第3話 霧島君とご主人様

霧島君・・・の事を好きになったのは、入学式のちょっと後です。覚えていますか? 手紙・・とチョコレートのこと」

「手紙……もしかして、藤崎さんだったの?」

「はい」


 よく覚えている。鞄に手紙とチョコレートが入っていたのだ。

 差出人の名前はなかった。でも、好きだと書かれていたのだ。


「放課後、私が一人で掃除をしていたら、霧島君が手伝ってくれました。それから、気になっていたんです。だから私の気持ちは作られたものじゃないです。本当に昔から好きでした。今は、それを表に出せているだけです。だからのご主人様・・・・と呼ばせてください! お願いします!」

「だ、抱き着いたらダメだって――」


 強依存化ヤンデレと書かれた文言、もしかしたら洗脳なのかと思ったが違うのか?

 藤崎さんは何と、前々から僕が好きだったのだ。

 辻褄は合っている。でも、僕の事を好きじゃない人に噛みついたらどうなるんだろうか。そのあたりは検証が必要だ。


 そしておそらくだが、部下にした相手を強化できる。そして部下のスキルが僕も使えるようになるらしい。

 よく見るとゾンビの弱点も書いていた。なんと僕は【太陽の下でダメージを受ける】と書いていたのだ。

 でも今は昼間。おそらくこれは藤崎さんの【光耐性】を受け継いだからだ。


 もしこれがなければ肌を焼かれていたかもしれない、そう思うと恐ろしい。


「マスター、これからどうしますか?」

「さらりと呼び方を変えてもダメだよ」

「わかりました、主様」

「藤崎さん、聞いてる?」

「はい、閣下様」

「それが一番抵抗あるかも」


 ユーモアも追加されてるかもしれないが、ステータスに表記はない。

 つまり藤崎さんは元々おもしろいのだろう。

 

「私の感情は偽りではありません。命を助けられた事を凄く感謝しています」


 とはいえ藤崎さんの言う通りではある。僕が噛みつかなければ、彼女は出血大量で死んでいたのだろう。


「でも、ここからどうにかしないとダメですよね」


 藤崎さんの言う通りだ。まずはこの森を抜けなきゃ始まらない。

 そして、あの国は何という名前なのか。


 僕たちを殺そうとした奴らだ。是津愛に許したくない。

 必ず報いを受けさせてやる。


 ただまずは食料だ。サバイバルの知識なんて本でしか知らないけれど、生き延びなきゃいけない。

 でも、そういえば僕はゾンビだ。いや、藤崎さんもだけれど。

 

「とりあえず森を抜けよう。もしここが本当に別世界だとしたら、街や国があるはずだ。知識を得て、それから考える。でも、もしかしたらレベルをあげなきゃいけないかも。危険な目に遭うかもだけど、二人ならきっと大丈夫だと思う。僕が、守るよ」

「嬉しいです! わかりました、ボス様!」


 

 やっぱり呼び名は、ご主人様にしてもらおうかな。


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