第3話 逃げる熊、鋼の意志
ツキノワグマがヨクドリアの前に立ちはばかり、右手を体に向かって爪でひっかいた。ツキノワグマ自身も恐怖のあまりに警戒していた。ヨクドリアは、腰を抜かしてたまたまツキノワグマの手に触ることはなかった。勢い付けて戦いに挑んだつもりだったが、いざかかってくると恐れが強く出た。後ろにいたイラリオが、義手と義足から長いロボットのような金属をのばし、ツキノワグマの足元の土につきさした。
恐怖を感じたツキノワグマは、慌てて、後退し、何度も振り返りながら、そそくさと逃げ出して行った。
「え?! どういうこと?」
のばした金属を機械音を鳴らしながら縮ませる。
「俺は、両手と両足を失った人間……俺は、オートアルミュールだ」
「オートアルミュール ?」
「胴体以外は機械なんだ。ロボットだ」
イラリオは、手と足を自由自在にのばしてみた。ビルよりも高い大きな木の枝を折って、ヨクドリアに手渡した。
「な! な! お前。なんなんだよぉーーー!」
イラリオはダンゴムシのように繋がった腕と足を元の長さに戻して、胡坐をかいた。鼻をほじる。自慢したことが成功して、鼻高々な思いになっている。驚かれるのには慣れていた。これが、元の姿を見たら、絶望の沼に落ちていたなんて想像もしないだろう。遠くの自然豊かな緑を見て、ため息をつく。
「俺は、なりたくてこのかっこうになったわけじゃない」
興奮したヨクドリアは、しゅんと急に興奮が冷めてしまった。
イラリオは、神妙な面持ちで話し出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます