をしたロボットだった。電子掲示板は透明なディスプレイ。必要な情報を運んでくる。
胴体以外すべてオートアルミュールのイラリオはとある義足製造工場に立ち寄った。看板は義足製造工場だが、実際は体の足りない部分をアルミュールに作れる工場だった。
「バホン博士!」
「イラリオ、調子はどうだ。もし、不具合があるなら……13時からなら対応できるぞ」
空中に浮かぶ透明なパソコンディスプレイをぽちぽちといじりながらバホン博士は答える。たった今、発注が入った義手を3Ⅾプリンターで作っていた。
「あー、今は受け付けられないって?」
「やりながらで言いながら、話しくらいなら聞けるけどな」
バホンはあっちに行ったり、こっちに行ったり、たくさんの画面のボタンをいじる。
「あのさ!!」
「……ああ」
「俺、そろそろ、行こうかと思って」
「え? どこに」
「……前から計画していたこと」
「???」
「ほら、体もバホン博士のおかげで自由に動けるし、リハビリもクリアしたからさ」
「何のことだ」
バホン博士の手が止まる。
「過去に戻って、俺の体を取り戻す!!」
「まさか! 本当にやる気だったのか?」
「ああ、俺はいつでも本気さ。この姿も悪くないけど、やっぱり生身の体がいいんだよな」
機械音を鳴らしながら、腕をくいくいと上下に動かした。調子はよさそうだ。
「今の方が、体力も攻撃力も最高だろ。何を考えて、生身に戻りたいと思うんだ。防御力もいいだろうに」
「確かに俺は強くなったよ。ちょっとやそっとじゃ、ナイフで刺されても死なない。この鋼の力のおかげだ。でも、それじゃぁ、俺自身強くなったわけじゃないだろ?」
「はぁ、今じゃ、ロボット社会で楽に生きたいって世の中なのに……俺と価値観が違うんだな」
「……それだけじゃないよ」
バホンは作業をしながら、イラリオの顔を見る。
「え?」
「復讐が一番の目的さ」
「復讐?!」
「この体になった時代に戻って、敵を欺き、やられる前に倒す。それが俺の目的」
「……執念深いな」
「一応、こんな体してますけど、人間だからさ」
「……悪いことは言わない。やめておけ。その体以上のこと、命とられるかもしれないぞ」
ㇵボンはもっともらしいことを言う。イラリオの決意は固かった。
「命とられたようなもんだ。この体。どーせみんな死ぬんだ。死ぬくらいぎりぎりなことしてみたいんだよ。俺や俺の家族を奪ったあいつらのこと許せるわけがないだろ」
「……まぁ、俺に止める権利はないかもしれないが、過去に行ったら最後、戻れる保証がないぞ」
「構わないさ。本望だ」
ㇵボンは、イラリオの目を見て、本気だということがわかった。義手の作業がようやく終わり、身の回りのものを片づけた。パンパンと手をたたき、腰に手をつけて、イラリオに近づいた。
「そしたら、一番に用意しなくちゃいけないものあるだろ」
「……タイムマシン?」
「ああ」
部屋の奥の方、大きな布で隠していた機械音が鳴る大きな3ⅿくらいの機械をイラリオの前に出した。何年もかけて開発に費やしてきた。イラリオの夢、過去に戻って国を救うことを応援する思いが強くなっていた。ようやく、ここでお披露目することができた。日々の仕事をしながら、コツコツと地道に取り組んできた。バホンの壮大な達成感がある。
「まだ試したことがない。本当にやるか?」
機械に手を置いて、問いかける。イラリオは自信満々な顔で
「当たり前!! そのために生きて来たんだ」
「俺もこれを作った甲斐があるかもな……」
グータッチをして、2人は決意した。
このタイムマシンで国を救うことができるんだと心が躍った。
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